後日談:篠宮亜依、復興する国
後日談:篠宮亜依
「あ、ありえねぇー……」
ラビと呼ばれるウサギの魔物を抱きしめながら、私はそれを見上げていた。
神々の戦いは終わりを告げた。
それは地上に生々しい爪痕を幾重にも残し、ここ、ライオネル王国だった場所にも、王国を完全粉砕するほどの絶望を残した。
人々は再び、何もなくなった瓦礫の大地から、生活を始めることになった。
私も瓦礫撤去などを手伝いつつ、やれることを、と退避していたダンジョンから出てきたんだけど……
そこには、すでに前と変わらぬほど整地された綺麗な街路と、無数の家々、馬車は行き交い、人々の活気が満ちている。
マギアクロフト強化兵が襲ってくる前のライオネル王国がそこにあった。
もちろん、仔細に関しては違っている。
どこそこのおっさん一人が住んでいた家とか、母子家庭の家とか、そういった家の内で大きくて場所を取ってたものは軒並み集合住宅と化していて、スタイリッシュに洗練された街並みが広がっていた。
町中には側溝や川も存在しており、景観が今までより上がっている。
まるで他国から来た旅人に見せつけるような雄大な王国をイメージした造りになっていた。
復興開始から、おおよそ一か月である。
意味が分からない。
私の転移前知識によってもここまで早くこの王国が復興する可能性は一切ない。
なのに、その全てを兵士やヴァルトラッセたちにより造り直されたのである。
私たち一般人がやったことと言えば、ダンジョン内やアイテムボックスにしまい込んだ資材などを自宅に持ち込んでレイアウトするくらい。
後はもう今まで通りの生活が待っていて、お金もギルドなどを通して稼げるようになっていた。
おかげで一週間もしない間に食事処も再開していて、各地で様々な人種入り乱れて賑やかな生活が始まっていた。
今はその兵士やヴァルトラッセ達が主要国家を再建し終えて周辺国へと散っており、急速にいくつもの国が建て直されているところである。
あれほど絶望的な瓦礫の山だったのに、日本でだって地震による倒壊は年単位での復興になるのに……
ロゼッタさんがもたらした魔法や鍛え上げた兵士たち、ヴァルトラッセ達の規格外さが改めて浮き彫りになった気がする。
「あら嬢ちゃん、果物どうだい?」
「そっちのババァの店は腐ってても置いてんぞ、こっちの果物のがみずみずしいぜ!」
ここいらは出店型の商店が立ち並んでいるようだ。
他国であれば浮浪児などが好きを見て持ち逃げ、などをしていたりするが、ライオネル王国に浮浪児はいない。
再建された後ですら、誰も路地裏で座り込んでいたりしないのだ。
「おぅ、プライダルんところの嬢ちゃんじゃん。珍しいなここにいんの」
ガラの悪い男が話しかけてくる。
普通の町なら兵士を呼ぶ位危険な案件だし、下手したら身の危険があると絶望するところだろう。
「今日は町中を見回ってるの。なんでもうここまで戻ってるのか意味が分からないわ」
「けっけっけ。そりゃ俺にもわからんなぁ。ウチのボスたちが言うにはロゼッタ神の使徒がやらかしたからだろ、ってことらしいけどな。ほんとあいつらバケモノだぜ」
どうやら闇組織アルケーニスの下っ端らしく、今日は買い出しに来たらしい。
仲間数人が道具屋に入ったり、出店で買い物をしているようで、私に構っていた男にも、遊んでんな。と怒号が飛んできた。
「うっす、すんませんっ」
と、男も買い出しの群れに入っていく。
ライオネルでは闇組織の住人だとしても普通に買い物ができるようになっていた。
ロゼッタさんが居なくなったと分かっても、彼らは今まで通り、ライオネル王国内部でのみ治安組織として機能することをよしとし、暗殺業は他国で請け負うのみとしたのである。
おかげで日陰者であってもお天道様の元を歩けるようになり、彼らが兵士の目が届かない場所を見回ることで変なことをしている危険人物も摘発できるようになっている。
なにより、アルケーニスは首領のもと絶対的な縦社会。下っ端が独自の考えで暴走すれば粛清の嵐が吹き荒れる。だからこそ、アルケーニスという闇組織が国内で治安維持をすると契約したなら、町中はほぼ安全と言って過言ではなくなるのだ。
ま、組織の上部が国を裏切ったらそれまでだけどね。
ひとまず今の上層部が変わらない限りは安全な国のままだろうし、最悪組織体制が変わったとしてもライオネル兵と事を構えようと思うかどうか。
つまり、国王がよほどの愚か者にならない限りはこの新たなライオネル王国は治安が良い最高の安全国家といっていいのである。
おかげで子供たちも外を楽しそうに走っているし、本当に素敵な国だと言っていいだろう。
そんな国の市民街、その少し大通りから離れた場所に、あらたなプライダル商店が建っていた。
なんかもう巨大モールかと言えるくらい立派になった敷地には、それでも立ち並ぶ人々が溢れており、今まで通りの行列が出来ていた。
さぁて、いつもの如く、私もお仕事始めようか。




