1903話、フェイル、ライオネル防衛線9
SIDE:フェイル
「我らは護国の兵であるッ」
戦場に高らかに声が響き渡る。
動き出した強化兵相手に、仲間たちが立ち向かう。
メルクナードの声が近くで聞こえていた。
メルクナードの戦乙女を筆頭に、死したはずの兵士たちが蘇り、再び戦場を駆け巡っている。
「我らは民の盾であるッ」
ライオネル同様に、水を得た魚のように、彼らは縦横無尽に駆け巡る。
強化兵たちは次々と切り裂かれ、巨大型すら脅威にならず。
必死に立ち向かう超巨大型が、唯一拮抗を生んでいた。
「我らが背には国がある! 民が居る! 愛しき家族がここに居る!!」
ライオネル軍も負けじと声を出しているが、この近辺はメルクナード一色になりつつあった。
それだけ、戦乙女の動きがバケモノじみている。
まるでお嬢のように、武器を投げる様に振り回しては次の武器をアイテムボックスから取り出し、振り切った武器を閉まっていくその姿は、一部熱狂なファンを創り出していた。
「戦う理由は守るため! 失わぬために剣を取れ!」
たった一人、超巨大型と戦う女性に、他の強化兵を近づけはしないと兵士たちが奮闘する。
まるで天竜討伐時のお嬢のような立ち振る舞いだ。
「艱難辛苦が襲えども、お前の隣に我がいる!! 我が隣には戦友がいる!!」
この文言を考えたのもお嬢なのだよな。
他にも、いくつかの国で同様に、自国にアレンジした掛け声が飛び交っている。
「世界を守護する者こそ、我であるッ!!」
ただ、全ての掛け声で、自国が入って来る場所が今は世界に変わっていた。
皆、思いは一緒なのだという意思がここに込められているように思う。
「さぁ、ライオネル、他国に譲ってばかりはいられんぞ。声を張り上げ切り込むぞ!!」
「我らは祖国の剣であるっ!!」
はためく国旗を振り捌き、巨大強化兵を駆逐していく。
はじめ、私の武器が剣でも槍でもなく、旗。だと言われた時は部隊長なのに旗持ちさせられるのか!? と驚いたものだが、慣れてしまうと、なぜだろうな? これほど頼りになる武器はもう、他に存在しない気すらしてくる。
「ライオネルはここにある! 我らが国は常にある! さぁ集え戦士たち!! 聖戦終結は目の前だ!!」
体が軽い。
今までから格段にレベルアップしたのが分かる。
不思議な感覚だが、おそらく私は限界を突破している。9999レベルという上限を超えているのだ。
おかげで苦戦していたはずの超巨大強化兵相手に無双できてしまう。
あの巨大な拳を喰らっても真正面から受け止められるし、薙ぎ払える。
戦場を無数のライオネル兵が駆け巡る。
初めから全力全開。しかも戦闘開始前から格段にレベルアップした状態での戦いだ。
今までの苦戦が嘘のように各地で好転しているのが分かる。
「総司令官、見てください、あそこ、大地が見えます!」
「ドーラス? 確かに見えるが……まさか! そう、なのか?」
それは遥か彼方に見える大地だった。
しかし、先ほどまでは見渡す限り強化兵しかいなかった地平線の彼方である。
そこに、地面が見える。
それはつまり、強化兵の数が、減っていることに他ならない。
「全軍そのまま聞いてくれ! 追加の強化兵が止まった! ここにいる奴らを駆逐してしまえば我々の勝利だ!!」
気勢が上がる。
鬨の声が無数に生まれ、さらに過激に旺盛に、戦場へと皆が殺到していく。
死傷者は、一切いない。
強くなったライオネル兵のおかげで致命的な場面がフォローされているおかげだ。
霊薬もまた飲めるようになっているらしく、皆次々と強化兵を駆逐していく。
もたもたしていると倒す相手が居なくなってしまいそうである。
「あはははは、入れ食いだぁー」
「ちょっとシゼル、そこ邪魔!」
「シュプレシア、後ろ後ろーっ」
「知ってる、フライジャル任せる」
様々な仲間たちが戦場で戦っている。
あちらではライオネル、こちらでは魔物、あるいはザルツヴァッハとエルデンクロイツの兵、共闘するコウチャノサイテン国兵士とデーバルデ国の兵士。あちらではメーテルゲルテン兵とカスタローレル兵が背中合わせに戦っている。
「ゲルマン、行くぞ!」
「私に命令するな小娘!」
「あっれ、ヴィオリアの姉さんその人彼氏?」
「なぁ、違うわよクイッキル! ってかあんたこそこんな場所でサボってんじゃないわよ」
うん、この近辺はプライダル商店の店員たちが多いみたいだな。
この辺りは彼らに任せておけばいいか。
よし次の戦場は……ん? 老婆が戦場にいる!?
「ふぉっふぉっふぉ、フェイルじゃないかえ。こっちはベルングシュタット家がおるで大丈夫だわ」
ああ、ベルングシュタット家の影兵たちか。ならこちらも十分、向こうは戦乙女がいるし、あっちは……ヴァルトラッセが猛威を振るっているな。なんてことだ、もう戦場が目いっぱいで私が戦えそうな場所がない。
……仕方ない、中心地で旗、持っておくか。




