インテリジェンスロッドと双子の出会い6
透がつぶやいた後、辺りは静寂に包まれていた。
ナーリャとリューナは、光が収まったのを確認しゆっくりと目を開ける。
「今誰かの声が聞こえなかった?」
「ええ、男性の声が聞こえたような気がしたのですが」
そう言って二人は辺りを確認する。しかし誰かがこの店に入ってきた様子はもちろん無く、ここに居るのは二人だけである。
だが確認した直後、また声が聞こえてきた。
「まったく、ホントなんなんだよ。マスター認証とか知識の泉とか」
それは透の声だった。
その声を知る由も無い二人は、聞こえてきた声に驚きの声を上げる、そして再度周囲を確認した後、床に転がっている杖を見下ろした。
「…確認なんだけど、この杖から声が聞こえなかった?」
「…私にもそのように聞こえました」
その会話を聞いて今度は透が驚く。自分の声が届いているかのようだ。
「おい、俺の声が聞こえるのか?返事してくれ!」
その声にやはり杖からかと思い、恐る恐るといった感じでナーシャは杖へ話しかけた。
「えっと、杖さんですか?今話しをしているのは?」
それを聞いた透は舞い上がった。気分的なものだけでなく、物理的にも杖は宙に浮かびあがってきた。
「おう、聞こえるんだな?いやー、良かった。ようやく会話が出来る」
なんか話しながらうねうねと柄をねじりながら宙に浮く杖を見た二人は、ポカンと口をあけて驚いていた。
「…ナーリャさん、この杖は一体どうなされたのですか?」
「えっと…今朝雑貨屋のダルおじいさんのところで買ってきたばかりなんだけど…」
困惑しながらもそう答えるナーシャを横目に、透は約一週間ぶりに会話が出来そうだと喜びながら話し始める。
「おっと、驚かせたようですまない。なにせ今まで誰に話しかけても聞こえなかったようで、ようやくこうして話ができると思うとテンションがあがっちゃって」
透は全身をくねらせながらそう話す。そして自分が浮いていることに気づきおお!と声を上げている。
そんな透を見て、変な杖だなと思いながらナーリャは透に聞く。
「それで杖さんはどうしてお話出来るようになったのですか?」
「ああ、それなんだがいまいち俺にも良く分からないんだ。さっきマスター認証がどうのとか聞こえたが」
なんなんだろうなマスター認証って、と透は考えを巡らせる。すると突然頭の中にその意味が流れ込んできた。
…マスター認証:知識の杖の所有者を認定すること。この世界に属する全8属性を保有するものが対象。一度設定されると以後対象者を失わない限り有効。認証することによりマスターの魔力を媒体に外部への伝達および『知識の泉』が使用可能となる。
それは一瞬のことだった。突然の知識に少し惑うが、透はその意味を考えた。すなわち今目の前に居る二人が知識の杖である自分の所有者に認定されたのだと。
「…ちょっと訂正。君たち二人が俺の所有者として認証されたようだ。あと認証されたことでようやく俺もしゃべることが出来るようになったみたいだな」
聞きながらだんだんと冷静になってきたナーリャとリューナは、床に座っていることに気がつき、立ち上がる。
「えっと、分からないことだらけ何ですが、ちょっと一旦落ち着きません?」
「そうだね。お店の中というものあんまり落ち着かないから、私の家に行かない?」
「おう、そうだな。じゃあそっちで続きを話すか」
そういって二人は店を出る。透はその後をふよふよと浮いて出ようとするが、それに気づいたリューナに慌てて掴かまれ、そのまま隣にあるナーリャの家へと運ばれていった。
ナーリャは鍵を開けて、家の中へ二人?を向かい入れて、リューナをテーブルの前に座らせると、お茶の準備に向かう。リューナは杖をどうするか少し悩んだあと、とりあえずテーブルに立て掛けた。
「じゃあちょっとお茶を用意してくるね」
「ああ、お気遣いなく」
「そんな気遣いいいぞ」
「…あなたはお茶が飲めるのですか?」
そんな会話をよそに、ナーリャは気にしないでー、とお茶をいれて戻ってくる。そのお茶は王都のさらに東にある茶畑で取れた紅茶である。結構な値がするのだが、ナーリャに甘いダルが気前良く分けてくれたものだ。
リューナはお茶を出し終えるとリューナの向かい側へ座る。そうして全員が揃うと改めて透はきりだした。
「さて、それでは続きを始めるか。俺の名前は森宮 透。一応知識の杖だ。宜しくなマスターのお二人さん」
透はそうマスターである二人に告げる。
「モリミャトール?杖に名前ってなんか違和感があるね。それと知識の杖?マスター?」
「まずは一つずつ片付けましょう。えっとモリミャトール?」
なんだか変な発音にちょっと落ち込みながら透は答える。
「…トールと呼んでくれ。それでどこから話そうかね?」
「では初めにマスターとは、からでよいでしょうかナーリャさん?私たち二人に関係ありそうですし」
「うん、それからお願いしたいな」
「ああ、分かった。といってもあまり俺もわかっていることは少ないんだがな。とりあえず君ら二人は俺のマスター、つまり所有者として認証されたみたいだ」
「その所有者と認証されると、どういったことが起こるのですか?」
「さて、とりあえず話せるようになったのはマスターの魔力を媒体にしてってことらしいが、良く分からん」
そういって透、トールは先ほど出来ていたように浮び上がろうとした。そしてトールの意思に従うように浮び上がった。
おお浮かんだ、喜びながら今度は体|(柄)をうねらせる。
リューナはその様子にちょっと引きながらも質問を続ける。
「良く分からんって。ご自身のことでしょうに」
「とは言っても俺も○×△から□●▲■◇をと言われて来ただけでなぁ」
トールの発言に、ん?と首をかしげる二人。そしてその後トールの頭に音声が流れ込む。
…警告。秘匿情報のため一部音声を変更。秘匿情報の流出にご注意願います。
それを聞いたトールは、なんだかなぁとため息を吐く。秘匿情報など聞いていないし、教えては駄目とも聞いてない。知らされていないことがやっぱりあったかとトールは嘆いた。管理者に世界の調和、この二言は秘匿情報に当たるらしい。
「すまないな。一部は話すことが出来ないようだ。話すと今のように、意味のある言葉とは聞こえなくなる」
そういってトールは頭|(水晶部分)を下げる。頭を下げる姿がツボに入ったのか、あははとナーリャは声を上げて笑った。
「失礼ですよ、ナーリャさん」
「ごめんごめん、えっとトール?ごめんなさい」
「ああ、気にしないでくれ。こっちも話せないことがあって申し訳ない」
ナーリャとトールはそう言って謝り合う。傍から見ると人と杖が謝り合う奇妙な光景だ。
「それではトールさんも、まだ分からないことが多いという認識で良いですか?」
「ああ、その通り。分かっているのは同一魔力による全8属性の保持者がマスターとなりえるってことだ」
その言葉を聞き、ナーリャは食いつく様にトールへ顔を出し聞き返す。
「ちょっとまって。いま全8属性っていった?」
トールはその勢いに押されながらも答える。
「あ、ああ。言ったけどそれがどうかしたか?」
「どうかしたかではありません。全属性といえば4属性。つまり火、水、風、土のことです。複合属性もありますが基本全属性といえばこれら4つを示すはずです」




