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第2話 初心者向け

トマトは、種から発芽させるのが難しいらしい。

素直に、苗を探しに行くことにした。


園芸店の苗売り場には青々とした葉が茂る。

小さな虫が飛び交う。

整然と並ぶ小さな命、飛び交う命。

そして、初心者向けの札が掲げられている。


初心者でもどっさり!

という景気の良い文句がビヨンビヨンと踊る。


「どっさり……」


便秘薬以外で、あまり聞かない言葉だった。

けれど、その響きには妙な説得力がある。


どっさり。


……期待してしまう。

とりあえず、初心者向けの苗を十本ほどかごに入れた。


次に目についたのは、少し洒落た名前の苗だった。

シシリヤムルルルージュ。


聞いたこともない名前の札。

だいたいの品種は知らないが。


同じ札に、はっきりとこう書いてあった。

料理向け。


「……料理向け……!」


採れたなら、料理長に渡してもいいのかしら。

……いや、いいわね。

私がいいと言うなら、いいのよ。

あの家は、私の家でもあるのだから。

私が令嬢なんだもの。


抑えられない好奇心で、私はそれも十本買った。

それに使い道を考えるのは捕らぬ狸のなんとやらかもしれない。


ふと見やる。

苦味の少ないゴーヤが流行りらしい。

初心者にも育てやすいらしい。


壁際の空いた場所を思い出す。

ゴーヤを買う予定は無いのよ、と思った。

しかし、かごに八本入れる。


私は今「初心者向け」の言葉に弱いのね。

少し楽しくなった。


執事のセバスチャンが持ってくれているかごも

他の付き人のかごも賑やかになっている。


会計へ向かう途中、腐葉土が目に入った。

店員さんがかけてくる。

庭の面積をセバスチャンと店員で話し合う。

何人かの店員が笑顔でたくさんの腐葉土を持っていった。


会計の横には、つばの広い綿の帽子。

襟首隠しの布が付いている。

首にかける紐は、シルクではなくゴムだった。

かごの上に、枝を折らないようにそっと置く。


首のゴムが。

襟首隠し布が。

風通しの良さそうな布が。

全てが気に入った。

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