自己肯定監査官、自己肯定で自己崩壊(デバッグ)!?
「あなたは、あなたのままで、完璧です――……ふふ、ウソですけど?」
白鐘メルティアは、今日も笑顔で狂っていた。
聖王国直属の“自己肯定感監査官”。銀髪三つ編み、クラシカル眼鏡、そしてヤンデレ属性を隠しもしない完璧系お嬢様。
彼女の“称賛カウンター”は、対象の自己肯定を数値化し、暴走させる能力。
だがここ最近、その計測装置がノイズまみれだった。
――対象:佐々木ネオ
自己肯定値:測定不能(存在が不明瞭です)
「……いい加減にしていただけます? 私の精密観察スキル《メルティック・レンズ》が、あなたの自己認識だけ読み取れないなんて……」
教会の一室で、メルティアはネオの寝顔を見下ろしていた(※睡眠中)。
なお、寝ている理由は前回のルジェ拷問イベントによる精神的疲労。
「評価もスキルも、全部バグで。あまつさえ“自己”すら曖昧。そんなあなたに……私の完璧な観察スキルが、負けている……?」
その瞬間、彼女の中で“あるもの”が爆発した。
プライドでも、愛でもない。自己肯定感だ。
「なるほど……! これは試練ですね、神さま!」
バッと立ち上がるメルティア。
手には謎の書類。表紙には大きく、**『自己肯定の再構築プログラム(被験者:ネオ)』**と書かれていた。
「観察者として、愛する者を“認識”できないなら……観察なんて意味がない。ならば私自身が――あなたに“評価”されない存在に、堕ちましょう」
ドサッとその場に崩れ落ちる彼女。
眼鏡が落ち、三つ編みがほどけ、天使の輪がうっすらと輝く。
「……これからは、“観察”じゃない。“共感”よ。ネオさん。あなたと同じ、評価不能な場所で……一緒に墜ちてあげる」
目覚めたネオは、よくわからない光景を目撃した。
クラシカルヤンデレ監査官が、自分の上に膝枕しながら、自らの称賛カウンターを自分に向けて連打していたのだ。
「いいところ……ありますよね? 声が……まあまあ通るとか……寝相が……そんなに悪くないとか……」
「メルティアさん!? それ、なんか自己肯定の方向が雑というか、不安になるというか!!」
「ふふ……でも、これであなたと私、同じです。価値なんてどうでもいい。私、“観察”なんてやめましたから。今の私はただの――“好きすぎて壊れただけの女”です」
「いややめてその肩書きッ! めっちゃ不穏だし公式に載せられないから!!」
こうして、観察を捨てたヤンデレヒロインが爆誕した。
ネオがバグで自己肯定不能なら、メルティアは自ら“バグ”になって愛を示すという、負の共鳴ヤンデレモードへと突入。
だが、この奇妙な“同期”は、世界の評価ネットワークに新たなノイズを発生させることになる――
一方その頃。
聖教会の地下。
病弱な聖女、セラフィーナは一人で祈っていた。
「……自己肯定感の監査が壊れた……いいわ。彼女も、ようやく“評価”の檻から抜け出した」




