後日談:???、受け継がれし系譜
SIDE:ジェームス・ライデンノット
映像が終る。二時間ほどに纏められ、映画のようになっていたが、その映像の歴史的価値はあまりにも高い。
まず竜珠からして貴重品だ。
現代のハインドラでは産出不可能であり、飛竜族との交流もないのでよほどの奇跡でも起きない限り新たな竜珠は出てこない、とされていた。
そんな竜珠は数百個。
この全てに映像があり、ライオネルやその周辺国が辿った過去が映されている。
全員、天竜討伐映像があまりにも尊すぎて微動だに出来ないでいたのだが、私はふと気づいた。
キーリクが、いない?
「あら、ジェームス。どこ行くの? 他の竜珠も見ようって話なんだけど?」
「ああ、すぐ戻る。どの映像を見るか決めて見ておいてくれ」
検証班たちを残し、私は一人、奥へと向かう。
なぜこちらを捜索しようと思ったのかは、分からない。
ただ、何かに導かれるように、私は迷うことなく前進する。
やがて、どこかの部屋にあった扉を見つけ、警戒心すらなく開く。
地下へと続く階段を降り、そして辿り着いたのは……カタコンベ。
要するに地下墓地だ。
無数の墓標が連なり、その全てが今まで見つかっていなかったのが嘘のように丁寧に掃除されて綺麗に保たれていた。
その、最奥に、彼女は居た。
彼女の前には朽ちかけてゴースト、いや、リッチか? 思わず危ない、っと駆け寄ろうとして、そのリッチが砂のように消えていくのを目撃する。
キーリクは何とも言えない泣きそうな顔でそれを見送っており、なんとなく、何も知らない自分が駆け寄ってはならない、そんな気がして立ち尽くす。
しばし、彼女は誰もいなくなった虚空を見上げ、死者を見送る様に瞳を閉じる。
黙祷の時間、静寂が辺りを包む。
「もう、ええで。こっち来ても」
気付かれていたか。
私はゆっくりと彼女の元へと歩み寄る。
「今のリッチは、大丈夫だったのかい?」
「ここを管理しとった……名もなき骸の王や。ようやく役目を終えた、て昇天してもうたわ」
「そうか……」
君は、彼を知っていたんじゃないか? そんな言葉が出そうになった。
でも、なぜだろう。それを言ってしまったら、何か彼女との関係性が決定的に変わってしまう気がした。
「見てみ。これ、王様の名前が書かれてんの。きっと、ずっとここで一人きり、この墓守ってたんやろな」
古代文字だが、石碑には、名前がいくつも書かれていた。
その誰なのかは、もうリッチ自体が消え去ったのでわからない、だが、なんとなく。
「コスタロカ、初代国王……ヤマダ」
彼であった、そんな気がした。
「ここはコスタロカ王朝のカタコンベか。ずっと、後年のライオネルが滅んでもまだ、居続けていたのか」
「ほんとにな。律儀すぎや……」
ここだけでも歴史的価値は高いだろう。
しかし、死者の眠る地を土足で踏み荒らす訳にもいくまい。
「そろそろウチは戻るけど、ジェームスはんどないすんの?」
「ああ、戻るよ。他の場所の探索は皆でしよう。他に個別に行くところがあるなら今のうちに行ってくるといい。まだしばらく映画鑑賞だ」
「そう、なら一つだけ、ジェームスはんにのみ伝えたる」
「私にのみ?」
「ここに繋がる扉な、コスタロカ、セレスティアルス、ライオネルの王城関係者しか入れんようなってんの、つまり、間違いなく、あんたさんは受け継がれとる、ゆーことや」
なんのこと、なんて言えなかった。
その一言だけでいくつものことを理解する。
私の祖先に、いたのだ。ライオネルの城に出入りしていた誰かが。
キーリク共々映像を見ている場所へと戻る。
聞きたい。なぜ、そんなことを知っているのか。
君は何者なのか。
それよりも何よりも、君はライオネル王国を、私たちよりもっと、詳しく知っているんじゃないか、とか。
「ジェームスどこいたのよ。見てコレ! ライオネル王の一生だって。グランザム・ライオネルの生まれてから死ぬまでの映像があるの! 凄いわよ、今まで名前しか知られてなかったグランザム王が映像で顔まで出てるの! ほら、近衛兵隊長出て来たわよ。オスカー・ライデンノットだって!」
……オスカー……ライデンノット!?
あ、ああ……
見つけた。理解した。
私は、私の家系は……ライオネルに繋がっていた!
なぜかその事実を理解した瞬間、涙が決壊したように溢れ出す。
私は歴史を考察するだけの存在じゃなかった。
受け継いでいたのだ。
この体にも、ライオネルの血が、流れていたのだ。
そのことが嬉しくて。ああ、先祖の何と凛々しいことか。
それからしばし、映画鑑賞をしていたが、さすがに数が多いので今回は泣く泣く三話分、計六時間を見続け、残りは後日鑑賞会を開こう、ということになったのである。
とはいえこれだけの映像があるとなると、何日もかけないと全て見るのは不可能だ。
他にも資料やら何やらあるからな。
それにしても、この映像の中に出ていたあの邪神、凄く、似てるんだけど、これ、指摘しない方がいいかな? 皆も思わずキーリクに視線向けてたけど誰も何も言わなかったし。眼鏡、掛けてるか掛けてないかだけの違い、なんだが……隠す気ゼロか?




