後日談:教祖、教団改革
SIDE:教祖
ロゼッタ神教を広めた私は、そろそろこの世界からもおさらばすべきか、それとも行く末を見届けるべきかを考えながら、所用を終わらせようやくライオネルにあるロゼッタ神教教会本部へと戻って来たのですじゃ。
信者たちが挨拶をする中、教会内部へと入った瞬間じゃった。
「教祖さん! ああ、よか、った……」
祈りを捧げていた巫女様が私に気付いて立ち上がって振り返る。
次の瞬間、まるで解脱するかのような透明な微笑みを残し、崩れ落ちた。
近場にいた信者たちが慌てて支えたものの、すでに天に召されたような安らかな寝顔になっていた。
「な、何が起こったんじゃ!?」
想定外の事態に慌てて駆け寄る。
死んで……は、ないの。
寝とるだけのようじゃ。
しかし、あの様子。まさかとは思うが。
「そこの娘、巫女様の一日はどのようになっておる?」
「え? えーっと、私どもはここで祈っていただく以外接点がありませんので……」
「そういえば、たまに黒い手帳を取り出して業務確認されていたはずです」
巫女様に失礼することになるが、懐を探らせて貰う。
黒の手帳、これか?
手帳を開けば、今日の予定から明日、そのあと、とびっしりと書き連ねられた絶望的な一日の姿が現れた。
な、なんじゃこのブラック企業も真っ青の勤務内容は!? 寝る時間こそ五時間取っておるが、それ以外休憩がないではないか!? 昼食時すらも会食!?
転移で各国の支部を回って祈祷!? なんでこんな仕事量で誰も助けようとしとらんのじゃ!?
「こんのっ、ばかちんがァ!! 巫女様を過労死させる気か!?」
「え? え?」
「あ、あの? えっと」
ええい、この信者共では話にならん。司祭以上はどこじゃい! これはもう改革せねばならんじゃないか。
……
…………
………………
「以上! 全員肝に命じよ! いいか! ロゼッタ神様はブラックな職場を何より敵意を持って駆逐すべきだと告げておる。ライオネルの文官たちの話は聞いたであろう! イエスホワイト、ノーブラック! 定時帰宅で遊ぼうアフターファイブ。24時間働けますかの時代は終わったんだよ! じゃぞ!」
即座に司祭級以上の暇している阿呆どもを招集し、他国の支部と回線を繋いで全体会議を開始する。
ことは巫女様の精神衛生と労働環境に直接かかわる。
急ぎ決めねばならんことじゃし、各国を跨いで情報を密にせねばならぬこと。
「本日より祈りは各支部の最高司祭が行うこと。巫女の派遣は祭日などに限る。また各国で祭日の日をずらし極力巫女の負担を減らしんしゃい!」
全く、これだけ大人が揃っておって年端も行かぬ巫女様に全て丸投げなど嘆かわしいにもほどがある。
この世界から解脱しようかと思っとったがこれは無理じゃ。
こやつら放置しては遊びにいけんわい。
まずは巫女様の業務見直し、朝はこれで空いた。
昼の書類整理はおぬしらでやらんかい、全く。
巫女様がやるもんではなかろうに。
はぁ!? いつもは教祖様に仕分けて貰っていた? ええい、甘えるでないわ! そろそろ自分たちで回す術を覚えんしゃい!
私もいつまでも生きとると思うんじゃないよ。全く。いい大人なんじゃから小娘に全部押し付けず自分で処理していかんか。
それから会食。貴族共の食事程度に巫女様を出すでないわ! それこそ司祭の仕事じゃろうが!
はぁ、時間がない? 巫女様だって時間がないのに出とったんじゃぞ。
そんなに多忙でもあるまい、裏金を作る暇があるなら貴族と会食しとれ。というか貴様に司祭は任せられんわ、不心得者じゃ、兵士に送り届けとけ。次、他の意見は!
全く、司祭なんて役職を与えたばかりに阿呆やらかす奴が多くて困る。
一度一斉清掃した方がよさそうじゃなぁ。
ロゼッタ神様の御威光をしっかりと叩き込んでやろうかね?
というか、しっかりとした信者を差し置いてなんでこんなのばっか司祭になっとるんじゃ?
ああ、なるほど、信者たちは祈るだけに特化しておるから上の役職を辞退していって野心があるもんばっか上に来とるんじゃな。かー、全く阿呆ばかりでやっとれんわい。
せっかく私らが作ったロゼッタ神教を腐った奴らにくれてやれんわ!
ロゼッタ神様に粛清される前に私自ら粛清してくれようぞ。
まずは軽く司祭以上のマインドコンげふんげふん。教育から始めようかの。
ロゼッタ神様の御威光をもう一度叩き込んでやろう。
他にあるか?
ないのなら巫女様の作業は朝の祈祷と神への対話。それ以外は本当に必要なことはないんじゃ! ええか、肝に銘じよ。巫女様は巫女であるというだけで特別なのじゃ。
変な仕事をさせる必要などないし、書類を見る必要もない。まして貴族なんぞと会食する必要なんざ一切ないわい! 次やらかす奴がおったら、このババァと個人レッスンさせるからの!!




