後日談:???、新たなる発見
SIDE:ジェームス・ライデンノット
「ふぅ……」
私は思わず息を吐く。
歴史編纂署勤務は私の性には合っているのだが、根を詰めすぎるのが玉に瑕だな。
目頭を押さえて今しがた読んでいたロゼッタ神教経典にしおりを挟む。
「ジェームス、お疲れ」
タイミングを計ったようにフレミーがコーヒーを私の傍へと置いてくれた。
ありがたく頂戴しよう。
ずずっと暖かくも苦いものを飲み下していく。
ああ、目が冴えてくる気がする。
「と言っても、あまりコーヒーの飲み過ぎも良くないけどね」
フレミーはそう言いながらも他の職員へとコーヒーを配っていく。
ここはハインドラ国にある歴史編纂署。私たちは今、様々な歴史書を紐解き、昔起こったことを調べ、過去の偉人たちが残した足跡を辿っていくのが仕事である。
私のチームは私ことジェームス、紅一点のフレミー、黒人のマークス、もじゃ頭のケヴィン、そばかす眼鏡のダニエ、寡黙なマグナス。ああ。もう一人、新人の女の子が居たな。紅一点は訂正だフレミー。皆君を誰がオトすか賭けてたんだが、皆の注目は既にキーリクに行ってしまっているんだ。
魔族のようだけど可愛らしいし、気さくで話も面白い。
ついつい話し込んでしまうせいで君が怒るから自然君から距離を取り始めてしまってるんだ。許してくれ。私はまだ君に好意を持ってはいるんだよ?
「しかし、ライオネル王国だっけ? 一万年以上前の王国の歴史書なんて今までよく残ってたよな」
「歴史は偉大。と言っても未だに現役のロゼッタ神教の経典なんだから残ってるのは当たり前じゃない」
「そうでもないぜフレミー。歴史改竄なんて王侯貴族の専売特許だぞ。それが今まで一切手が加えられてないとかありえるか?」
「なんでも一万年前に出来た当初の教祖が経典への改竄一切を硬く禁じたらしい。19年目のとこに書かれてるだろ。馬鹿な最高司祭が改竄した瞬間謎の死を遂げたって。以後神の威光に逆らう不心得者が出ないよう禁じられたらしい。その後は当たり障りのない当時の事実のみが書かれてる」
「てかこの経典に綴られてる歴史は本当なのか? 初代教祖とかすでに老婆なのにこの後2000年位歴史編纂に携わってんだが? 毎回教祖と一緒に初代教祖が、ってでてくるぞ。」
「確かに巫女ちゃんの方が先に大往生してんだよな。この教祖バケモノだろ。まぁ実際は初代教祖何度か若返ってるように書かれてるし、初代教祖の家系の誰かだったんだろって話になってるけどな今は」
「その数百年前に結論付けた歴史に俺たちはケチ付けようって始動したんだろ。その常識は捨てちまおうぜケヴィン」
「それにしても、このロゼッタ神教に伝わる歴史書、最初の方妙に詳しすぎじゃね? 普通ライオネル学園の卒業式の日付とか書くか? さらに卒業生まで書く必要もないと思うんだ。しかも二年間しか書かれてないし」
「ジェームスはどう思う?」
「おそらく編纂者が個人的に重要だと思っていた卒業生がその二年間に居たんだろ。経典を見るにロゼッタ神が神に成るために関わったメンバーがそこで全員卒業してる」
「なるほど、それはあるか」
「そもそも、なんだがな。お前らロゼッタ神が実在してた人間だったって言われて信じられるか? 経典の話全部信じるなら、たった一人でモンスターパレードを撃破して伝説上のドラゴンを半数以上駆逐したんだぜ? 災厄の三獣も殺してるしよ。国を建て直したり兵士鍛えたり星開発したりとかどう考えても一人で出来ると思えんし」
「だから神に成ったんだろ? 俺は信じたいね」
「私も彼女はいたんじゃないか、とは思ってるよ、神の戦いの絶望感がかなりリアルに描かれているしね。妄想だけではここまで書けないよ」
「そう、だろうか?」
おっと、マグナスはロゼッタ神は居ない派か。
「フレミーはどうだ?」
「んー。わたしはそっちはどっちでもいいのよね。それよりリオネルとロゼの結婚後よ。なんでロゼッタ神教の経典に書かれてないのよ! 結婚時まで詳しく書いてるのにここから先書かれてないとかおかしくない?」
「そりゃまぁそうだが、そこネックなのか」
「だって私純愛神教信者だし」
「……そっすか」
ダニエは純愛神教はあまり好きじゃないからな。ちょっと引いてるじゃないか。
「キーリクはどうだい? いたと思うかな?」
「そやね、ぬし……ロゼッタ神はともかく、ロゼッタと言われる女性は居たんちゃんうかなって思います」
「ほぅ、それは何故だい?」
「創世記の方にやけど、ロゼとロゼッタが分かれた、いうくだり、書かれてますやん」
「ああ。あれか。人が二人に分かれるとかありえない、と偽典扱いにされてる奴だね」
「もともといたのがロゼだけでしたらそれまでロゼッタ、と書かれてたのはおかしいですし、リオネルはロゼとロゼッタとの結婚で迷ってることは経典にも書かれてましたでしょ」
「そういえばそうだな」
「ってことはロゼッタ神がいたかどうか、いろいろな伝承を行ったかどうかはともかく、ロゼッタという女性が侯爵家にいたことは確定、でいいのか」
「おいジェームス! 朗報だ!!」
「ん? どうしたマークス?」
「これ! さっき届いた新発見だ! 俺たちがライオネルだろうと目算してた場所に古代遺跡が見つかった! 出て来た書物などから、その古代遺跡が……ロゼリア共和国だと判明した!」
「なんだと! ライオネルじゃなかったのか。いや、しかしここがロゼリアだとすると、旧マギアクロフトがこの辺りにあったはずだから当時の地図と照らし合わせればライオネル王国の場所は……皆! これはもしかすると更なる新発見、今度こそライオネル王国跡地を見つけられるぞ!!」
経典に曰く、ロゼッタ神教が出来て4000年を持ってライオネル王国滅亡、その謎が、ようやくわかるかもしれない!




