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◎決定稿 第6話 お食事会(6日目)

 エリシア様たちが囲まれていたのは、南地区の顔役サンからご招待を受けていたからだった。


 危うくウッカリ荒事を引き起こすところだった。

 

 特にロッテ……。羽交い締めにしてプッシュナイフを突きつけてたな。


 私も、結構滾っていたが……。


 そういうワケで、エリシア様とアルベルト様が、南地区の顔役サンの代打ちとして、リヒテンラーデ王都の裏街の実質的支配者決定ゲームに参加する。


 私たちもその場にいたから、こんな事言うのもなんなんだが……。


 なぜだろう……


 なぜこんな大掛かりな役どころに付かねばならない展開になった?


 イカサマ師をチョット懲らしめたな……

 その後……ああ、賭場荒らししてたよ……

 キッカケはエリシア様のお小遣いか……


 アルベルト様は、ヒキが良すぎるんじゃないかな。


 主に厄介な方面の。


 だが、もういい。

 とりあえず、ゲームに勝てば目標の金貨1000枚に到達する事になった。

 まずはひと安心だ。


 ゲームの護衛はルナが随行する。


 ロッテが盛大に駄々をこねたが、武器持ち込みが制限されるだろう会場に、全身に暗器を忍ばせているロッテを連れていけるはずもない。

 逆にルナであれば、身体そのものが武器だ。

 手ぶらでも全く問題ない。


「ふふん、基本性能の違いです」


 ルナの上から目線に、ロッテは地団駄を踏んで悔しがっていたが、エリシア様が、


「で、でもリンゴ食べる時とかはロッテの方が適任だぞ!ルナは握りつぶしてジュースにしてしまうが、ロッテはカットもできるし、キレイに皮を剥いて、ウサギさんだって作れるじゃないか」


と、奇妙なフォローをして場を収めてくれた。




 とにかく今日は安息日だ。


 アルベルト様は情報収集に出掛けたが、ほかの方々は宿舎でゆるりとしている。



 ソファにゆっくり身を沈める。


「でも、なんか身体なまっちゃいません?」


 ルナ、不穏な事を言うんじゃない。


「そうそう!昨日も中途半端でしたし!

 いいなあ、副団長はシッカリ身体動かせて」


 ロッテも追随するな。


「そう言うな。たまにはこんな日があってもいいんだ」


 そう言ったところで、自分の言葉が反転した。


 あれ……

 違うぞ……そうじゃない


「……たまにはこんな日が……?

 ……いや、違うぞ、普通の護衛任務はこんなんじゃない……。

 毎日、ナニかが起こり過ぎてるんだ!」


「え?起こり過ぎてる?」


「そうだ。最初の市内観光のイカサマ師潰し、アレは2日目だ。実質的な稼働初日だぞ」


「ああ、着いて早々でしたね。随行者が私なら後腐れなく始末できたのに」


「3日目の謁見式待機場では酔っ払い護衛との騒ぎが起きて」


「カンタンに首刈れたのに、私の理性がジャマをしました」


「昨日はスリ組織を叩きのめしてからの支配者決定ゲーム参加表明」


「実戦やれたの、前半の副団長だけですよ。いいなぁ、ひとりで楽しんで」


「いやいや、普通はこんなに毎日トラブルは起きないんだ。しかもイロイロな種類で、出処もバラバラだ」


「ん〜、言われてみれば確かに波瀾万丈デスね」


「世に波瀾万丈という言葉があるが、ホントの波瀾万丈というのはな、もっともっと緩やかな展開なはずだぞ」

 

 私の胃が保つかな……とか嘆きつつ身体を休めてたら、アルベルト様が宿舎に戻り、我々に提案した。


「みんなにガマンも強いてしまったし、ココはひとつねぎらいの意味も込めて、今日は外に繰り出そうか」 

 

「お、おい、いいのか?」「いいのですか?」


 皆が驚きながらも目を輝かせている。


「もちろんだ、メイドのみんなも準備してくれ。

 全員で出かけよう」


 メイドたちから歓喜の声が上がった。

 バタバタとお出かけの支度をしに部屋に飛んでいく。


 あの……アルベルト様……


 大盤振る舞いの気配がプンプンするのですが、

その……軍資金の方は……


 ナンなら私も、微力ではありますがお力に……


 あ〜、アルベルト様、あの顔役サンの一筆入り名刺を使うつもりだ。


 でもよかったです。

 ほんの2日前は金繰りどうしようって悩んでましたよね。

 ギャンブルがヒトの生活を一変させる危険性を身をもって感じます。



 そんな男の哀愁薫る困惑そっちのけで、女性陣のイキオイは凄いな。


「そ、それじゃ、ドコがいい?私はこの店が気になっていたんだが」

「エ、エリシア様、お言葉ですが、ソコよりこちらの方がーー、ホラ、こんなにボリュームが!」

「いえ、リンちゃんもいらっしゃいますので、ここはメニュー豊富なこちらの方が良いかと」

「私は甘いお菓子がいっぱいあるところがいい」


 食事処の地図を前に喧々諤々だ。

 女性4人だと、何を優先するかで意見が分かれるトコロか。


「アレクはドコがいいかな?」


 アルベルト様に尋ねられた。

 とてもとても、私に決定権があるような状況ではありませんが、一応……。


「私は良いワインが置いてあればソレだけで。

 そういう店ならば食の方も信用できます」


 アルベルト様が苦笑する。


「そういう事ならば早々に諦めた方がいい。

 敵はメイドたちも含めて女性8人だ。

 圧倒的戦力差ってヤツだよ」


 うん、当然ですね。


「仕方ありませんな。古来から3倍を超える軍勢を相手に勝利した事例は希有ですから」

「ハハハ、悪いがアルコール視点で言えば私も敵方なんだが」

「9倍の戦力差では即時撤退です。蛮勇を奮って挑んでも袋ダタキになって屍を晒すだけです」


 ワイワイキャーキャーやってる女性陣。

 決まるまでにはもう少し時間がかかるな。

 アルベルト様が早期決着を促す。


「エリシア様、明日は素描画の公開日です。早めにおやすみいただく必要がありますので、お早くお決め下さい」


「おお、そうだった。仕方ない、ココはギャンブルの街だ。

 潔く街の流儀に則って、ここは――ジャンケンで決めよう!」


「よろしいでしょう、皆もそれでいいな。

 それでは僭越ながら私ルナが音頭を取らせていただきます。

 いきます!ジャ〜ンケ〜ン―――」



 結構な死闘の末、メイドの1人が勝利し、メニュー豊富な店が選ばれた。 


 アルベルト様が顔役サンの名刺を見せたら、なんか『特別室』とかって書いてある部屋に通され、下にも置かぬもてなしを受けた。


 美味しい食事とデザート。

 そして、ワインも上等!


 お代は……格安だった!



 顔役サン名刺の御威光、恐るべし。



 人知れずメニューの値段をコッソリ計算していた私の気苦労は無に帰したのだが―――



 事前に分けておいた割り勘分を、財布にソッと戻し、元通りの重さをまた懐に抱いた。

 

 

 


 


 


 


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