1877話、メテオラ、親竜共和国防衛線7
飲み会行ってて投稿遅れました
SIDE:メテオラ
なぜだろう?
その光景を見つめていると、私の胸に去来するのは、父や兄たちが死んだと聞かされた、あの時の絶望と同じものだった。
辛いことは沢山あった。食事に逃げて丸々と太ったりもした。
それでも、ルギアスが再び王族へと迎え入れてくれて、女帝ではなくなったが、ルギアスの妻として、せめて女としての幸福を、そう思った矢先だった。
国がまた、滅んでいく――――
私はまだ、罪を償いきれていないのだろうか?
なんの罪があるのだろうか?
罪が分からない。何をすれば赦されるのかわからない。
家族を全て無くした罰。
生まれたこと自体が罪?
天竜をロゼッタに嗾けた罪?
国が亡ぶ罰は受けた。
女帝から転がり落ちる罰を受けた。
何もできず太っていくしかできなくて、ルギアス任せに国が戻るのを待っていたことが罪なのか?
ルギアスに妻として新たな国へと連れてこられてからは、彼の良き妻であろうと努力した。
その結果が、これなのか?
「メテオラ様、ここは危険です!」
近衛兵が必死に告げる。
崩壊し始めている町壁の上、迫りくる無数の強化兵に、私は力なく膝をつく。
ルギアスも必死に戦っている、兵士も、冒険者も、一般人だって。
魔物迄手伝いに来て、空からヴァルトラッセもやってきて……
好転するはずだった。
なのに、目の前に移る光景は、こちらへとユウユウ迫りくる雲より大きな強化兵の群れ。
超巨大型。ライオネル兵が何十、何百と揃って戦わないと戦いにすらならないバケモノ。それが群れを成していた。
ヴァルトラッセが居れば数体で一体受け持てる?
あれだけの数、戦えるのか?
無理だろう。
すでにもう余力がない。
私だってパワーレベリングはしている。だから戦うことはできる、でも中型までだ。一体を受け持てばそれで限界。
今の状況では焼け石に水だ。
神よ……
私はどれほどの罪を犯したのですか?
我が臣民は、どれほどの罰を受けねばならないのですか?
なぜ……なぜ? なぜ!!
絶望が迫って来る。
抗う術がない。
もう手一杯だ。
これ以上どうすればいいのか?
国は崩壊し、町の機能は停止して、人々は傷つき倒れ、それでもまだ蹂躙が止まらない。
傷病施設だけはなんとか死守しているけれど、回復アイテムも魔法も追いついていない。
死者もすでに何万と出ているだろう。
「ルギアス……」
物心ついた時から、ずっと一緒にいた。
父が死んだと聞かされた時も。
兄たちが死んだと聞かされた時も。
母たちが毒殺されたと聞かされた時も。
何度も、毒殺されそうになった。
信頼した臣下に裏切られたことも数知れず。
暗殺者だって毎日のように押し寄せた。
いつも、私の隣には、ルギアスが居た。
寝所で待機し、暗殺者を撃退し。
体中に傷を作りながら守ってくれた。
毒を煽って死にかけた時だってずっとそばで祈ってくれた。
年の差が離れている?
全く問題ない。
他のどの男に嫁ぐよりも、私はルギアスが貰ってくれてよかったと思っている。
この男しかいないのだと、ずっと思っていた。
だから、だからっ。
私は、殺されても構わないから、ルギアスだけは。
ルギアスだけは、私のせいでずっと苦労させたから。
ルギアスだけは、殺さないで。
私から取り上げないで……
「たすけて……」
両手をぎゅっと握り締め、胸に押し当て声を殺して泣いていた。
こんな絶望的な状況なのに、私は国民ではなく、ただ一人の無事だけを祈り続ける。
「無事に戻って来い、ルギアス……」
「メテオラ嬢!!」
不意に、浮遊感。
足元が崩れ、瓦礫の中に飲まれるように自身が落下していく。
願い、聞き届けてくれるだろうか?
神、は絶対に叶えてくれないだろうな。
なら、誰なら叶えてくれるだろう?
―― 世話の焼ける ――
不意に、浮遊が止まる。
驚いて目を開けると、トレントに間違えそうになった樹人族に抱えられていた。
「ヴァルトラッセか。大儀だな」
―― 無防備すぎる。諦めるには早かろう? ――
「いや、さすがに十分すぎるだろう。我々はようやった。人類は神に抗い戦った。もう、充分ではないのか?」
―― 艱難辛苦しか与えぬ者は神ではない。それを乗り越えた先にこそ、神の祝福が存在する。我々はそれを知っている ――
何を偉そうに。
我々よりも歴史の浅い種族がよくほざく。
―― どうせ祈るなら双神などというものではなく、我らの神に祈るといい ――
「お前の神、ねぇ。一応聞くが、その名は?」
―― 当然、ロゼッタ神様だ ――
神じゃないだろう。だが、そうだな。一回くらいは祈ってみるか。
なぁロゼッタよ。
私が祈ってやる。お前を神だと祈ってやる。
だから、ルギアスを無事、生還させてくれ――――




