1915話、ロゼッタ、彼の告白
「いや、決着の付け方一緒かっ」
なんだよロゼ。文句ある?
まだ生存しているらしい兄神の半分を次元の穴へと放り込む。
続いて変に最後の一撃をしてくる前に、もう半身も穴へと投げ捨てる。
うし、これで兄神関連終了。ったく、ほんと長い戦いだったわ。もう二度とやりたくないね。
「お疲れロゼッタ」
「リオネル様こそ、ヨーデリヒを任せてしまい申し訳ありません」
「いいんだ。僕だって君の役に立ちたかったんだ。命を救われたお礼、少しくらい返させてくれ」
そんなの、いいのに。
アレは結局ロゼがどうしても助けたいって私を突き動かしてた奴だし。まぁ私としても同じ思いだったからむしろ助かってくださりありがとうございます、なんだよ。
「決着は、付いたね」
「そうですね。これでマギアクロフトに関する戦闘も、ゲーム世界の決定事項も全部消化出来たんじゃないかな? 文字通り、ゲームエンド、いえ、終了というよりは、ミッションコンプリート、かな?」
「任務完遂、か。じゃあ、僕も、完遂しなきゃ、だね」
リオネル様?
「ロゼッタ、ソレにロゼ。君たちに伝えなきゃいけないことがある」
それって、あ、あのでもリオネル様、私神に成ったから結婚はできなくてですね、今すぐにでも神界に……ちょ、ロゼ? なんで私の口押さえてるの!?
「ロゼッタの話はさっき近くにいたから聞こえてたよ。それでも、これは僕が決めなきゃいけないけじめだ。そして……覚悟と決意をしなきゃいけないことだから。まずは話を、聞いてほしい」
「ロゼッタ。覚悟はできて? 私は既に、出来てるわ」
「えぇ、ここで? いやまぁここじゃなかったらもうタイミングはなさそうだけども……うぅ、了解」
大きく息を吸い込んで、何度か深呼吸を行う。
聞きたくないと思う自分が半分、リオネル様の本音を知りたいと思う自分が半分。
ライバルは強力だ。何しろ自分とほぼ同じ容姿のロゼなのだから。
二人を選ぶ、という選択肢は選ばないことになってる。つまり、リオネル様は決断したんだ。
どちらを選ぶにしろ、絶望的な状況になると分かっているとしても、告げないことには終わらない、そして、始まらない。
「ロゼ。まずは僕を救おうとしてくれてありがとう。ロゼッタ。ロゼの嘆きに応え、異世界から僕を救いに来てくれてありがとう。君たちが奮闘してくれたから、僕は今、ここにいる」
「……はい、はいっ」
ロゼは泣いていた。
悪役令嬢としてガイウス王子を死地に追いやるため、王太子の妻を殺したりした悪女が、年頃の女性のごとく、泣いていた。
これはきっと、悲願だった。
ロゼは私がここに来る前、何度もやり直したらしい。
それはつまり、何度もリオネル様の死を知らされ、ガイウスを殺すまでの時間無為に生き続け、処刑されていたことに他ならない。
この世界を、何度もやり直したのか、並行世界での自分の死を実体験として記憶していたのかは彼女にしかわからないし、私はその辺りを共有していない。多分彼女は二度と、その記憶を誰かに告げることはないんだろう。自分一人抱え込んで、少女はたった一つの願いを叶えた。
大切な婚約者を暗殺させずに、生かす。その一点において、彼女はついに、目的を達成したのだ。
「ずっと、迷っていた。僕は結婚相手を選ばなきゃいけない。でも二人揃って娶るのはダメだって理解してる。君たちも、自分だけを見てほしい、そう思っている。違う?」
「違いません」
「多分、二人揃って娶ると宣言するなら、きっと私たちは納得しないまでも了承はすると思います」
「ああ。僕も、二人を幸せにすると言っても必ず不幸な感情は生まれると思うんだ。だから……決めたよ。僕はずっと、考えて、何度だって考えた。でも、でもね。僕が好きなのは、大切にしたいと思うのは。幸せになってじゃなく、幸せにしたいと思うのは……」
私と、ロゼを順に見て、最後に様子見しているキーリを見る。
まさかのそっち!? 私とロゼが焦りを見せた次の瞬間、リオネル様は、想い人の手を取り、両手で包む。
「ロゼッタ。僕は君が好きだ。君と生涯を歩みたい」
……あ。
………………ああ。
それは、ダメ。ダメですリオネル様。
嬉しいけど、嬉しいけれどっ。
私、ずっと彼氏が欲しかった。結婚したかった。幸せに成りたかった。
でも、ダメなの。私は神に成ってしまったから、だから……選択肢はもう、リオネル様が選ぶべきなのは一人しかいなくて……
涙で滲む視界で、決意に満ちた男が真剣な眼で告げている。
返事をしなきゃ。そう思うのに唇が動かない。
私は、私は……っ。
「分かってるんだ。君は神に成ってしまった。このままだと神界に行かなきゃいけないんだろ? でも、僕は諦めないし、諦める気はない。すぐに、辿り着くよ」
そんなの、できるわけ……
「キミが示したんだ。人が神に成れるって。10の条件だっけ。時間はかかるかもだけど、必ず君に辿り着く。だから、待っててほしい。僕は、君の為に神に成る! 君を一人になんて、絶対にさせやしない、だから……僕の、いや。私の妻になってくれ、ロゼッタ・ベルングシュタット」
いい、の? 私、でも、だって、神で、結婚は、無理だって、生涯、相手は出来ないって……




