第三話:勇気
「すいません、注文したいのですが~」
そう言うと店主らしき男は驚いた顔をした。
俺はポーカーフェイスで顔を塗り固めた。
口角を上げて目を細くして余裕の表情を作って仮面にしたのだ。
俺は口には自信があった、相手が誰であろうと言い負かす自信が・・・。
経験上で第一に口論で大切なのは表情だった。
少しでも怯えた素振りや表情を見せれば不利になる。
ハロー効果という奴だ、人間は第一印象がすべての決め手となる。
ビビっていると分かればひ弱で小物だと思われてしまうからだ、少しでも凄味を見せて相手を動揺させるのが大切である。
第二に大切なのは発言を誘導する事だ。
なるべく発言には先手を取り発言を誘導させる、こういう単細胞生物のような頭の悪い奴は時にやりやすく効果的だ。
金髪の男は立ちあがってガンを飛ばして来た。
「今こっちが注文中だろ、順番守れや。」
おお、怖い怖い。
マジでちびるゾ!だが誘導成功だ、俺は発言の矛盾を落ち着いた声で突いた。
「順番ですかぁ、さっき私が注文していたのを遮ったのは貴方達なんですが~。」
俺がそう言うと男達は不機嫌な顔になった。
「てめぇ、いい加減にしろよ。」
男達はイラついた顔で顔を近づけてくる、怖いがホッとしていた。
俺が勝手に譲った事を反論されたら面倒だったのだがこの男にはそんな事考える頭は無かったのだ。
「さっきからいい加減な事を言ってるのは貴方だった気がしますが?」
男は俺の胸倉をつかんだ。
そして勝利を確信した、口論において先に手を出した方が負けである。
男はおでこに神経を浮かばせていった。
「てめぇ、殺すぞ!」
俺は胸倉をつかんでいる手を掴んで一枚の紙を見せる。
するとミルミル男の顔が青く染まってゆく。
その紙は姉の名刺だった、俺の姉は弁護士だった。
そこそこ名通った弁護士でたまにテレビにも出ている。
正直この二人男の戦意を削ぐにはこれで十分だったが一様釘を刺すためとどめを入れておく。
「今殺人予告しましたよね。」
俺はmp3プレイヤーを見せて録音したよーアピールをする。
まあ、ただの出任せのハッタリだ。
男は青ざめた顔で金を置いてのまま店を後にした。
二人の男が見えなくなると俺は堪えていた恐怖を下すように尻を付いた。
ヘロヘロ~っと座り込むとリクは俺を心配そうにのぞき込んだ。
「だ、大丈夫?」
「カッコつけたけど、やっぱりこれじゃカッコつかないな」
俺が自嘲ぎみに笑うとリクは顔を左右に大きく振って目を輝かせた。
「ううん、凄いカッコよかった!ヒーローみたいだったよ!」
「貴方のヒーロー足が小鹿みたいになってるけど、腰も抜けちゃってるけど。」
俺が自虐を入れるとリクはフフッと笑った。
二人で笑っていると店主らしき男はホッとした顔で手を差し出して起こしてくれた。
「タスカッタヨ、前カラアノ人達店代ボッタクロウトシテタンダヨネ。今日ハ、ワンランクアップデ、サービスシトクヨ!」
俺とリクは顔を合わせて喜んだ。




