1916話、ロゼ、彼女の告白
明日が最終話となります。
新年開始二話目ってのが何とも言えませんが、後日談もあるのでもう少し続きます。
ではでは、新年あけましておめでとうございます。<(_ _)>
SIDE:ロゼ
ああ。やっぱり、こうなった。
私の目の前で、私を演じていたはずの女が最愛の男性に告白されていた。
渦巻く感情は二つ。
おめでとうロゼッタ。という祝福と。
そこは私のポジションだったのに。という憎悪と。
複雑奇怪に混ざり合い、覚悟していたはずなのに、不思議な感情が湧き上がる。
ロゼッタへの殺意?
リオネル様への愛憎?
そうじゃない。そんなものじゃない。この感情は。
「私、でも、戻ってこれないん、だよ。ここにはもう……」
「必ず辿り着く。変若水だって沢山ある。何年、何十年、何百年かかってでも必ず迎えに行く。だから!」
待って。やっぱりだめ。
行かないで。
ずっと、ずっと待ってたの――――
「ムリよ……」
リオネル様と抱き合いそうになったロゼッタに、辛辣な声を届けてしまう。
ダメだ。諦めろ。これ以上告げたところで状況は変わらない。
私自身が惨めになるだけ……
「ロゼ……」
「無理よ。だって、リオネル様は一つだって神への進化方法、出来てないっ。これから何年かかるの! 何年リオネル様の人生を弄ばせるの! ロゼッタ! 分かってるでしょ! 神と人はっ「ふぉっふぉっふぉ」」
口から止めどなく出てくる言葉を遮る様に、老婆の醜悪な笑い声が響いた。
「条件1上位存在が定めたレベル限界達成。条件2上限レベル同等以上の余剰経験値の確保。条件3上位存在創生世界での英雄的行動。条件4上位個体からの次元上昇推薦。条件5別上位個体10名以上からの承認。条件6上位存在に近しい生物の撃破。条件7次元内知性体3分の1以上の信望確保。条件8上位次元の存在認知。条件9本人の意志確認。条件10上位存在以上の上位存在による承認……」
醜悪な老婆は嬉々とした声で高らかに告げる。
「レベル限界は突破しておりましょう。余剰経験値は10年もかからず手に入りましょう。ヨーデリヒ撃破、強化兵の製造所の破壊によって英雄的行動も突破。第六条件も同様に突破。ヨーデリヒは神に近しい生物ですからの。そして兄神を直に見たことで第八条件も突破しております。残るは上位存在からの推薦、10名以上の許可、本人の意志確認、メルカバ―の承認。これらもこの婆が何とか致しましょう。残るは第七条件ですが、これもまたお任せいただければ、ほら、ロゼ嬢。リオネル神はいつでも成れますぞ」
「ロゼッタ神教教祖……」
余計なことを。なんて呟くことすらできなかった。
気が付けば、この場へと近づいてくる教祖と、初老の紳士。
「やあやあロゼッタ嬢。お久しゅうございますなぁ」
にひっと歯茎を見せつけた紳士が醜悪に笑う。
「今更分かったけど、あんたたちアバターだったのね。どっから紛れていたの?」
「何百年と前からですな、セキュリティーがガバガバなので入り放題出放題。儂ら以外にも何名もいらっしゃいますでな」
「あんたたちの掌で踊らされてたって訳か。まぁ、兄神さんに負けるよりはマシだったけど……」
「ふふ、そうおっしゃいますな、我々とて下心などほとんどありませなんだ。貴女様が神に成られるならその手助けをしたい、そう思っただけにございますゆえ」
「とはいえ、時間はあまりなさそうですな。さて、リオネル殿、神になりますかな?」
降ってわいた目的達成状況。
リオネル様は少し考え。頷く。
私の前を通り抜け、老婆の元へ。
その時、ふっと、私の背中が優しく押された。
ろぜ、った?
押し出された私が見るのは、リオネル様の後ろ姿。
「頼む、僕をロゼッタに並べる神にし……え?」
考えるより先に、私は彼の裾を、引いていた。
「……いで」
「ロゼ?」
体を引き寄せる様に、背中に抱き着く。
放したくない。離させない。
「行かないでっ、ずっと、ずっと待ってたのっ」
選ばれたのがロゼッタなら、潔く諦める。
そう思ってたはずなのに。
そう、覚悟していたはずなのに。
「貴方だけを求めていたっ。貴方だけが全てだった。ロゼッタの代わりでいい、愛されなくてもいいっ。どうか、どうかっ、一度だけ、一度だけ、私を見てっ」
「ロ……ゼ? でも、僕は……」
「何年かかってもロゼッタの元へ行くんでしょ、だったら! だったら……どうか、私が死ぬまで、80年、50年でもいいっ! どうか私と、暮らしてください、お願いっ、お願い、します……」
崩れるように膝をつき、訳の分からない感情のまま思いのたけをぶちまける。
ずっと、黙ってるつもりだったのにっ、言う気はなかったのに、一人墓場まで持っていく感情だったのにっ。
「じゃ、アルセデアルちゃん、行こっか」
「っ!? ロゼッタ、待っ」
「ロゼには幸せになってほしい。私も、リオネル様も、思ったことでしょ?」
私たちのやり取りを見届けることなく、ロゼッタはさっさと神界への扉を潜る。
「私ってば、ほんとキューピッドだねぇ。キーリ、後、任せるんだよ」
こちらを見ることなく、神に成った女が消えていく。
待って、私、違うの、こんなつもりじゃっ。
なんで? どうしてっ、貴女が不幸になると分かってるのに、私の背を押したの、ロゼッタ!!




