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1923/1986

1908話、アマルガム、サイエンスフィア終戦

SIDE:アマルガム


「ありゃー、なんかもう参戦するほどじゃねぇな」


 俺が一息ついた時だった。

 トラヴィスの野郎がしれっと戦場に参戦しているのに気付く。

 向こうも気付いたようで、中型を撃破しがてら、俺の元へとやってきた。


「何が参戦するほどじゃねぇ、だよ。今までどこいってやがった。こっちは絶望的な状況で一回敗北してんだよ!」


「いやー、フェイル隊長にお願いされて道中の補給路分断作戦してたんだよ。超巨大型に囲まれて今まで死んでてな」


 頭を掻きながらどうでもよさそうに告げてくるが、こいつが死んだのかよ。

 現実味のない事実に何も言えなくなる。

 まぁ、そうだよな、理由なくこいつらがいない訳もない。


 おそらく一番重要な場所で精鋭のみで戦っていただろうことは想像に難くない。

 そして、負けたのだ。

 というか、補給路……

 あれか、一日経ったあたりで巨大型以上が大挙して押し寄せてきたの、もしかしてお前らが突破されたから、だったりするのか?

 それって、その時間まではあの群相手に少数で戦ってたってことだよな。

 俺ら以上の激戦地で? お前ら本当に人間か?


「それにしても、ゴルディアスの大将ははっちゃけてんな」


「次々に巨大型や超巨大型倒してくれるんで皆の士気も向上してるぜ。正直俺も一緒に雄叫び上げていたいけどな、他国の指揮をしておかないと死人が出ちまう。今目指してんのは復活後の死者ゼロ完全勝利って奴だ」


「そりゃ、守る者が多くて大変だ。んじゃま俺もその一助となりますか。行ってくる!」


 と、トラヴィスが向かったのは巨大型以上ではなく、大型中型相手に苦戦気味の一団だった。

 一番いい役割持ってくじゃないか。

 

「ん? ああっ! 何でいるんですかサルガーさん」


 あぁん? ああ、なんか大声聞こえたと思えば。

 ありゃ確かお嬢が作ってロゼ嬢が僻地に送ったっていう黒薔薇の守護者たちか。

 おっさん共が互いを守りながら戦ってる一団なので無駄に目立ってたな。

 いちいちお前が好きだー、とか大声出してかばい合ってるからつい振り向いちまうんだよな。

 大げさだし距離が近いし、たまにウインクし合ってるので出来るだけ近寄らないようにしていたメンバーだが、実力自体はかなり高かった。

 やはりお嬢式訓練は受けていたようで、超巨大相手でも倒せてたからな。


「お、おお、ライアネリオじゃないか。一応俺も、ほら、守りたい妻の為に戦ってるから、な」


「でもカスタローレルじゃなくなぜサイエンスフィアに?」


「そりゃ、あの国には思い出が多すぎて、だな。この国に引っ越したんだ」


「そう、ですか……あの、この戦い終わったら……」


「悪い、妻が、待ってるんだ。じゃあな」


「あ……」


 おい、なんか男同士で男女のままならない恋愛模様みたいな状況起こしやがったぞあいつら。

 いや、関わらない。関わらないようにしておこう。俺には全く関係のない話だしな、うん。


「アマルガム副総大将、南側が大分薄くなってます。巨大型、いえ、大型以上が居なくなりましたよ!」


「ほんとかネクサス! それならお前は他の方角救援に向かえ、俺は様子を見てくる、あと、可能そうならゴルディアスにちゃんと指揮取る様に言っておいてくれ。俺ばっか貧乏くじ引かせんなって」


「了解! ってかそれくらい自分で言ってくださいよ」


「そんな余裕があればな! カール! 西側の3の2、中型相手にガキが敗北寸前だ、お前が一番近いから助けてこい!」


 さすがに善戦し始めた、と言っても危うい場所はいくつもある。

 その周辺の遊撃可能なメンバーをフォローに向かわせる指示を出すのに手いっぱいなんだ。

 せめて東と北の指示くらいはやってほしい。南と西は俺が担当するから。


「しかし、いい動きしてんなトラヴィスの奴。また腕を上げたか?」


 俺らよりも速度が速いし動きも的確になってないか?

 これは単純な技術の差ではないな、おそらくお嬢の奇跡でレベルが上限突破した際、俺らよりもずっとレベルアップしたんだろう。

 つまり、それだけ俺らよりもレベル上げをしていたってことだ。


 フェイル以下お嬢親衛隊とオスカーはかなり無茶なレベリングしてたからな、よほどお嬢に追いつきたかったんだろう。

 その実力が、今は存分に発揮されているのだろう。

 

「あとはもう、駆除戦に突入だな。大型以下を駆逐してしまえば完全勝利、追加も来なくなったみたいだし、明日には勝利宣言できそうだ」


 まだ、遥か遠くに少し見えるだけの大地は、その雄大さを少しずつ、取り戻し始めていた。

 強化兵の群れで見えなくなっていた俺たちの星が、ようやく元に戻ろうとしているのだ。

 本当に、休みのない長い戦いだった。


「お嬢……結局貴女に助けられたばかりでした。せめて、この戦場だけは、俺たちの手で片付けます」


 ここまでお膳立てされたのだ。もうこれ以上、あの人に無様な姿なんて見せられん。

 ライオネルの兵として、誇れる自分で在るために、あの人が旅立つこの世界に、不安要素を残さぬために。勝つぞ、死者も障害者も一切出すことなく、ここからは先は完全勝利だ!

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