1902話、リズリンド、ナゲキノカルマ防衛線9
SIDE:リズリンド
「はあぁぁぁぁ!!」
ひたすらに強化兵を狩った。
気付いた時には奴らが動き出していて、不意を突かれて一撃貰ってしまった。
何とか防御しきれたけど、背中から打ち付けた時に頭に瓦礫でも当たったのかもしれない。
右の視界が赤く染まっている。
それでも、止まらない。止まれない。
私、気付いたの。
どうしようもない国だけど。
お金もない、資材もない、食材もない。
そんなないない尽くしのナゲキノカルマ。
もう国までなくなってしまったけれど、それでも……
私、やっぱりこの国好きみたい。
これ以上、好き勝手させたくない。
国がなくなっても、皆が居れば何とかなる、そう信じてるから。
だから、たった一人でも、ううん。ヴァルトラッセや一部の人たちと死ぬまで頑張るから。
神なんかに、負けないでほしい。
降伏なんて、しないで……
「しまっ」
超巨大強化兵の一撃が襲い掛かる。
横合いからの一撃に反応が遅れてしまった。
今からだと回避も間に合わない。
ああ、悔しいなぁ。
いい人生だったとも言えなかったけど、そこまで悪い人生じゃなかった。
王族のメイドになったから、このまま王族の誰かに襲われて、愛妾扱いされるんだろう、位の人生だったはずなのに、いつの間にか自分が王になっていた。
それからは必死だった。
王族の仕事なんて知らないし、国は滅びかけだし、お金はないし、未来へつなぐ糧もない。
それでも、国民は凄く、逞しくて優しくて。
いろんな人に助けてもらいながら、何とか女王やって来れた。
それも、もう終わ――――
「我らは祖国の剣である!」
突然、目の前に迫っていた拳が細切れになって消え去った。
「我らは祖国の盾であるっ」
私を庇う様に横合いから駆けつけてくる無数の兵士たち。
肩にポンと手を置かれ、びっくりして振り向くと、魔族の女がそこにいた。
たしか、コーネリア、さん?
「我らが守るは国の民! 平和な日々! 愛しき家族ッ!!」
兵士たちが動き出す。
私にその背を見せつけながら、漢たちが強化兵相手に奮闘を始める。
「なん、で? ライオネル兵はもう、戦えないはず……」
「我らが背には国がある、国の中には民がいる。民の中には家族がいるっ」
私を追い越すように、ライオネル以外の兵士たち、冒険者、魔族に至るまで、重症だった人や死んだはずの人まで、見覚えのある勇士たちが戦場へと辿り着く。
何が、起こったの?
「集中しすぎとって気付かんかってんな。奇跡がな、起きてん」
き、せき?
「失礼、リズリンド女王陛下。不甲斐なき私たちですが、願わくば、もう一度、ナゲキノカルマを、貴女達が守りたいものを、私たちにも守らせていただきたい」
「ネイサン……いい、の?」
ネイサン=ブラホード。彼はこの国に派遣されたライオネルの総大将だった。
しかし霊薬切れで四肢欠損、重症でメイズのダンジョンに収容されたはず……
目の前にいる彼は、五体満足、障害など一切なく、真剣な眼で私を射貫く。
思わず、自分の頬を抓ってみた。
これは、死ぬ間際に見た私の幻覚? 痛い。幻覚じゃ、ない?
「奇跡……みたい」
「みたいちゃうて、奇跡やねん。ロゼッタいうんがな、神なったらしいんよ。文字通り、神の奇跡使うて重傷者までいきなり回復。死人も踊りだして大慌てや。んでも、皆もう、やるべきことは分かっとるんや。ウチも、そろそろ行くな?」
戦場へと、敗北者たちが舞い戻る。
まだやり残したことがあるのだと。
次こそは絶対に負ける気はないと。
誰も彼もが覚悟を決めて、今までのような油断も慢心も恐怖もなくて。
英傑たちが、戦場を駆けていく。
凱歌のように奏でられる掛け声。
ライオネル式の掛け声を、今はもう、冒険者も魔族も、魔物だって声高らかに奏で合う。
世界を守るのは自分たちだと。
この地を守るのは俺たちだと。
ナゲキノカルマはまだ、終わっていないのだと。
ならば、ここで諦める女王がどこにいる?
「私は、私は祖国の王であるっ」
そうだ、このナゲキノカルマは、私の故郷、私の、祖国。
「私は祖国の、民であるっ」
国王だって民なんだ。この国に根ざす人なんだ。
「私が守りたいのは、ナゲキノカルマ、その住民、戦場で戦う貴方達っ」
だから、守る。だから、戦う。
ロゼッタ様、神になったなら、わかるよね?
守るものが多いほどに、弱みなんて見せられなくなる。
「だから……集え英傑、ナゲキノカルマはここにある! リズリンドはここにいるっ!」
それはとても大変で。
それはとても光栄で。
「我こそが、ナゲキノカルマの旗である!!」
ナゲキノカルマは私の国だ。だから、私が守るんだ。私たちが守るんだっ。
見ていてロゼッタ様。この地は独り立ちできるんだって、貴女の見ているその前で、ちゃんと証明してみせるから。だから、安寧を願って、見守っていてくださいっ。
「行くぞナゲキノカルマ連合軍! 総員、突撃――――ッ!!」
最終決戦を、始めよう!!




