休日監査官、乙女日和――白鐘メルティアの場合
日曜日。
評価監査のない、静かな朝。
ルミナリアの一角、白鐘メルティアの私室には――
珍しく魔力の気配も、結界も張られていない。
「……よし。今日は“普通の女の子”として、生きてみましょうか」
鏡の前で、そっと髪をほどく。
いつものきっちりまとめた銀髪が、ふわりと流れる。
そのまま、ふぅと軽く息を吐いて、眼鏡も外した。
すると――その素顔はまるで、
“誰よりも無垢で、誰よりも美しい”と表現すべきものだった。
頬の輪郭は繊細で、まつ毛は長く、瞳はうっすら蒼。
「……こうしていると、わたくし、本当に普通の……」
呟きながら、パジャマのボタンを外していく。
淡いピンクのルームウェアが滑るように床へ落ちると――
白い肌が、露わになった。
まるで陶器のようにきめ細かく、
腰のラインはやわらかに弧を描き、
胸元は控えめながらも形が良く、微かに紅を帯びていた。
「……ふふ、ネオ様がこれを見たら、どんな顔をなさるかしら」
白鐘メルティアは、そっと鏡越しに笑みを浮かべる。
誰もいないはずの部屋で、誰にも見せない表情。
それは“監査官”ではなく、ただの一人の“少女”のものだった。
「少し……ほんの少しだけ、夢を見ても罰は当たりませんわよね?」
衣装棚を開け、慎重に服を選び始める。
清楚なワンピース、パステルカラーのカーディガン、
それに小さな花の刺繍が入った下着。
「こんな可愛いの、着たこと……ありませんけど」
頬を染めながら、静かに腕を通していく。
下着が肌に触れた瞬間、ぞくりと身震いする。
鏡に映る自分を見て、そっと口元に手を当てた。
「――まるで、“わたくし”じゃないみたい」
だがその瞬間、彼女の魔眼が淡く煌いた。
無意識のうちに、部屋全体に“自己肯定感強化結界”が張られていた。
「……うふふ、いけませんわ。今日は、何も“監査”しないって決めたのに」
メルティアは、長い銀髪を緩やかに結い直し、
眼鏡をかけないまま、優雅に扉を開ける。
「さて、ネオ様。今日も“観察”させていただきますわね。休日の……わたくし流で」
“彼の生活”を、何気なく見守る――それが、彼女の休日。
監査でも任務でもない。
ただ一人の少女が、愛しい人を見つめるためだけに過ごす一日だった。




