1643話、テテ、不思議な納得
SIDE:テテ
孤児院の運営に携わって数日。
まもなく一週間が経過するため騎士団の訓練が本格的なモノになるらしい。
そのため、ここで騎士団になるのを辞めて別の道に向かうか、それとも気持ちを新たに騎士団の訓練を受けるか。自分で決断しなければならない。
私も身の振り方決めないといけないんだけど、ロゼッタ様、惰性で騎士団に居続けるのは推奨しないって言ってたんだよね。少なくとも、守りたい何かを見つけておきなさいって。
でも、お母さんを守りたかった私はには、もう守るモノも、守りたいものも……
「怪力女、ちょっと手伝え!」
「え?」
最近は孤児院で寝泊まりしてるからか、孤児の男の子がしきりに私に構ってくるようになった。
迷惑なくらい構ってくるけど、なんだかんだ心配されてるようで、他の子ともども私が夜中泣いてないかとか見てくれてるみたい。
今回も、一人寂しくならないようにって皆に交じって仕事を紹介してくれているようだ。
というか、そんなでっかい石女の子に運ばせないでくれないかな?
まぁレベリングしてるから普通に運べるけど。
「よっと、これどこにもってくの?」
庭に出た私は子供たちがコレ引っこ抜いて、と言ってきた石を片手で持ち上げる。
「すっげー!?」
「おねーちゃん力持ち!」
「わー、すごーい」
「ほら、やっぱ怪力女じゃん」
「テテさん。そちらはあの辺りにお願いします」
シスターさんが若干引いた顔で告げる。
私だけがこんな力強いわけじゃないですよ。
「あの、シスターさん、これレベリングの効果なので、そのうち騎士団に所属してる子もこれくらいできるようになっちゃいますよ」
「えぇ、ほんとうですか……」
「ほんとだぜせんせー。俺も見てたけどじいちゃんばっちゃんがめっちゃ強く成ってたし!」
石を目的地に設置して戻ってくる。
どうやら新しく空地を開拓して畑を作っているらしい。
一応管理者なので私が手伝う必要はないんだけど、今日は騎士団の訓練無いらしくて暇だし、ちょっと手伝おう。
ロゼッタ様曰く、騎士団は週休二日制にするんだよ。ホワイトな職場だから必ず全員一週間に二日は休むこと。
とのことである。
とはいえ休み貰ってもやれることがないんだよね。おかげで孤児院で一番暇してる私だったりする。
「よーし、耕すぞー!」
「鍬持ってきたよー」
「男子がんばれー!」
「お前らもやれよ!?」
「「あはははは」」
孤児院、かぁ。
子供たちが自主的にいろいろなことをして、大人はそれを見守ったり、たまに助言したり、子供たちが健やかに育っていくのを見守るのがここのシスターさんたちの仕事らしい。
他にも金策走ったり、食材を買ったり、交渉したりが大人の仕事。
院長さんの話だとたまに体を要求されることもあるらしいけど、今までは私兵団がなんとかしてくれていたらしい。
その前は私兵団自体が堕落していたので孤児院を運営する、前のシスターたちは地獄のような日々だったそうだけど。それでも、孤児院や、私兵団やらが変わっていったことでシスターさんも総入れ替えされたそうで、院長さんが汚れ仕事無しで運営を切り盛りしていたのがここ数年。一応双神教からの出向という形でシスターさんが入れ替わりするそうだ。
それも私が引き継ぐことで院長さんは孤児たちと接する一人のシスターさんとなったのである。
んー……
あ。そうか。
楽しそうに畑を作る子供たち。それを見守る大人たち。
そんな姿を見ていると、何となく、理解した。
私、この光景を守りたい。
なんとなくだけど、そう思った。
思って、気付いて、理解した。
きっとこれが、ロゼッタ様が言っていた、自分が守りたい、何かなんだろう。
お母さんだけじゃない。守りたいものは自分で決めていい。
大切だと思ったものを守る。そのために、戦う術を身に着ける。
そっか。それで、いいのか。
なんか、気付いたら単純なんだなぁ、守りたいものって。
「おーい、怪力女、お前も手伝えよっ」
「だから怪力じゃないってば!」
子供たちが私を誘う。
酷いあだ名だけど、彼らはそこまでの気持ちはないのだ。
ただ事実を告げてるだけ。彼らから見れば、私は怪力なんだろう。
だから私を奇異な目で見ることなく、子供たちが一緒に作業しようと誘ってくる。
子供たちに交じって畑を作る。
時に笑って時に泣いて。
支え合って生きていく。
それで、いいんだ。あの家族が全てじゃない。私には私の生活があって、守りたいものも変わっていく。それでも……
私の手が届く範囲なら、全力で守ろう。
鍬を振り下ろし、地面を爆散させて皆まとめて土塗れ。
一瞬びっくりした子供たちは、近くの子の姿を見て笑い合う。
私、決めたよ。
孤児院の子たちを、この笑顔を守る。
私を受け入れてくれた人たちを守っていこう。
だから、騎士団……続けますっ!




