1871話、フェイル、ライオネル防衛線6
SIDE:フェイル
戦場は新たな局面へと入った。
正直、ここまで一方的になるとは想定していなかった。
できれば膠着、そう思っていたのだが、予想以上に巨大型以上の強化兵が多い。
そのため戦えているライオネル兵や、英雄的働きをしてくれているメンバーが沢山いるはずなのに、すでにライオネル王城近くまで強化兵が押し寄せていた。
特に中型が不味い。
小型は多少レベルが低くとも、100以上あればチーム戦で何とかなる。
しかし中型強化兵のレベルは弱くて1000。強い者なら9999レベルの強化兵となる。
当然、そのレベル帯の強化兵だとカンストレベルの誰かが当たらなければ被害が出る。
しかし、そのカンストレベルが軒並み大型以上に取られてしまい、まるまる中型強化兵の相手がいなくなってしまっているのだ。
これはマズい。
しかし人員が足らない。
これだけ用意して、お嬢が必死に駆けずり回って手に入れたメンバーを用いて、まだ足らないのか。
終わりなく訪れる強化兵たちに、次々と倒れていく兵士たちが見える。
何とか今は回収して傷病施設に送れているが、後どれだけそんな行動ができるだろうか?
いや、その場で霊薬をぶっかければすぐ復帰できるのだ。
だが、どれだけ時間がかかるかわからないこの戦場、霊薬も数に限りがある。
湯水のごとく使う訳にもいかず、この人数ががばがばと使えばいくらあっても枯渇するだろう。
現に地下倉庫の一つは既に空になっている。
それに、連続使用すると効かなくなることもすでに証明されている。
別の国の話だが、ライオネル兵の一部が復活できなくなってしまったらしい。
一人抜けるだけでもかなりの穴になってしまうため、皆戦々恐々、霊薬を使っている。
超巨大強化兵を相手にすると、一撃一撃に回復しなければならないため、100回以上の使用などすぐに超えてしまう。そうなればもう回復も出来なくなる。
「きついな……」
『限界か?』
不意に、隣に気配。
振り向けば、そこにはヤマダ王が出現していた。
「何かありましたか?」
『そろそろ中型に取り付かれる。ロゼッタ嬢が事前に仕込んでいたトラップを発動させるぞ。町中にいる人物を全て外に出すかダンジョンに入れてくれ』
「お嬢が、事前に?」
まさか、お嬢は事前にここまで追い込まれると予測していたのだろうか?
「了解しました。全軍聞いたな。ライオネル城下町に居る者は全て外に出よ。城内倉庫からの搬送は一時中断だ」
『それについてはこちらでなんとかしよう。退避完了か、中型が取り付いた時点で城下町トラップを開始する』
お嬢のトラップか……人員を退避させるくらいだ、おそらく極悪仕様だろうな。
「む、退避完了のようです」
元々城の倉庫などから必要資材を運搬するメンバーしか城下町に存在していなかったので彼らが退避すれば即座に完了だ。
『待て。まだ町壁の上にいるぞ』
「弓兵たちもですか?」
念話で彼らにも退避を告げる。
仕方なく飛び降りながら飛行型の撃破を行い、地面からの射撃に切り替える弓兵と魔法兵。
その一瞬のスキを突いた飛行型が一体、ライオネルの町中へと降り立った。
次の瞬間、地面から飛び出した巨大な矢が彼を串刺しにしながら空の彼方へと吹っ飛ばす。
「なん?」
放物線を描いたそれは、巨大強化兵へと飛んでいき、諸共串刺しにして地面に突き刺さった。
「いやいや!?」
さらに町壁に取り付いた中型強化兵に壁からびっくり箱のように飛び出すスプリング付きのボクサーグローブ。
ものすごい衝撃だったようで周囲の小型強化兵を巻き込んで地面すれすれを滑空していく。
「極悪過ぎる!? 全軍二次被害に留意せよ! 巻き込まれで死んでくれるなよ! あと町中への守護は気にしなくていい、存分に暴れまわれ!!」
守る為の戦いは、確かに気合が入る。しかし、存分に暴れまわる方が敵の駆逐には役立つ時もある。
守備に重きを置いていた面々が攻勢に出始め、かなりの小型強化兵が町壁へと殺到するが、町壁自体の迎撃トラップにより次々に吹き飛ばされていく。
まるで町が意志を持って強化兵たちを迎撃しているかのようだ。
さすがお嬢というべきか。
ライオネルの町にここまでえげつないトラップの数々を設置しているとは……
普通の生活の時に発動したらどうするつもりなんですか。人死にでますよ、絶対。
しかし、城下町迄ついに辿り着かれてしまった。
一般人はダンジョン内に退避させているから被害はないだろうが……
守るべき国が蹂躙されていくのは、心にくるものがある。
辛い。壊されていくのを見るのが、だが。ここで大型以上を食い止めなければ、もっとひどいことになる。
そうなる前に、マギアクロフト兵を駆逐できればいいのだが……




