普通に怪しい
これを利用しない手はない。
頭をフル回転させ嘘のストーリーをでっち上げる。
「実証については構いませんが一つ確認を」
「何だね?」
「ギルドの職員さんを検証に使うおつもりでしょうか?」
「そのつもりだが不都合が?」
外見の印象で圧迫面接みたいだな。
だが純粋に疑問を呈しているだけなのは分かってるので怖じることはない。
「制約の一部を説明させて頂きます。全ては明かせないのでそこはご了承願えればと」
「制約は弱点にも繋がる。当然だ。開示出来る部分だけで構わない」
「まず一つ俺がリーダーを務めるパーティの人間でなければ強化は出来ません。そしてこれは」
「……読めた。書類の上でも手続きを経てというところか?」
頷き、続ける。
「そしてただ入っているだけでは意味がありません」
「……一定期間の活動実績か」
「はい。ただここは融通が利く部分もあります。先払いは可能です」
実際は俺がリーダーを務めるパーティに入るだけで条件を満たせるんだがな。
だが馬鹿正直に言えないし、それじゃこのチャンスを活かせない。
「ただし」
「活動実績という条件を履行出来ねば君にペナルティが入る」
支部長の目に疑いの色はない。
隣のリゼが少し心配だったが、俺を信頼してくれてるんだろうな。
何か意味があるのだろうとリアクションはせずに黙っている。
「こちらの手落ちだな。強力なスキルだ。制約もそれに比例して重くなろう」
「はい。期間は大体一ヵ月ぐらいでしょうか?」
最低限、それぐらいはこちらのパーティに拘束されてしまう。
となれば職員は難しいだろう。
戦える職員は居ても冒険者とギルドの業務の二足の草鞋では効率が下がってしまう。
となると、
「理解した。であればソロの冒険者をこちらで見繕おう」
「確認ですがその場合の依頼料は」
「ギルドが持つ。シルバーランクが増えるのはこちらとしても望むところ」
何より、と支部長は続ける。
「君のスキルが実証出来るのは大きい」
狙い通りと内心ガッツポーズ。
一ヵ月の拘束という制約を負う代わりにプチドリームチームが組める。
そう誤認するように仕向けたのだが見事に嵌まってくれた。
(つかあの一瞬でそこまで計算出来るモンキーさんやっぱ半端ねえわ)
俺だけなら確実に見落としていた。
「今居る冒険者の中に適切な者が居るか確認しよう」
ギルド併設の酒場でのんびりしてるのも居るからな。
「居ない場合は後日改めてという認識で?」
「構わん。少し待っていてくれ」
と席を外したのでその間にリゼに耳打ちで意図を説明する。
「……あんたに目をつけた私はホントに正しかったわね」
呆れ半分感心半分と言った感じだ。
のんびり待っていると少しして支部長が戻って来た。
一人ではない。女の子を連れている。
(これまたレベルの高い……十三、四歳ぐらいか?)
セミショートの美しい金髪と赤い目が印象的な小柄な少女。
フリルのついた薄い青のワンピースと相まってお嬢様のようだ。
しかし手に持つ杖と纏う雰囲気。
そしてここに連れて来られたという事実からして見た目通りではなかろう。
「支部長、彼女が?」
「ああ。ソロで活動している魔法使いで丁度予定が空いているらしい」
「はじめまして優しい瞳のあなた? 私はル・ティーア。ティアと呼んでくださいな」
「俺は真。こっちはリゼだ」
ティアは見ての通りの魔法使いで等級はシルバーだという。
>@Super_monkey
……ほーん? えらくまた“都合良く”見つかったもんじゃのう。
俺の日頃の行いだろうか?
教会で奉仕活動をしたご利益かもしれん。
「検証の前に確認だ。実証されれば昇格依頼を受ける意思はあるかね?」
「はい」
「結構。既に承諾は取れた。後は書類に記入すれば事は済む」
「分かりました。でもその前に一つだけティアに確認を」
「何かしら?」
「理不尽な指示や非効率な指示でない限り基本的に俺の指示に従うと誓って欲しい」
そしてこれは冒険者としての活動に限るもので私生活には干渉しない。
例えばこの日は都合が悪いから依頼を受けられないなどは構わない。
なるべく詳細な説明を付け加えておく。制約っぽく見せるためだ。
「制約ね。全て受け入れるわ」
「結構。じゃあ書類に記入しようか」
互いに書類へ記入しティアは一時、パーティに加入した。
早速だが構わないかと問えば頷いたのでスキルを発動する。
「“導きの星よ、我が輩を照らせ”」
ティアの体が光に包まれその目に軽い驚きの色が宿った。
「どうだね?」
「自分で強化を使う時と遜色ないわ。……これを消費なしでやれるなんて」
ああそうか。
ティアが選ばれたのは実際に強化魔法を使えるからってのもあるんだな。
「素晴らしい」
支部長の声色には確かな喜びが滲んでいた。
感情はあっても表には出さないと思っていたから少し意外だ。
「ところで質問なんですが依頼は彼女の拘束期間が終わってからでしょうか?」
「いや昇格依頼に彼女を連れて行っても構わない」
相応の難度の依頼にすれば良いだけだとのこと。
ならば後はティアの意思確認だな。
「俺としてはさっさと昇格したいところだけど君はどうだろう?」
昇格依頼ともなれば面倒だろうしな。
同行してくれれば嬉しいが無理でも通常依頼で一時稼ぎを増やせるならそれでも良い。
「喜んで付き合いましょう。フフ、昇格出来るよう私も微力を尽くすわね?」
「助かる!!」
こうして俺たちは昇格依頼に臨むこととなった。




