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1921/1986

1906話、シュヴァイデン、ファーガレア終戦

SIDE:シュヴァイデン


 戦場にぽつぽつと、大地が見え始めていた。

 初期の戦争から大地を埋め尽くしていた強化兵の群れがまばらに空間を見せ始めたのである。

 プルータリスのゴーレムも全力稼働しているが、鼻血を吹きだすほどの負担にはなっていないようだし、戦線もだいぶ安定して来た。


 なにより巨大型以上の強化兵を優先して倒したおかげでもうほとんど見かけなくなっているのが功を奏したと言ってもいいだろう。

 やはりあれらさえいなければ他国の兵も十分機能してくれるようだ。


「シュヴァイデン総大将、こちらは無事で?」


「ん? パンダフか! お前今更戦場に来たのか!?」


「今更って、俺らも必死だったんですよ。俺らの戦場が落ち着いたんでこっちに来たんです。ほんともう、フェイル総司令官も無茶振りが過ぎます」


「なんだ、どこ行ってたんだお前たち?」


「中継点ですよ。各国とマギアクロフトを繋ぐ中継地点で移動中の強化兵を出来る限り減らす仕事、ほんともう一人であんな数無理だって。他の方角もトラヴィスやバリー、オスカーがやってましたけど、たった四人で出来る仕事じゃなかったっすわ。ほんともうさっきまで死んでました」


「お、おお、そうか……」


 つまり、物量に成すすべなく潰されてお嬢による奇跡で復帰できたわけな。

 そう考えると、確かに戦争初期の頃は巨大型以上の出現率が極端に少なかったな。

 もしかしてこいつらが間引いてたのか? それで、途中で物量に押されて死んだせいで巨大型以上が大挙して押し寄せて来た、はは。孤軍奮闘しすぎだ馬鹿野郎。

 人知れず死んでたとか、ほんと、もう。戻って来れて良かったなパンダフ。


「すいませんね。もうちょっとやれる気がしてたんすけど、あいつら予想以上に強くて。これでも復活してすぐにこっち来たんすよ」


「いや。助かるよ。といってももう、巨大型以上は駆逐済みだ。最後の一体もほら、ザインとコパが撃破してるだろ」


「あとはもう残存戦力の撃破、ですね。後続部隊が出てこなくなったおかげで何とかなりそうだ」


「そう、それだよパンダフ、お嬢がやってくれたのか?」


「え? いや、俺そん時死んでたんで」


「こっちは神の勝利宣言で絶望中だったんだ。あー、ほんと、よくぞここまで巻き返せた。お嬢のおかげだ、頭が上がらんな」


「しかし、お嬢はついに神、かぁ」


「最後に挨拶、したかったな」


「代わりに祈りましょう。会えなくとも、俺らの思いは汲んでくださる人ですし」


「それもそうだな。ロゼッタ神に我らの勝利を!」


「んじゃま、残りの強化兵駆逐しちまいましょうか!」


 大型以下の強化兵しかいなくなった戦場は、瞬く間にその規模を縮小させ始めていた。

 とはいえ、数も多い強化兵。未だに続く増援は小型ばかりとはいえ、絶え間なくやってきており、今後数時間は駆逐作業が続くようだ。


 全員の戦意は高く、敵戦力が弱くなったからと慢心を覚えるようなメンツは一切存在しない。

 たとえ四肢を落として無力化した強化兵が相手でも、一切手を抜くことなく徹底的に安全策を取って撃破している。

 もう、ここから先は誰一人として死なせない。その思いが皆に芽生えているのだ。


「しかし、すげぇ戦場だな。ヴァルトラッセや冒険者の手伝いはあると思ってたが……」


 中型を撃破したパンダフが戦場を見渡し思わず呟く。


「あいつら暗殺者だろ。あっちは犯罪犯してそうだ。向こうのは落ちぶれた英傑って感じだな。それに魔物たちと神官が協力してやがる。何だこの戦場?」


「これがお嬢の奇跡って奴さ。ほんと、お嬢の顔の広さで魔物が味方して来た時は泣きそうになったぞ」


「そんときに俺も居たかったな。あー、もう、しばらく夢に見るぞ、超巨大型の群れに囲まれて殺された瞬間はっ」


「そりゃ、えげつないな。よく生き返れたな」


「俺もそう思う」


 手だけはしっかりと動かし強化兵を駆逐しながら、私たちは情報交換を行っていく。

 本当に、パンダフたちも見えない場所で必死に戦っていたのだろう。

 中継地点となれば他国行の強化兵も合流状態の大行進だ。

 そんな場所に単騎突撃とか、本当に死にに行くようなものである。


 お嬢なら絶対に向かわせないだろう場所ではあるが、フェイルは違った。

 絶対にここに配置しなければならないだろう、と判断し、苦渋の選択で精鋭を送り込んだのだ。

 結果を言えば、彼らは途中で惨敗したのだろう。

 それが、後半に一気に出現して来た超巨大型の群れ、その正体である。


 もしもパンダフたちが奮闘していなければ、もっと早い段階でアレが襲って来ていた。

 そうなれば、おそらくファーガレアはもっと早くに壊滅状態となっていただろう。

 聖女の障壁も持たなくなっていたかもしれず、全滅していてもおかしくなかった。


「とはいえ、このままいけばこちらの勝利は確実だ。最後の最後、ヘマはするなよパンダフ」


「当然、ここで阿呆みたいに二度も死んだりする気はないですよ」


 とはいえ、さすがにこの段階になると害虫駆除を行っている気分になって来るな。気を引き締めていかないと私の方が大怪我しそうだ。

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