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1917/1986

1902話、リズリンド、ナゲキノカルマ防衛線9

SIDE:リズリンド


「はあぁぁぁぁ!!」


 ひたすらに強化兵を狩った。

 気付いた時には奴らが動き出していて、不意を突かれて一撃貰ってしまった。

 何とか防御しきれたけど、背中から打ち付けた時に頭に瓦礫でも当たったのかもしれない。

 右の視界が赤く染まっている。


 それでも、止まらない。止まれない。

 私、気付いたの。

 どうしようもない国だけど。

 お金もない、資材もない、食材もない。

 そんなないない尽くしのナゲキノカルマ。

 もう国までなくなってしまったけれど、それでも……


 私、やっぱりこの国好きみたい。

 これ以上、好き勝手させたくない。

 国がなくなっても、皆が居れば何とかなる、そう信じてるから。

 だから、たった一人でも、ううん。ヴァルトラッセや一部の人たちと死ぬまで頑張るから。

 神なんかに、負けないでほしい。

 降伏なんて、しないで……


「しまっ」


 超巨大強化兵の一撃が襲い掛かる。

 横合いからの一撃に反応が遅れてしまった。

 今からだと回避も間に合わない。


 ああ、悔しいなぁ。

 いい人生だったとも言えなかったけど、そこまで悪い人生じゃなかった。

 王族のメイドになったから、このまま王族の誰かに襲われて、愛妾扱いされるんだろう、位の人生だったはずなのに、いつの間にか自分が王になっていた。

 それからは必死だった。

 王族の仕事なんて知らないし、国は滅びかけだし、お金はないし、未来へつなぐ糧もない。

 それでも、国民は凄く、逞しくて優しくて。

 いろんな人に助けてもらいながら、何とか女王やって来れた。

 それも、もう終わ――――


「我らは祖国の剣である!」


 突然、目の前に迫っていた拳が細切れになって消え去った。


「我らは祖国の盾であるっ」


 私を庇う様に横合いから駆けつけてくる無数の兵士たち。

 肩にポンと手を置かれ、びっくりして振り向くと、魔族の女がそこにいた。

 たしか、コーネリア、さん?


「我らが守るは国の民! 平和な日々! 愛しき家族ッ!!」


 兵士たちが動き出す。

 私にその背を見せつけながら、漢たちが強化兵相手に奮闘を始める。


「なん、で? ライオネル兵はもう、戦えないはず……」


「我らが背には国がある、国の中には民がいる。民の中には家族がいるっ」


 私を追い越すように、ライオネル以外の兵士たち、冒険者、魔族に至るまで、重症だった人や死んだはずの人まで、見覚えのある勇士たちが戦場へと辿り着く。

 何が、起こったの?


「集中しすぎとって気付かんかってんな。奇跡がな、起きてん」


 き、せき?


「失礼、リズリンド女王陛下。不甲斐なき私たちですが、願わくば、もう一度、ナゲキノカルマを、貴女達が守りたいものを、私たちにも守らせていただきたい」


「ネイサン……いい、の?」


 ネイサン=ブラホード。彼はこの国に派遣されたライオネルの総大将だった。

 しかし霊薬切れで四肢欠損、重症でメイズのダンジョンに収容されたはず……

 目の前にいる彼は、五体満足、障害など一切なく、真剣な眼で私を射貫く。

 思わず、自分の頬を抓ってみた。

 これは、死ぬ間際に見た私の幻覚? 痛い。幻覚じゃ、ない?


「奇跡……みたい」


「みたいちゃうて、奇跡やねん。ロゼッタいうんがな、神なったらしいんよ。文字通り、神の奇跡使うて重傷者までいきなり回復。死人も踊りだして大慌てや。んでも、皆もう、やるべきことは分かっとるんや。ウチも、そろそろ行くな?」


 戦場へと、敗北者たちが舞い戻る。

 まだやり残したことがあるのだと。

 次こそは絶対に負ける気はないと。


 誰も彼もが覚悟を決めて、今までのような油断も慢心も恐怖もなくて。

 英傑たちが、戦場を駆けていく。

 凱歌のように奏でられる掛け声。

 ライオネル式の掛け声を、今はもう、冒険者も魔族も、魔物だって声高らかに奏で合う。


 世界を守るのは自分たちだと。

 この地を守るのは俺たちだと。

 ナゲキノカルマはまだ、終わっていないのだと。


 ならば、ここで諦める女王がどこにいる?


「私は、私は祖国の王であるっ」


 そうだ、このナゲキノカルマは、私の故郷、私の、祖国。


「私は祖国の、民であるっ」


 国王だって民なんだ。この国に根ざす人なんだ。


「私が守りたいのは、ナゲキノカルマ、その住民、戦場で戦う貴方達っ」


 だから、守る。だから、戦う。

 ロゼッタ様、神になったなら、わかるよね?

 守るものが多いほどに、弱みなんて見せられなくなる。


「だから……集え英傑、ナゲキノカルマはここにある! リズリンドはここにいるっ!」


 それはとても大変で。

 それはとても光栄で。


「我こそが、ナゲキノカルマの旗である!!」


 ナゲキノカルマは私の国だ。だから、私が守るんだ。私たちが守るんだっ。

 見ていてロゼッタ様。この地は独り立ちできるんだって、貴女の見ているその前で、ちゃんと証明してみせるから。だから、安寧を願って、見守っていてくださいっ。


「行くぞナゲキノカルマ連合軍! 総員、突撃――――ッ!!」


 最終決戦を、始めよう!!

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メイドさんが真の女王になった瞬間である。
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