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1876/1986

1861話、リズリンド、ナゲキノカルマ防衛線5

SIDE:リズリンド


 さて、魔族の人たちには町中の人民を避難誘導する仕事をお願いしたけど、さすがにそろそろ不味いんだよね。国が蹂躙されるのは確定事項になりそうだ。

 何より、これだけの人材が戦ってくれてるのに戦況が一切好転しない。

 マギアクロフト強化兵の姿が次々に現れているのが見える。

 まだまだ増援部隊が止まらないようだ。


 ロゼッタ神様、大丈夫、なのですよね?

 人類は、まだ生き残れるのですよね?

 最悪、国が崩壊するのは覚悟しました。


 もともとこのナゲキノカルマは更地で生活していたようなもの。

 王侯貴族も質素と言える生活でしたし、いえ、他国と比べると、ですよ。

 人民から搾取していたのは搾取してましたから質素とは言えないかもしれませんが。

 それでも、煌びやかな生活とは雲泥の差で、下水施設が出来てようやく生活が向上してきたと感じられた矢先がこの戦争です。


 だから、皆国に未練などありません。

 荒野で暮らせと言えば暮らしましょう。

 何もない場所からまた築き上げればいいのですから。


 でも、人は違う。

 人材は失えばもう立て直せません。

 私だけが、兵士だけが生き残っても意味がないのです。


「さて、では私の仕事をしないとですね」


 正直いえば、私はただのメイドです。お城をお掃除するだけの存在です。

 最悪王族の御守りをする存在でもあります。

 だけど。国王を兼任するような存在ではないはずなのです。


 私は町門から降りて、魔族の人たちと共に国民の避難所になっている場所へとやって来る。

 魔族との激戦のおりに作られた防濠施設。

 ロゼッタ神様からもしもの場合に使いなさい。と手渡されたダンジョン核を使って作り上げた、人を格納するためだけのダンジョン施設。

 これが、この国の最後の砦。


「失礼、状況に変化がありましたダンジョン核さん」


 ダンジョン入り口で声をかけると、ダンジョンの壁からでろんっとスライムが一匹産み落とされる。


―― そうか。状況を聞こう。さすがにここにいたのではある程度しかわからんのでな ――


 一応他の避難民同様周囲の状況は把握してると聞いていたのだけど。

 まぁいいでしょう。わざわざライオネルのダンジョンからお越しいただいたのだし。


「ではメイズ様、我がナゲキノカルマはまもなく崩壊いたします」


―― そうか崩壊……崩壊? え、負けたのか? ――


「現状は膠着状態ですが、すでにこちらの戦力がありません。我が国の全戦力、そして魔族、周辺国の全戦力をもってしても相手の戦力を留めるのがやっと、物見の兵からはマギアクロフトの侵攻軍は未だ増援が途切れないとか。物量差によりまもなく国が亡ぶでしょう。その時おそらく、一瞬です」


―― そうか。で、どうしろと? ――


 このダンジョン核は頭が良いらしい。下手に状況説明しなくともある程度の情報を手に入れれば自分で考えて状況を把握する。

 そして、今回の状況が分かったことで情報収集よりも我が国の指針に重きを置いたようだ。


「ナゲキノカルマ国は蹂躙されるままで構いません。どうせ張りぼて王国ですから。ただ人材の安全だけは確保していただきたい。言うなれば、ダンジョンへの入り口を閉じ、地下へ潜っていただきたい」


―― なるほど、ダンジョン自体を隠すことで国民の安全を確保するか。しかし、それでは戦場の者たちが死滅するつもりだと聞こえるが ――


「死にたくはありませんが。現状守りながら戦うには国は大きすぎるのです。守るものがあるのは必要ですが、守るものが大きすぎれば身動きが取れません。守るに邪魔なものはさっさと破壊してしまいましょう。ですから、国民を、よろしくお願いします」


 ふかぶかと頭を下げる私に、メイズ様は一国の王が軽々しく頭を下げるな、と窘めてくる。

 そもそも私メイドですから。むしろ頭を下げるのが本来の仕事なのです。


―― ああ。そうだった。逃げた国民の中から冒険者以外にも戦いたいという者がいるが、どうする? ――


 ええ、この状況でまだ戦える人材が?


―― アルケーニスナゲキノカルマ支部を筆頭に、闇組織のメンツが十社ほどだな。自分の商売が立ちいかなくなるのが許せんらしい。マギアクロフトに自分たちも落とし前付けさせろといっている ――


 あー、闇組織の人まだいたんだ。

 でも、そっかそっか。それじゃあお願いしちゃおうかな。

 人手はあるに越したことはないし、兵士も冒険者も魔族も犯罪者も、皆力を合わせて国を守ってくれるっていうのなら。お願いしよう。


 許可を出すと、ダンジョンの奥から厳つい男たちが現れる。

 歩き方に規則性はなく、どこか気だるげな、それでいて威圧する歩法でやってきた。


「おう、こりゃまた可愛らしいお嬢ちゃんじゃねぇか」


「おい、他国のクソ野郎。それが俺らの女王だぜ。あんま遊んでやんなよ」


「は? このちんちくりんがか? かー、終わってんなナゲキノカルマ」


「ま、せっかく大暴れ出来る場所が提示されたんだ。ボスのためにも盛大に遊んで来るぜ」


「嬢ちゃん見てな。化け物共駆逐してやっから今度おいちゃんの上で踊ってくれや」


「だから女王誘ってんじゃねぇよクソジジイ」


「ンだゴルァ。全身の皮向いて晒すぞワレェ」


 口が悪すぎる……

 彼らにとってはあいさつ代わりの言葉の応酬なのだろう。

 町門向けて去っていく社会のはみ出し者たちを見送って、私ははぁぁっと息を吐くのだった。

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