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1623話、とある少女、諦めていた可能性

SIDE:テテ


「ほーあちゃぁ!」


 跳躍したお爺さんの回し蹴りがミノタウロスの首をゴキリと圧し折る。

 駆け抜ける風となったお婆さんがミノタウロスの足を折る。

 跳びかかるジジババたちが次々とミノタウロスたちを駆逐していく。

 なんだろう、これ?


 絶対に勝てる見込みなんてなかったはずのミノタウロス。

 それを骨と皮だけになったお爺ちゃんお婆ちゃんが倒していく。

 私も彼らに動きを教わって、言われるままに拳を突き出したらミノタウロスを一人で倒せちゃった。


「ふぉっふぉっふぉ! 若返った気がするわい!」


「お爺さんったら、もう年なんですからミノタウロスに回し蹴りなんてなさらないでくださいな」


「お前だって拳で足の骨粉砕しとるじゃないか」


 二人してなぜか笑い合うお爺さんとお婆さん。

 少し前まで梅昆布茶がどうこう言っていた痴呆症のお爺さんはもういない。

 あの霊薬とかいうの飲んだ瞬間から意識はっきりで歴戦のお爺ちゃんに早変わりしてしまった。


「うんうん。さすが年の功なんだよ。元冒険者だから判断力や殲滅力が高いなぁ」


「あ、あのー、ロゼッタ様?」


 はっちゃけるお爺さんお婆さんの群れを遠巻きに眺めるロゼッタ様に、私は声をかける。

 相手はお貴族様だからちょっと声をかけるのに不安もあるけど、ロゼッタ様が別段気にした様子もなく、平民からの質問に小首をかしげる。


「何でしょう?」


「わ、私たちその、こんなに強くして良かったんですか? それに、これだったら大人の人達もレベルアップさせた方がいいんじゃ?」


「あー、それは確かにそうなんだけどね。人間って力を手に入れると驕っちゃうんだよね。だから彼らはまず実力が上がっても驕らないための精神性の取得から。お爺さんお婆さんたちはもともと実力はあったけど体力がないから引退した冒険者とかだからね。精神性よりも実力強化を優先したんだよ」


 つまり、大人の人たちも後でこのレベリングを行う予定なのだとか。

 そっか。最終的には皆同じように強くなるんだ。

 それはつまり、今は私たちが彼らよりも強くなったけど、すぐに追い抜かれてしまうことになる、ということだ。そうなりたくなければ、強くなれ。

 そのための実力は今、身に着いたのだから。


「その実力があれば訓練も問題なくこなせるでしょ?」


「あ。確かに!」


「この後皆で手加減の訓練するけど、それが終ったら皆と一緒の訓練をして貰うわ。そこで彼らと同じ技量を身に着けて強く在れるかは、君次第。お爺さんお婆さんは技術も持ってるから、良かったら彼らからいろいろ教えてもらいなさい」


「は、はい!」


 お母さんを守るためだけの力があればいいんだけどなぁ。

 なんか過剰な力を貰ってしまった気がする。

 これで止めます、なんてさすがに言えないよ。ロゼッタ様の期待に応えたいし、頑張ってみよう。ミノタウロスくらいなら倒せるようになっちゃったし。


「おーい嬢ちゃん、嬢ちゃんもトメゾウ狩りに参加せんかー」


「もう、お爺さんそれトメゾウさんじゃありませんよ」


「ほら、呼ばれてるよ?」


「……はい、行ってきます!」


 よし、頑張ろう。お爺さんとお婆さんにもいろいろ教えて貰おう。

 私強くなるよお母さん。お母さんの病気も治して、ミノタウロスが大挙して来たってお母さんを守れるくらい強くなるんだ!


 ……

 …………

 ……………………


 と、思ったんだけど……なんだこれ?


「ぬほぉぉぉ。卵が、卵が割れるんじゃあぁ!?」


「あらあら、こんな簡単な事が出来なくなるなんて」


「ほじゃぁ!?」


 あー、お爺さんの一人が苛ついて額で割っちゃった!? なんで?


「そーっと、そーっと……」


 グシャ


「あーっ!?」


「ここまでがセットだからね。皆手加減覚えないと日常過ごせないから頑張って!」


 凄い数の卵がどんどん潰されていく。

 卵さんごめんなさいっ。必ずおいしく食べるからぁ。

 あああ、また潰れたァ!?


「これが一番つらいのぅ」


「お爺さんと一緒に料理してるみたいで私は楽しいですよ?」


「そうか? ふむ、帰ったら何か一緒に作るかのぅ?」


「ふふ、じゃあお爺さんの大好きな肉じゃがにしましょうか」


「お前の肉じゃがは絶品じゃからなぁ。楽しみになって来たわい」


 お爺さんとお婆さんは相変わらず仲良しだ。お爺さんのボケも治ったからなんだかほっこりしてる気がする。

 ただ、お爺さんが楽しみになって来た、と一言呟いた時、お婆さんの目から涙が溢れた。


「ど、どうした?」


「い、いえお気になさらないで。ただ、こんな日がまた来るって思ってなかったから」


 それはきっと、お爺さんがボケてしまったから。

 お婆さんの手料理を食べても、きっと食べてないとか、なぜ用意してないのか、とか言ってたんだ。

 だから、まともな会話ができることを諦めて、それでも愛する夫の為に最後まで尽くそうとお婆さんはお爺さんと共に居た。

 それが、こうしてまた話ができるようになって、隣り合って料理が出来て、いいなぁ、こういう家庭、私も持ちたい。相手いないけど。

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