1870話、コーネリア、ナゲキノカルマ防衛線6
SIDE:コーネリア
戦線が崩壊した。
これだけの人員が居て、人間も魔族も一緒くたに協力しあって、なお、物量差で負けた。
大型兵以上はまだ持っている。
でも、や。中型小型の強化兵を相手にしとった兵士や冒険者が崩れ、レッドラインで踏ん張っていた闇組織の下っ端たちもまた、突破された。
手一杯に戦ったうえで、物量差に押されたんや。
まだまだ普通に戦えるが戦うための対応力が追い付かんかった。
皆、目の前の敵は戦えているが手の届く範囲を零れた奴が町へと殺到してしまったんや。
それだけなら、まだよかった。
超巨大兵の一体が突如雄叫び上げてナゲキノカルマへと向かいだしたのだ。
ウチ等の攻撃で体をいくら傷つけられようと、腕を捥ごうが足を斬ろうが頭を潰そうが、気にせず一直線に向かって行った。
超巨大強化兵がターゲットを決めて移動を開始してしまうとウチ等の攻撃では致命傷を与え切れへん。よって、必然的にナゲキノカルマが崩壊した。
守るべき場所が粉砕される光景に、一部の兵士たちが周囲の強化兵そっちのけて呆然と見つめている。
自分たちの故郷が、大切な守るべき者たちが、瞬く間に蹂躙されていく。
戦争開始の当初、ライオネル兵が必死に告げていた最悪の光景が、彼らの目の前で起こってしまったのだ。
それでも、ライオネル兵も冒険者も諦めてはいない。
必死に超巨大強化兵に追いつき、凶行を止めるべくダメージを与えていく。
総大将が泣きそうな顔で指示を飛ばしているのを見ると、守るべきものが守れなかった彼の心境がよう分かるわ。
―― 全軍に通達します。ナゲキノカルマ女王リズリンドです。残念ながらナゲキノカルマ国は現時点を持って消滅しました。祖国がなくなったことはとても悲しいことですが、もともとナゲキノカルマは滅びる一歩手前のまま数十年を生きていました。ゆえに、荒野であろうとも人が居ればまた、国を興せます。貴方たちが守るべき国民たちは、大切な人たちは、ロゼッタ神様が送ってくださったダンジョン内部に身を潜めています。ダンジョンの入り口は閉じ、地中深くに潜っていただきました。お願いします。彼らの為に、もうこれ以上私たちが失わないために。マギアクロフトの侵略者を駆逐してください……私と共に! ――
うん? あ、あ――――っ!!?
リズリンド戦場に出てきとる!?
ってか何そのメイド服! 手にした旗、メイドのマーク付いとるやん、めっちゃリズリンドの象徴っぽい!
「ナゲキノカルマは滅びました! しかし、その志はここにあります! 女王は未だここに! 嘆きの地にて旗を振ります! 皆様にご奉仕を、不要な侵略者にはお帰りを! リズリンド、出ます!!」
城があった場所にメイドの旗を思いきり突き刺すと、スカートの奥から一対の剣を取り出したリズリンド。蛇腹の双剣を振るい、超巨大強化兵へと襲い掛かる。
え、めっちゃ強!? 一瞬で超巨大強化兵寸断したんやけど!?
くぁー、負けてられんよこれは! 魔族代表としてウチの目の前にいる巨大強化兵ぶっ倒さねば!!
守るべき国がなくなったことで、皆背を気にせず戦い始める。
なんや、守るもんがない方が皆生き生きしとらん?
―― なんで? ――
ああん?
なんや雑音が聞こえる?
―― なんで絶望しないのよ! 国が滅びたのよ! もう終わりでしょうが! 来るな! 来るなリズリンドォ!! ――
んー。これ、もしかして、あの超巨大強化兵か?
なんやアレ、意志持っとるんかいな?
―― どうしてよ! もう終わりでしょ、私と共に絶望しろよ! 終われよ! なんでいつも私だけッ ――
ふむ。ちょいと面倒そうだなぁ。頭われそうなほどでっかい声みたいなのが強制的に垂れ流されてる感じや。
頭が痛くなるくらい爆音の音声、なんとかしてくれへんやろか?
「あり得るとは思ってました。マギアクロフトの強化兵だけにしては数が多すぎるし、巨大強化兵以上の実力持ちがそんなにいるのだろうか、って。恭順した国の国民全部、殺したんですねマギアクロフトは!」
―― 死んでないっ、私はまだ、死んでないっ!! ――
「黄泉路に彷徨うお嬢様。引導を渡させていただきます!」
蛇腹剣が伸び、超巨大強化兵の体を次々と寸断していく。
―― 痛い痛い痛いっ、止めろリズリンド! 殺す、殺してや ――
そして、超巨大強化兵の胴を寸断し始めた時だった。
突如その動きを止める超巨大強化兵。
体から再生能力が失われ、細切れにされた肉片が落下中に砂のように崩れ去っていく。
「コア、打ち抜いたんか!」
「は、はい、そうみたいで……そっか、コアを打ち抜けば巨大強化兵もすぐ倒せる……」
「で、伝令! 巨大強化兵多数増援! ちょ、超巨体型が、六体!?」
せっかく一体倒せたというのに、追加で六体は酷くない!?




