表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1966/1986

後日談:???、滅び去る者

SIDE:忘れ去られし骸の王


 年月とは、なんと酷であることか。

 あれだけ栄華を誇っていたライオネルももはや昔。

 ロゼッタが人から神に変わった後も、グランザムが大往生した後も、エリオットが安らかな眠りについた後も、連綿と続いていたかの国であろうとも、腐敗は免れることなど出来なかった。


 それでも、他国よりは長く続いたと思う。

 我らも手助けしたし、ライオネル軍も世代交代をしながら国と民の為に尽くした。

 それでも、王が腐敗してしまった。


 国破れて山河あり……か。

 いつかどこかで聞いた言葉を思い出す。

 すでに自分の名すらも覚えていない程に朽ちてしまった。

 数多いた我が眷属たちは次々に輪廻へと旅立った。

 最後まで残ろうとしてくれた最愛の妻すらも、今は昔。


 墓しか残らぬこの地で、私だけが墓掃除にいそしむ日々。

 思い返せば楽し気な喧騒が脳裏に浮かび、消えていく。

 あの笑顔の少年は誰だったか?

 あの、アーモンドアイで銀肌の女性は誰だったか……


 覚え続けていたかったぐりんなんとかの名も、すでに名も顔も思い出せぬ。

 長く、現世に留まり過ぎた。

 あと少し、もう少しと留まったせいで皆のように輪廻に戻るタイミングを失ってしまったことも理由であろう。


 誰もいない墓で一人、名も忘れた骸の王がゆらゆらと揺れている。

 私は、なぜ、まだここにいるのだろうか?

 私は、何をしようと、していたのだろうか?

 教えてくれ。誰か。教えてくれないか? 私は……


「何とか、会えたな」

 

『!?』


 今のは? 今のは!


「お待たせや、コスタロカの王。本当に、待たせてもうたな」


 それは、待ち望んだ存在だった。

 ずっと昔、遥か昔、いつかどこかで交わした約束。

 それを果たすべく、ああ、そうだ。私は、待っていた。待っていたのだ。


『ああ、邪悪なる神よ! 女神の使徒よ、待っていた、ああ、待っていた!』


 ああ、朽ちかけていた記憶が蘇る。

 あんなこともあった。こんなこともあった。

 妻が輪廻に帰るといっても、私はかたくなに待ったのだ。いつか来るから、と。

 必ず、もう一度会いに来るから、と。


「ほなら、約束の……」


『その前に、ああ、その前に少し、少しで良いのだ。昔話に、付き合ってくれまいか?』


 私の言葉に、彼女は少し困惑し、しかしすぐに仕方ないなぁ、といつか見せた苦笑と共に、私の傍へとやって来た。


『ああ、懐かしい。思い出が蘇ってくる』


「さっきまで消えそうやったんに、随分色濃く戻ったな」


『ふふ、久々の話なのだ。記憶も気力も湧こうというもの。ライオネル崩壊よりこの地を我らが呪詛地として他国の侵略から守った。いつの日か禁足地となり、其方が管理することになったな』


「そや。そしてウチとあんさんで約束したんや。いつか、もう一度ここを訪ねるから、その時までここは任せる、て」


『ふふ、そこから何年待たされたことか。息子たちは待ちくたびれて皆転生してしまったぞ』


「そら悪いことしたな。確かに6000年は待たせ過ぎた。でも、しゃーないやん、そこかしこで戦争起こってたし、この地を奪おうとするやつらも多かってん。ようやく長めの平和が来てな。託せそうな国になったんよ。ウチも動けるようになったし、そろそろな、ウチもこの世界からおさらばすることになりそうなんよ」


『寿命はなかったと思うが?』


「一応邪神やからね。でも、そういうのとはちゃうん。約束がな、果たされんのよ。それでな。思い出してん」


『つまり、我のことは忘れていたのだな』


「おっと、失言や!?」


 今まで来なかった理由は大体わかった。ようやく私も楽になれる。


『今まで、いろいろなことがあったな』


 さらり


「懐かしな。上でな。竜珠が発掘されてん。いろんな映像が溜まっとるから楽しみや。今発掘チームが必死に天竜討伐見とる、ここには誰も来んやろから……」


『一番驚いたのは、マリッカが死んだことだな』


 さらさら


「えと、あー、そやな。マリッカさんまさか寿命あるとは思わんかったな」


『元気だったのに突然ぽっくりだ。しかも霊体になることなくそのまま天寿全うで輪廻の渦へと消えていきおった。挨拶すらなかったぞ』


 こういうとき、なんというのだったか、国破れて、いや。祇園精舎の鐘の声、だったか?


「そういや彼女のUFOな。この星に残しとったら見つかった時面倒やからってヴァルトラッセにあげてもうてんで」


『グリンドラスは勇敢だった』


 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす、だったな。


「んでマリッカさ……あー、グリンドラスさんな、勇敢やったな」


『淦真裕司は結局どうなったんだったか』


 奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし……


「どやったっけ、昔探した記憶はあるんやけど万年前やとちょっと記憶がな」


『ロゼッタ嬢はよく無茶をするし、グランザムは振り回されて胃を抱えていた。エリオットはよくやってくれた。彼らの作る国が見たかった。行く末が、見たかった、ずっとずっと、見守って、そして……』


 猛き者も遂には滅びぬ、ひとえに、ああ、ひとえに風の前の塵に、同……じ……


「コスタロカ王?」


 さらり、さらさら、私が消える。

 もう、とうに消え去る御霊を無理矢理残していたのだ。

 ああ、もう、限界だ。無理する必要もなくなった。


 妻よ、息子よ、三世から二十二世、オルトリオル、ケルベリオス、カーンリヒト、他にもいくらかいたが、もう思い出せん。

 ああ。約束は果たされた。

 今、行くぞ……――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コスタロカ王様、お疲れ様でした。/)`;ω;´)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ