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1892/1986

1877話、メテオラ、親竜共和国防衛線7

飲み会行ってて投稿遅れました

SIDE:メテオラ


 なぜだろう?

 その光景を見つめていると、私の胸に去来するのは、父や兄たちが死んだと聞かされた、あの時の絶望と同じものだった。

 辛いことは沢山あった。食事に逃げて丸々と太ったりもした。

 それでも、ルギアスが再び王族へと迎え入れてくれて、女帝ではなくなったが、ルギアスの妻として、せめて女としての幸福を、そう思った矢先だった。


 国がまた、滅んでいく――――

 私はまだ、罪を償いきれていないのだろうか?

 なんの罪があるのだろうか?

 罪が分からない。何をすれば赦されるのかわからない。


 家族を全て無くした罰。

 生まれたこと自体が罪?

 天竜をロゼッタに嗾けた罪?

 国が亡ぶ罰は受けた。

 女帝から転がり落ちる罰を受けた。

 何もできず太っていくしかできなくて、ルギアス任せに国が戻るのを待っていたことが罪なのか?


 ルギアスに妻として新たな国へと連れてこられてからは、彼の良き妻であろうと努力した。

 その結果が、これなのか?


「メテオラ様、ここは危険です!」


 近衛兵が必死に告げる。

 崩壊し始めている町壁の上、迫りくる無数の強化兵に、私は力なく膝をつく。

 ルギアスも必死に戦っている、兵士も、冒険者も、一般人だって。

 魔物迄手伝いに来て、空からヴァルトラッセもやってきて……


 好転するはずだった。

 なのに、目の前に移る光景は、こちらへとユウユウ迫りくる雲より大きな強化兵の群れ。

 超巨大型。ライオネル兵が何十、何百と揃って戦わないと戦いにすらならないバケモノ。それが群れを成していた。


 ヴァルトラッセが居れば数体で一体受け持てる?

 あれだけの数、戦えるのか?

 無理だろう。

 すでにもう余力がない。

 私だってパワーレベリングはしている。だから戦うことはできる、でも中型までだ。一体を受け持てばそれで限界。

 今の状況では焼け石に水だ。


 神よ……

 私はどれほどの罪を犯したのですか?

 我が臣民は、どれほどの罰を受けねばならないのですか?

 なぜ……なぜ? なぜ!!


 絶望が迫って来る。

 抗う術がない。

 もう手一杯だ。

 これ以上どうすればいいのか?


 国は崩壊し、町の機能は停止して、人々は傷つき倒れ、それでもまだ蹂躙が止まらない。

 傷病施設だけはなんとか死守しているけれど、回復アイテムも魔法も追いついていない。

 死者もすでに何万と出ているだろう。


「ルギアス……」


 物心ついた時から、ずっと一緒にいた。

 父が死んだと聞かされた時も。

 兄たちが死んだと聞かされた時も。

 母たちが毒殺されたと聞かされた時も。


 何度も、毒殺されそうになった。

 信頼した臣下に裏切られたことも数知れず。

 暗殺者だって毎日のように押し寄せた。


 いつも、私の隣には、ルギアスが居た。

 寝所で待機し、暗殺者を撃退し。

 体中に傷を作りながら守ってくれた。

 毒を煽って死にかけた時だってずっとそばで祈ってくれた。


 年の差が離れている?

 全く問題ない。

 他のどの男に嫁ぐよりも、私はルギアスが貰ってくれてよかったと思っている。

 この男しかいないのだと、ずっと思っていた。

 だから、だからっ。


 私は、殺されても構わないから、ルギアスだけは。

 ルギアスだけは、私のせいでずっと苦労させたから。

 ルギアスだけは、殺さないで。

 私から取り上げないで……


「たすけて……」


 両手をぎゅっと握り締め、胸に押し当て声を殺して泣いていた。

 こんな絶望的な状況なのに、私は国民ではなく、ただ一人の無事だけを祈り続ける。

 

「無事に戻って来い、ルギアス……」


「メテオラ嬢!!」


 不意に、浮遊感。

 足元が崩れ、瓦礫の中に飲まれるように自身が落下していく。

 願い、聞き届けてくれるだろうか?

 神、は絶対に叶えてくれないだろうな。

 なら、誰なら叶えてくれるだろう?


―― 世話の焼ける ――


 不意に、浮遊が止まる。

 驚いて目を開けると、トレントに間違えそうになった樹人族に抱えられていた。


「ヴァルトラッセか。大儀だな」


―― 無防備すぎる。諦めるには早かろう? ――


「いや、さすがに十分すぎるだろう。我々はようやった。人類は神に抗い戦った。もう、充分ではないのか?」


―― 艱難辛苦しか与えぬ者は神ではない。それを乗り越えた先にこそ、神の祝福が存在する。我々はそれを知っている ――


 何を偉そうに。

 我々よりも歴史の浅い種族がよくほざく。


―― どうせ祈るなら双神などというものではなく、我らの神に祈るといい ――


「お前の神、ねぇ。一応聞くが、その名は?」


―― 当然、ロゼッタ神様だ ――


 神じゃないだろう。だが、そうだな。一回くらいは祈ってみるか。

 なぁロゼッタよ。

 私が祈ってやる。お前を神だと祈ってやる。

 だから、ルギアスを無事、生還させてくれ――――

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