超越した存在感は見る者に混乱を起こさせ、さまざまな印象を持たせる。古今東西に残されている伝説の生き物は似ているけど、国によって、時代によって多少の違いがあるのはそういうことなのかもしれない。
とぼとぼと土手の道を並んで歩く。
未來は自転車を押している。
どうやらさっきの無茶苦茶な遊びのせいで、自転車のチェーンが外れたようだ。
服はシャツからズボン、靴下まで濡れている。
水を含んだ靴が歩くたびにブッカブッカと変な音を立てている。
また、ママに注意されるだろうな。
でも、その場限りの反省で懲りずに同じことを繰り返すんだろうけれど。
その時、未來のポケットがモゾモゾと動いているのに気がついた。
「ちょっと、あんたのポケットなんか変だよ?」
「あん?」
そういってポケットをまさぐると、エビのようなものが出てきた。
「ザリガニか。さっきの川遊びの時に紛れたのかな」
うげっ!
私、この手のものはとても苦手!
「ちょっと! 気持ち悪いからそれどうにかして!」
「そうかぁ、かわいいじゃん?」
とか言いながらも、その場に容赦なくポトリと投げ捨てた。
「って、それはないだろ!」
何という雑さ!
かわいいんじゃないのかよ?
「だって、持っているのが気持ち悪いんだろ?」
「それとこれとは別だろが! そんなところに捨てたら干からびて死んじゃうんじゃないの?」
「まあ、そうか。なら……」
といってつまみ上げると、川に向かって思いっきり投げるようなフォームをとった。
「待て待て待て~い!」
私の急なストップに怪訝な顔をする未来。
「なんだよ、さっきから」
「アホか! この距離で川まで投げるつもりかよ! その生物の重さはわからないけどエビと同程度の質量なら、どう考えても届かないだろうが!」
「たく、うるせぇな。わかったよぉ」
そういうと、なぜかまたポケットにしまいこんでしまった。
「けっきょくポケットに戻すんかい!」
◆■◆
夕暮れ。
時刻にこそ違いはあれども、これってこの間のおじいちゃんと別れた後と似た状況だな。
そんな私の考えを見抜いたのか、未來が言った。
「じいちゃん、たぶんあっちであの変なヤツとうまくやっているって」
「……うん。でも本当に良かったのかどうか、いまだに悩む時があるんだよね」
あれ以来くすぶっていたことだ。
いい機会なので未來の考えを聞いてみるのも悪くはないかも。
まぁ、考えていればの話だけれど。
「ったく、しょうがねぇやつだな。じいちゃんは覚悟の上のことだって。そうでなければあたしらの能力を信じでついてくるわけなかったんだからさ」
『……そうか』
そうなのだ。
これ、大事なことかも。
そういえば、おじいちゃんは私たちの能力により未來が見た過去の出来事を話したときも、まったく不思議がらなかったのだ。
それに能力を使うことになったときも、何を聞くでもなく私たちについてきたわけだし……。
「そういえばおじいちゃん、どうして私たちのこと不思議がらなかったんだろう? 過去が見えたことについてなんにも言わなかったよね?」
「そりゃそうだろ? だってあんなフクロウのバケモンとダチンコなんだぜ? そんなスゲー体験しているなら、あたしら程度の能力を見せたところで驚きはしないって」
確かにそうかも。
あんな鳳凰みたいな存在を知っていれば、私たちの能力なんて可愛いものだし、超常現象に対してもすでに免疫が備わっていたのもうなずける。
って、フクロウ?
「あんた? あの化け物だけどフクロウに見えたの?」
「あ? 例えるならフクロウ以外の何があるってんだ?」
「私には鳳凰のように見えたけれど……」
超越した存在感は、見る者に混乱を起こさせるのか、それとも自前の処理能力では御しきれずに、それぞれに違った印象を持たせるのか。
神、悪魔、死神、鬼、龍etc……。
古今東西に残されている伝説の生き物は似ているものが多いけれど、国によって、時代によって多少の違いがあるのはそういうことなのかもしれない。




