1912話、フェイル、ライオネル終戦
SIDE:フェイル
「うおぉぉぉぉ!!」
歓声が上がる。
また一体、巨大型が倒されたようだ。
もう、ほとんど残っていない巨大型は、すでに連合軍にとっては勲功を手に入れるための存在でしかなく、我先にと殺到して討伐されている。
ここまで来るともう、ライオネル兵も踏ん張る必要もなく、小型の撃破にシフトしている者もかなりの数見かける。
強化兵が駆逐されるのも近いだろう。
と言っても、数が数だけにあと半日はかかるだろうが。
ただ、増援が途絶えたおかげで死者が出ることもなく、多少無茶した爺さんが腰痛を患ったくらいだろうか? それも霊薬で完全復活だったが。
「終わったようだな、フェイル」
「ああ、オスカー、無事だったか?」
「無事ではなかったな。残念だが補給路分断部隊は全滅だった。復活したので戻って来たんだが、アレはお嬢の奇跡、でいいのか?」
「ああ。お嬢が神に成られた。そうか、全滅……辛いことをさせてすまない」
「気にするな。誰かがやらねば各国が消滅していたかもしれないんだ。その礎だというのなら、我が命の使いどころとしては最良だった。まぁこうして死に損なったわけだがな」
オスカー以外のメンツは他の国の増援に向かったらしい。
とはいえ、この状況なら大した仕事はないだろう。
今まで激闘だったのだ。少しは休んでもいいんだぞオスカー?
「そうだな。だが、あと少し働けばもう動く必要もないだろ。もう少しだけ動いてくるさ」
そう言って、オスカーは強化兵撃破に向かっていく。
どうやら挨拶をするためにこちらに来ただけのようだ。
「お疲れ様です、フェイル総司令官様」
今は旗持ちで皆の中心にいるだけの私なので、周囲から見ると休んでいるように見えるかもしれない。
と、思ったのだが、彼女が声をかけて来たのは働け、と告げる以外のものだったようだ。
「キミは確か、ロゼッタ神教の?」
「はい、巫女のテテと言います。ロゼッタ神様がお覚醒なされたので正式に神巫女を襲名しました」
ロゼッタ神教、なぁ。いつの頃からか出現してお嬢を神格化し始めた教団、おそらく、彼らが出来た時に、お嬢は神に成る可能性を手に入れていたんだろう。
なんか、そう思うと運命的というか、宿命だった、と言わざるをえないな。
「お嬢は、神に成って満足してるか?」
「どうでしょう? 本人としては処女神は嫌なんだよ。とか言ってそうですが」
「そりゃ、なぁ。リオネル様とラブラブだったのに、その辺りどうなるんだろうな?」
「それこそ、神のみぞ、知る。でございましょう」
そりゃそうか。
「それで、何か話があったんじゃ?」
「ああはい、ロゼッタ神教よりライオネル連合軍代表のフェイル様に終戦宣言をしていただきたいと思いまして。強化兵駆逐後で構いませんので、終戦宣言をお願いしたく」
「ああ。それは別に構わないが。そういうのはエリオット王がやるのでは?」
「本来ならばそうなのでしょうが、この戦場の主役は連合軍の皆様でしょう?」
なるほど、全体の総司令官である私が適任、と。
エリオット王にひとまず念話で連絡を入れておく。
理由を聞いたエリオット王からはぜひお前がやってくれ、とお墨付きをいただいた。
とはいえ、まだ半日はかかる状況だ。
今のうちに口上でも考えておくかな。
「教祖様より終戦後にロゼッタ神教の巫女として演説をしなさい、と言われているんですが」
「あー、効果的ではありそうだな。でもあまり扇動するような口上は止めさせてもらうぞ?」
「はい、それは問題ないはずです。基本私たちはロゼッタ様の考えに忠実に従うつもりですゆえ。神が嫌がるようなことは一切する気はございません」
そうかな? そう、かも?
いや、でも、結構お嬢はロゼッタ神教を脅威認定してた気がするぞ。
一応、警戒はしておいた方がよさそうだな。
「では、宣言お待ちしております」
巫女が去っていくと、幾人もの兵士が私の元へとやって来た。
どうやら疲れたので休憩に戻ってきたようだ。
なぜか旗の近くに腰を下ろして食事をしたり、ティータイムでゆったりして、再び戦場に赴くらしい。
ここは休憩地点ではないのだが。
まぁいい、ここに旗があると皆に宣言するのが私の役目だ。
ならば自由に使って貰おう。
「総司令官、ちょいと休憩入りますっ」
「ヘイデン、どうだ?」
「いやもう、何匹いるんですかほんと。ちょっと休憩します。ずっと働き詰めでしたから」
皆、一度死にかけてまでも戦ってくれていたからな。
集中力が切れて大問題に発展する前にここでゆったりしていくと良い。
「はぁー。長かった戦いももう、終わりですね」
「ああ。いろいろと反省点はあるが、皆よく頑張った。後一踏ん張りだ。失態の無いよう頼む」
それからも、兵士たちが入れ替わり立ち代わり、旗の元へと寄って来ては戦場へ向かっていくのだった。




