今まで人間どもの歴史に足跡を残した能力者たちは時代を彩ることはできた、が、しかし、作ること、変えることはできなかった。しかし、貴様らならひょっとするのかも
「そんな歴史上の有名人たちも私たちと同じような特殊能力を持っていたのですか?」
「そうだな、内容は違えども、ただの人間にはない特殊な力を有していたのは確かだ。とはいえ、貴様らほどの力ともなるとかなり久し振りのことではあるがな」
『やっぱり……この能力、ただ事ではなさそう』
その時、私の考えを読み取ったのか、不思議な存在は言った。
「そうだ、貴様の考えているとおりに少なくとも人間界においては大きな効力を発揮すると言えるだろうな。もちろん使い方次第ではあるが」
そうだ、一番気になることを訊ねてみよう。
この機会を逃すことはできない。
「あの、この能力は使うべきなのでしょうか? それとも封印したほうがいいんでしょうか? 何となくではありますが、とてつもないことぐらいは想像がつくんです。だから私、どうしたらいいのかわからなくって」
自信なさそうに聞いてみた。
すると、
「それは自分で決めることだ。そんな薄っぺらい自信しかないと、それこそ力につぶされるぞい」
「……あのな、お前は黙っていろ」
未來である。
不思議な存在の口真似をしてふざけている。
「ふぉふぉふぉ。よくぞ正体を見破ったのう」
話についていけなくなったので退屈をもてあましているのだろう。
「ふふ。そこのバカが言うとおりだ。自分で決めろ。が、しかし、本人が望まなくとも使わざるを得ないこともあれば、また良かれと思って使ったことにより望まぬ展開になることもあるだろうが」
「誰がバカだ!」
「貴様のバカ、それも特殊な力だぞ? バカも極めれば立派な能力になりうる。貴様らの諺にもあろう」
「もしかしてあれか? バカとハサミは使いようってやつか!」
得意げに未來。
「ふふ。それだ。貴様のことだ」
いや、違うでしょ、意味が。
「お~! サンキュ~マジか! よっしゃ! あたしはこのままで行くぜ!」
いや、それはバカにされているだけから。
それも最大級に。
というかこの不思議な存在も、もう未來の扱いがわかったのだろう。
ただ、少しは改めてほしいが、いまはバカはさておき、この能力、本当にどう扱ったものか……。
「貴様は未来が決まっていると思っているのだろう? それなら思いのままに生きるのが良いだろうよ」
「そ、そうですか?」
「決まっているのだろう? 未来が? それなら好きに生きても生きなくても結果は同じこと。使うもよし、使わぬもよし。はじめても、途中でやめてもすべては同じことなのだからな。貴様の理屈で言えば。それになにより特殊な力は発揮しないことには、その価値も意味もわからんのも事実。知りたいのであれば使え。そうでないのであれば封印しろ」
「でも、他人の未来を変えることによっておかしなことにつながってしまうとしたら、やはり怖くて……」
「犠牲に対しての危惧か? それは人間がやったことであれば人間に対してすればいいだけのこと。貴様らの持つ能力は人間技ではないのだから、そもそもそのような心配は無用。地震の犠牲はだれに対して恨む? 津波の被害はどこに苦情を言うというのだ? 貴様らの能力は軽くそのレベルを超えるほどのものと言えるだろう。だから、そもそも人間の一人や二人がどうにかなったところで気にするほうがおかしいのだ」
「でも……」
「ふふふ。葛藤か。その能力が備わったのが人間だったのが不幸だったのかもな。いや、人間だからこそよかったのかのう。下らぬ呵責がブレーキになって大事にいたっていないとも言えるのか……」
人間だからダメ?
人間だから良かった?
人間としての価値観があるからこそ、人間としての尊厳を考えられるからこそうまく使うことができるってことなのだろうか?
いや、待って、人間のもうひとつの面。
嫉妬、裏切り、残酷。
そんな人間性で、この能力を悪用するなり暴走するなりすれば……。
「悩め。悩むがよい。能力の使い方によっては、私の立ち位置にまで到達するのもそうは難しくはないだろうな」
「……」
「貴様らは実に面白く、またうまくできている。それぞれに能力が持たされたのはお互いに足りないのではなく、相乗するためなのだ。静と動ともいうべき二極性もまた愉快。うまくやることだな」
『二人であることに意味がある?』
また、心を読まれた。
「そうだ。すべては貴様ら次第だ。今まで人間どもの歴史に足跡を残した能力者たちは時代を彩ることはできた、が、しかし、作ること、変えることはできなかった。それは貴様らの先祖が記した短い歴史とやらを俯瞰すればわかることだろう。淀みなく、一直線につながっていることがわかるはずだ」
確かに。
これまでの歴史を見てきても、極端に違和感を覚える部分はない。
それは勝手な思い込みなのかもしれないけれど、なんとなく、なるようになってきたと言うことはできるのかも。
「変える必要なり作る必要があるのかどうかは知らん。それは人間どもの決めることだからな。しかし、私が知る限りでは全員が全員、なぜかそれを望み、渇望するも果たすことはできなかった。誰一人としてな」
「貴様らの尺度で測れる事件程度の彩りであれば、今後百年千年万年の歴史を重ねていくことでやがてかすみ、くすんでいき、次々に現れては消えゆく時間の重みによって跡形もなく押しつぶされるだろうよ」
「時代を変えるなんてそんな大それたこと……」
「まぁ好きにするがよい。しかし、貴様らならひょっとするのかも」
「あの、今現在で私たち以外にもこういう能力を持っている人間っているんですか?」
「いる。能力は玉石混交、また潜在するに止まり開眼していない者もな。人口増によりさらに増すかもしれぬ。もしかしたら、貴様らのすぐ近くにもいるかもしれんな。ふふふ」
いるのか、やっぱり。
でも、私たちの近くにも?
「貴様らの諺にもあろう。類は友を呼ぶ、とな。だからこそ、いま私と会えたのかも知れぬ。まぁ、そやつらに会うことがあるなら、せいぜいその出会いを楽しむのが良いだろうよ」




