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1890/1986

1875話、リーマス、プライジャコリャ防衛線7

SIDE:リーマス


「あんたぁーっ!?」


「かーちゃーんっ」


 そこかしこで怒号が飛び交っている。

 やはり一般市民では強化兵を殺すところまでは難しいようだ。

 所々で反撃を喰らって吹っ飛ぶ一般市民の姿が見える。


 子供まで木の棒使ってお母さんをイジメるなっと参戦しているのを見ると、絶望感がキツイ。

 ここまで攻め込まれた時点でこうなると分かってたけど、これじゃもうプライジャコリャは……

 他国では魔物の群れが助っ人参戦してくれたりしてるみたいだけど、ココにはまだその気配はい。

 というか、もう今更参戦されても敗北濃厚で……


―― すまない、随分と遅れてしまったらしい ――


 それは、不意に聞こえた見知らぬ声だった。

 次の瞬間、地面を割り砕き、強化兵だけを狙い撃つように木の根が襲い掛かる。

 流血した武器屋のオヤジが殺されかけていたところを助けられて目を丸くしていたり、攻撃した丸太が折れて無防備になった子供に拳を振り上げた強化兵を全身を根に貫かれて身動きを封じられ、各所で市民の危機を木の根が救っていく。


 そして、空から、無数の樹木が降下してくるのが見えた。

 先行するように、その一つから少年と思しき存在が垂直落下で私の前に落ちてくる。

 手加減スキルを覚えているようで、とんっと軽そうな音と共に降りて来たのは、耳長の少年。


「え、エルフ?」


「すいません、ロゼッタお姉さんにお願いされて助っ人に来ました、いつ始まるか教えて貰ってなかったのでちょっと遅れてしまったみたいですが、今から各地で参戦させて貰います。ヴァルトラッセとエルフです。よろしくお願いします!」


「あ、はい……」


 妙に礼儀正しい少年に思わず礼を返す。

 その背後ではヴァルトラッセという名のトレント亜種が魔法を使って強化兵を次々に駆逐し始めていく。

 もはや絶滅を待つだけ、だったはずの一般市民は私たちを中心にして安全地帯が生まれたために集まり始め、それを囲う様にヴァルトラッセたちが、そしてエルフの子供たちがヴァルトラッセの合間から矢を放って強化兵たちを押し返していく。


―― 代表者は居るか? プライジャコリャ方面鎮圧を任された、ザ・ワンという ――


「あ、私が代表のリーマスだ。来てくれてすまないが、すでに国内はめちゃくちゃだ。国という体も成せていなくて戦争中。手厚い出迎えが出来なくて済まない」


―― こちらこそ、遅れてしまいすまない。もっと早く来れていればと悔やんでしまうな ――


 ヴァルトラッセ達の実力はすさまじく、一般市民の安全が確保されると、余ったヴァルトラッセ達が強化兵たちを次々駆逐しながら巨大強化兵たちに突撃していく。

 これは、もしかして勝てるか? ヴァルトラッセ達が居れば一般市民たちもこのまま移動できるから戦線から逃がすことも可能になった。そうすれば戦う兵士たちの背後へのストレスも緩和できるはずだ。


「よし、これからの方針を……」


「伝令! 超巨大型複数到来! 総数、十を超えています……」


 伝令兵がやってきて絶望を告げる。

 せっかく持ち直したはずの戦況は再びマギアクロフトへと傾いた。

 

「嘘だ……」


―― さすがにあの数は、ここに来たヴァルトラッセだけでは難しいか…… ――


 全ての国を守る為にヴァルトラッセ達も分散したらしい。

 それが今回は悪手に繋がったようだ。

 全てのメンバーを投入していれば、或いは一つの戦況を好転まで持っていけたかもしれないが……


「全ての国で、押されている……ライオネルですら、国内まで侵略されてるのか。はは、無謀、だったのかな?」


―― そんなはずはない ――


 そうかな?

 私たちは必死に抗った。

 自分たちの故郷を守りたいから。救いたいから。

 なのに、敵の力が強すぎて、長い戦況に疲れ果てて、押し込められて、国が蹂躙されて。

 もう、無理だって諦めそうになるのを必死に気力で繋ぎとめて。

 その結果が、アレか。


 敵はまだ戦力を出してこれる。

 こちらはもう手一杯。

 後はもう物量差に押されて消し潰されるだけ。


「こんなのって、ないよ……」


 初めから、侵略されるしか道はなかったっていうのか?

 抗うこと自体が間違いだったのか?

 教えてよ。誰か。

 私たちは、何かを間違えたのか?

 このまま抗い続けて未来はあるのか?


 作り上げて来た都市は瓦礫と化して、倒れた仲間と血だらけの友。

 子供は泣き叫び、大人は力なく項垂れて。

 もう、限界だった。

 これ以上は、無理だった。


「もう、先はないんだろうか……」


―― それで、いいのか? ――


 良い訳がない。

 でも、しょうがないじゃないか。

 私たちは抗った。もう十分だろう?


―― 本当に? ――


 兵士が戦った。冒険者が戦った、闇組織だって戦った。

 双神教信者だって、他国では魔物だって、魔族だって。

 皆、皆大切なモノを守りたくて抗った。

 でも、結果がこれなんだ。

 助けてくれよ。誰でもいいから。

 もう、無理だよ。こんな状況で覆ることなんてもう――――

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