1909話、バルガス、親竜共和国終戦
SIDE:バルガス
「あー、死んだ死んだ」
俺の眼の前でバンディッシュ総大将がヤンキー座りでズル休みしている。
持ち直した連合軍は破竹の勢いで強化兵の群れを押し返し、残っているのは本当にごく少数の大型と、数多の中型小型のみである。
後続部隊が来なくなったおかげで強化兵たちの補充がなくなったのだ。
おかげで頑張れば頑張った分だけ敵が減っていく。
そして、ついに俺らが戦場に立つ必要すらない程に敵の数が激減した。
一時期の絶望ってなんだったんだ? そう思えるほどに一気に数が減った。
「おー、いたいた。バンディッシュ隊長たちお疲れ様ー……なにしてんです?」
「お、そういうお前は一番大変な時に顔すら出さなかったバリーじゃないか」
「ちょおい、酷い言いがかりだな。俺はオスカーさんたちと一緒に補給部隊の撃退してたんだぞ。おかげで超巨大型の群れに単騎突撃で皆死んじまってたんだからな!」
「うげ、お前ら万歳突撃してたのかよ。よくもまぁ逃げずにやったな」
「フェイル隊長からお前たちにしか頼めん、とか、世界の為に死んでくれとか言われるとなぁ。やるしかねぇだろ」
いや、やらねぇよ普通は。
なんでそれで迷わず選択できるんだよ、お前ら精神壊れてんじゃねぇか?
「で、誰が補給路切断部隊に居たんだ?」
「俺とパンダフ、トラヴィス、オスカーさんに、あとなんだっけパンナコッタ? トレビアンフィッシュだっけ? なんかロゼ嬢が組織した奴らが来てたぞ。なんであいつら笑いながら死んでったんだろうな。なんか殺されると分かってるのに楽しそうだったぞ」
それらが全員復活したのか。
んで、そのパンナコッタフィッシュはどこ行ったんだ?
「さぁ? 俺らとは復活後に別れたからな」
ふーん。まぁどっかの戦場に助っ人しにいってんだろうな。
「しかし、俺の仕事ってなさそうか?」
「おぅ、来るのが遅すぎて倒せるのは小型くらいしか残ってねぇぞ。ほれ、万単位の小型駆除やってきな」
「さすがにちょっと遠慮したいな。巨大型の群れに囲まれたせいで軍隊恐怖症になってそうな気分なんだ」
そんな症状あってたまるか。面倒くさいだけだろうが。
いや、症状はあるのか。軍じゃなくて群体の方だけど。
「そんじゃ、この親竜共和国に関してはもう心配はなさそうか?」
「おぅ。ゴリリアスやエゼリア、ザントベルグにヒューマ、それからルギアス王がはっちゃけたからな。凄かったぞ愛するメテオラのため―とか言って超巨大型真っ二つにするの」
「あー、アレな。復活する間を与えずに着地と同時に振り向いて両足薙ぎ払いだろ。そのまま崩れる体に連撃粉微塵切りで核破壊」
「マジか、めっちゃ見たかった!」
「平和になったら竜珠で見れんだろ。どうせ広場で放映するぞ今回の。神話級の映像だからな」
「あー、有り得る。俺らも英雄の仲間入りかぁ」
「いや、生存したのはこの絶望体験済みの人々だろバンディッシュ。全員が英雄扱いだとただの一般兵扱いにされるぞ」
「あー、マジだ。せっかく活躍したってのによぉ。他の奴らも活躍してたから目立ちそうにねぇや」
別に英雄視とかいいじゃないか。俺たちの頑張りで皆が生き残った。
俺たちが守ったんだぜ?
その誇りだけで、充分じゃないか。
「ま、俺らの場合は既に英雄視されてるから、お前らも見ただろー、バハムティルウス討伐戦」
「俺も居たんだが?」
「そうだっけ?」
「ゴルァそこの総大将共! なぁに遊んでやがる! 俺らが働いてんのに怠けてんじゃねぇ! 部下にも他国にも示しつかねぇだろうが!!」
な、なぁぁ!? ザントベルグに怒られた!?
周囲から失笑が漏れる中、俺たちは慌てて小型討伐を再開させるのだった。
うぅ、バンディッシュの奴がサボってるから俺までサボってるみたいに言われたじゃないか。
「ふ、はは、ザントベルグも隊長職が板について来たな。どうするバンディッシュ隊長、バルガス隊長そろそろ世代交代が近いんじゃないです?」
「おっま、ざけんな。俺ぁまだまだ現役だぞ!」
「そうそう、総大将の中でも比較的若い方だからな俺ら」
でも、確かにザントベルグの指揮は格段に上がってる。
それもこれもお嬢との演習を経験してから爆発的に上がった感じだ。
今の彼なら初期ライオネル軍の部隊長以上に有能だろうな。俺がお嬢に出会って無けりゃ、さっさと隊長職奪われててもおかしくはない実力だ。
まぁ双方お嬢に出会ったことで才能開花したようなもんだから、元の実力は似たり寄ったりっぽいけどな。
はぁ、ほんと、お嬢は不思議な人だったな。
また会えるんだろうか? 神に成っちまったってことはおいそれと下界には来ないよな。
じゃあ、もう今生の別れになっちまうってことか。それはちょっと、辛いな。せめて一言、挨拶位させてくれよ、俺ら、あんたから貰ったもの、まだなんも返せてねぇんだよ……




