1645話、テテ、質問いいですか
SIDE:テテ
正直、シュクネお姉さんが脱落するとは思ってなかった。
かなりショックだったけど、それでも涙を流すことなく前を見る。
きっと、覚悟が決まってない場合であれば、一緒にやめていたかもしれない。
でも、すでに見つけたんだ。守りたいモノ。
だから、シュクネお姉さんと一緒じゃないのは悲しいけれど、それがシュクネお姉さんの歩む道なのだから、見送る。いつかどこかでまた見かけるだろう。その時、笑って挨拶できるように……
あれ? だったら、シュクネお姉さんも守ってあげるなんて、言っちゃっていいのかな?
でも孤児院とシュクネお姉さん両方守りたいなんておこがましいかな?
欲張り過ぎかも? これっていいのかな?
疑問に思ったものの、訓練が始まってしまったのでそちらに集中する。
最初はストレッチから周回疾走。今までと違うのはジョギングとかで問題なかった周回が完全に持久走になってしまったことだろうか。
いきなり三周に増えちゃったせいでレベリングしてなかった人たちが次々にへばっていく。
「おいおい、随分とだらしないな。大丈夫かおっさん?」
「よ、ようやく一周できるようになって一週間も経ってないんだ。三周はさすがに……」
レベリング組はまだ余裕だけど最終的に走り切れたのは若いメンバーとおじさん三人ほど。
おじさん三人は前から鍛えてたおかげでなんとか走れたようだ。
「まぁレベリングしてないならこれくらいか。少し休憩しよう。息を整えるといい」
私兵団の人は随分と偉そうだ。
部隊長か何かだろう、だから偉いんだ。
でも、基本何かをする前にロゼッタ様にこんな感じにして問題ないですか? と小声で聞いている様子。つまりはこの急激な訓練レベルのアップはロゼッタ様監修済みという奴である。
「つ、疲れた……二周増えただけでキツい」
孤児院の少年が私の隣にやってきて座り込む。
おつかれー。他の二人も少し遅れて完走。意外とやるなぁ。
「よし、休憩終わり」
「はぁ!?」
「次、型の訓練。総員配置に付け!」
休憩時間が短い! 皆が思わず告げそうになるが、相手が軍人なので言うだけ無駄だと気付いたようだ。疲れた体に鞭打って配置に着く。
凄いなぁ。ちゃんと皆配置に着けるって。訓練の初期だとしばらく配置に着くまで時間かかったもんね。
どうやら型取り訓練に関してはロゼッタ様のやってたこととそこまで変わらないようだ。
拳を打つだけの行為だったのが右左右、と連撃になったくらいだろうか? うわ、さらに蹴りまで入った。
えぇ、蹴り方まで気を付けないとダメなの?
言われたとおりに何度かやっていると、蹴りの威力というか、何かが変わった。
先ほどまでより鋭い蹴りになったというか、これが正しい蹴り方?
お、おおぅ、今度は回し蹴り!? ど、どんどんやること増えてくぅ!?
「型取り止め! 休憩を10分」
10分だ。ロゼッタ様もよく言うけど10分の分ってなんだろう?
大体同じ時間帯の休憩なのはわかるんだ。でも分ってなぁに?
「休憩止め! 三人組を組め!」
いきなり三人組?
あ、男子三人が普通に組んじゃった。
えーっと私は……お爺さんとお婆さんいいですか?
「あらあら、いいですよ」
「ふぉっふぉ。てぬぐいさんじゃったかの。よろしくのー」
あ。このお爺さんとお婆さん、痴呆症だったお爺さんとそれを支えてたお婆さんだ。
せっかくなので疑問だった質問を投げかけてみたんだけど。お爺さんたちもわからないらしい。
困った。これはもうロゼッタ様に聞くしかないらしい。
って、えぇぇ!? この三人で戦うの!?
ど、どうしよう、お爺さんやお婆さんに攻撃ってさすがに……
「きえぇぇぇい!」
きゃあぁ!? お爺さん容赦ない!?
「来ないならこちらから行きますよお爺さん」
「なっ!? こっちに来るでない、儂無防備じゃろぉー!?」
何とかお爺さんの鳥さんみたいな恰好から繰り出された蹴りを受け止める。
するとお爺さんの側面からお爺さんに膝蹴り放ったお婆さんの一撃がみぞおちに直撃。
「ほぐぉ!?」
痛そう。お爺さん撃沈である。
「ははは、どうだ皆。三人での組手だ。下手に打ち込めば空いた一人から反撃される。共闘されれば二対一。裏切られたら無防備な場所を攻撃される。戦闘経験値を積むには持ってこいだろ。これもお嬢が考えた訓練法だ」
ひえぇ、メンバー同士で戦い合うの!?
で、できるかなぁ。やらないとダメなんだろうけど、顔見知りの人を攻撃するのはちょっとためらっちゃうよ。
それからも訓練は続いて昼休憩。
皆が食堂に向かうのを尻目に、私はロゼッタ様に質問を投げかけるのだった。
教えてくれるかな。ちょっと複数の疑問だから迷惑がられるかもしれないけど。




