あたしたちの能力、全部見えないってのがミソだよな。お前はその断片のシビアな現実を見て打ちのめされ、悲観し、隠れているところを確かめるのが怖くて逃げてしまう。それって保身のための言い訳じゃないのか?
何を偉そうに!
私には私の考えがあっての行動……とはいえ未來が言うようにそれらの行動には実は後ろめたさも感じていなくもない。
しかもそれを未來が知っていて黙っていたのかと思うと、自分の卑しさを再確認させられたようで腹が立った。
「その考えのどこが悪いっていうんだ? 無駄やミスを無くするのは誰もが思うことだろうし、できるならそうすべきだろ? 自分のせっかちを棚に上げて私のせいにするなよ!」
「別に悪いなんていいやしないさ。ただ心配なんだよ。お前のことが」
さすがにカチンときた。
「は? お前なんかに心配される覚えはないよ。お前の行動のほうがよっぽど危なっかしいだろう」
「まぁね。でもな、そのことが経験となって一線を越えないバランスが養われてもいるんだよ。あたしは子供のころからやんちゃで毎日のように大小さまざまな怪我をしていたろ? 体中傷だらけだったのに今はあんまり傷跡が残っていないのはなぜだかわかるか?」
「なにを言い出すんだよ、急に」
「それは怪我をすることで痛さを知ったからなんだよ。痛いのはだれでもいやなのものだから、同じ痛い思いをしないように次からは注意を払える。だから同じ怪我でもそのとき以上に深いダメージを受けることも少なくなるから、傷として残っているものがあんまりないのさ」
「無駄もミスも無いのはいいに決まっているけど、それでもいつかは躓く時が来る。その時に事前に受け身の取り方やそれに伴う痛みを知らないと、想像以上に手痛い思いをすることになる」
「今のところお前の人生は優等生まっしぐらなんだろうけど、小さいうちにそういう経験をしておかないと後でしっぺ返しを食らうことになるぜ?」
「怪我なんかの肉体的なこともそうだけど、恋人や友達なんかの精神的なことも含めてね。それに自分だけじゃない。痛みを知らないと誰とも分かち合えないし守ってもあげられない。自分の限界を知らずして他人を守れるか? 大事な人が痛みを訴えたときに、その辛さを知らない人間が同じく置かれた状況を共有するのは土台無理ってもんだろうが」
恋愛、友情、共に未來にはあって私にはないもの。
図星にされることがこんなに悔しいものだなんて。
しかも馬鹿だと思っていた未來ごときに言われっぱなしであることがさらなる拍車をかけた。
「生き方が違うんだよ。私とお前とじゃ。知った顔して一緒くたにするな」
そうなのだ。
双子の宿命として、同じに見られたり評価されたりするのだけはどうしても我慢ができない。
ましてや未來なんかと……。
「生き方が違ったとしても逃げられないことなんていくらでもある。リスクを承知で試さなければ、何にも切り開けやしないって。そしてまた今回も逃げようというのか?」
「ふざけるな! 誰が逃げているんだ」
「逃げようとしているじゃん。現実からも未来からも」
珍しく冷静な目で見つめながら未來は続けた。
「あたしたちの能力、うまいことできていると思う。全部見えないってのがミソだよな。お前はその断片のシビアな現実を見て打ちのめされ、悲観し、ふさぎこみ、隠れているところを確かめるのが怖くて逃げてしまう。けどさ、それって保身のための言い訳じゃないのか?」
「……」
「でもあたしは違う。見えた部分がどうあれ、見えない部分にこそ賭けてみたい。そこには不幸を吹き飛ばすくらいのいいことがあるかもしれないから」




