1913話、リオネル、ヨーデリヒ決戦
SIDE:リオネル
「ニゲるなッ!!」
ヨーデリヒは強化されていた。
体は人とは似ても似つかない程に筋肉が盛り上がり、顔がどの部分に存在するのかすらわからなくなっている。
さらに何をどう改造したのか、触手と思しき物を無数に飛ばしてくる。
キーリと何度も訓練したおかげで触手関連に関しては一切捕まることなく避けて切り払い、各個撃破で潰していける。
とはいえ、何度切り裂いても同じ数の触手を吐き出してくるヨーデリヒは、もしかすると強化兵同様の回復力に物を言わせて触手を補充しているのかもしれない。
しかし、あの触手、体の一部だろうけどどの部分だろうか?
腕や背中、足元から現れているからヤバいものではないと思いたいけど、先端部分が卑猥な気がしなくもないんだ。
ただの弾頭型なだけかもしれないけど。
ともかく。こんな気色悪い敵をロゼッタが相手取らなくて良かった。
っと、ようやく変化したな。
触手を飛ばすだけでは僕を拘束することも殺すことも出来ないと分かったようで、肉弾戦も交えることにしたようだ。
膨れ上がった肥満体のような筋肉達磨がものすごいスピードで迫って来る。
ステータスブースト。
よし、充分ついていける。というか、相手がかなり遅くなった?
ステータスブーストの増加量上がってる?
いつもより動きがいい気がする。
「おノれ! ちょこまかト!」
拳を振り上げ。触手を飛ばし、こちらが触手を切り裂いた瞬間狙って拳を振り降ろす。
空中に結界の足場を作って思いきり蹴り、技後硬直状態のまま飛び上がって回避。
地面が割り砕かれ、ヨーデリヒの舌打ちが響く。
結界を立方体として近くにだすことで、足場として使用できる。これもまたロゼッタが遊びで使っていた魔法の一つだ。
僕はそれを戦闘に使うようにしただけ。
僕のオリジナル魔法なんて全部ロゼッタの魔法を見よう見まねで使いやすくしているだけである。
「なんダ、その立体機動!?」
「がら空きだぞヨーデリヒ!」
真正面に突撃すると見せかけて稲妻のように側面に回り込む。
さらにヨーデリヒが反応するより早く背後を奪い、一撃。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
潰れた声が響く。
慢心はせずに再び結界を蹴りつけバックステップ。
先ほどまで居た場所向けて、無数の触手がうねる様に襲い掛かって来た。
後ろに下がっていた僕は背後に結界を作ってさらに飛ぶ。
触手を纏めてぶった切る。
「当たレぇ!!」
反撃の横薙ぎを真上に飛び上がることで回避、放物線を描きながら、真下のヨーデリヒに剣を突き刺す。
さらに雷撃魔法を剣から放出。
声にならない悲鳴が轟いた。
「死ネ!」
怒り狂ったヨーデリヒは、僕を殺さんと触手全てを真上に飛ばした。
しかし、その時には僕はすでに飛び上がって逃げていて、彼の目の前に悠々と着地。
思い通りにいかない戦いに激昂するヨーデリヒ。
先ほどまでの意図ある攻撃がなくなり、とにかく僕を殺そうと条件反射の波状攻撃を行い始める。
正直、凄く逃げ場のない連撃に見えてくるんだけど、実際はさっきよりも避けやすく撃退しやすくなっていた。
キーリの触手攻撃より全然手ぬるいよヨーデリヒ。
「そろそろ終わりかいヨーデリヒ」
「ふざ、ケるな! 私ハ、最強になった、ナったのだ!!」
その姿が最強の自分、か。
がむしゃらに攻撃してくるヨーデリヒの姿を見ていると、なぜだろう? 前の方が知的で厄介そうな存在だったように思えてくるのは?
強化兵になったことで頭の出来が退化したんじゃないかな?
「覚悟を決めろよヨーデリヒ。僕はそろそろ、本気で行くよ」
「オア゛アアアアアアアアアアア!!」
剣に魔法を宿らせる。
「浄炎剣!」
結界を蹴りつけ一気に距離を詰める。
ヨーデリヒが触手を形成するより早く、彼の胴を袈裟懸けに薙ぎ払う。
駆け抜けた背後、右足を主軸にターンして剣を構える。
すでに切り裂かれたヨーデリヒだったが、速度は速すぎたのか、まだ斬られたことに気付いてないようだ。
ただ、斬り口が急激に燃え上がったことで悲鳴と共に理解したらしい。
ずれ落ちそうになる上半身を慌てて繋ぎ合わそうとしているが、傷口が燃え上がって都度くっつこうとする場所を焼き壊していくため再生できなくなっているらしい。
そうこうするうちに炎を彼の全身を燃え上がらせ。清め浄化するかのように、燃え盛る。
「あづい、あづイィィ!!」
必死に炎を消そうとするが、彼自身ではもう消せる炎じゃなくなっていた。
そして、彼を助けようとする存在はここにはいない。
だから……
踊る様に周囲に助けを求め、覇道を夢見た大国の王は、理想と共に焼かれて消えた――――




