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うかれる杖とあきれる魔道技師23

 

 朝食を終えたトール達は、早速とばかりに作業に取り掛かった。まずはポンプ一式の搬入である。先ほどの朝食時に話しをした通り、ヴォルフが取りまとめている鉱夫達の手を借りて次々と坑道へと運び入れる。

 トールとナーリャ、リューナは最初の試運転のために冠水が起きている現場までやってきていた。リーノはここの管理者との話しがあると付いてきていないが、護衛としてカルンとイオンも付いてきている。


「それじゃあ始めるか」


 トールの掛け声をきっかけに、2人と1本はポンプの組み立てを開始する。その様子をヴォルフを含めた鉱夫達が、作業内容を覚えるために眺めていた。


「このポンプって奴は下から水を吸い上げて、この排出口から水を吐き出すんだ」


 トールはポンプの組み立てをしながら、作動原理について説明する。鉱夫達も解っているのかいないのか、各自頷いたり首をかしげたりとしている。


「土台のこっち側はどうしよう?」


「少し長いですね。切り落としてしまいましょうか」


 ナーリャとリューナも、それぞれがポンプ設置に向けて作業を行っていた。

 こうして女の子が作業をして、男達がそれを遠めで見ているという、普段の鉱山からは想像も出来ない状況に、鉱夫達は落ち着かない気持ちになっていた。


「な、なぁ? 俺達も手伝える事ないか?」


 そんな中、居た堪れなくなった一人がそう手伝いを申し込んできた。

 それを聞いたナーリャが、嬉しそうな笑顔で答える。


「それじゃあ、手伝ってもらっていいですか?」


 そのナーリャの笑顔に見とれ、手伝いを申し出た男は任せてくれと腕の筋肉を見せアピールする。すると他の男達も、俺が俺がと率先して手伝いを申し出てくる。

 そうして土台からポンプの設置、配管の組み付けまであっという間に終わってしまった。


「なあ、ナーリャって結構……」


「ダナンの技術区に店を構えていますからね。こういった方々の扱いは心得ているんでしょう。まあ本人は無意識でしょうが」


「リューナも同じ顔付きなんだから、真似すればいいんじゃないか?」


「私には無理ですよ。あれはナーリャさんだから出来るんです」


 トールとリューナがこっそりと小声で話をしていると、ナーリャは、ん? とよく分かってない風で首をかしげている。天然である。


「なんでもないよ。それじゃあポンプも組み上がったし、試運転と行くか」


 トールはそこらに溢れている水をくみ上げ、呼び水としてポンプの中に入れる。そしてポンプから出ているレバーを上下に動かし始めた。

 キコキコと音を鳴らし、最初は排出口から出なかった水は、しばらくすると徐々に勢いを増し、大量に水を吐き出すようになった。


「よし、後は配管を伸ばしていって、途中の中継点にまたポンプを組み立てればいいな」


 満足そうにトールは、宝玉部を上下に振り頷く。

 ポンプを作動させるのを見ていた鉱夫たちも、興味深そうにポンプをいじっていた。


「これがポンプって奴か。いい具合じゃねえか」


 何時の間にかポンプで遊ぶ集団に交じっていたヴォルフは、率直な感想をトールいに言った。


「いい感じだろ?」


 それに気をよくして、トールはうねうねと体をうねらせて答える。

 その光景に若干引きながらも、ヴォルフはこの後のことについてトールに尋ねてきた。


「それじゃあ次はどうするんだ?」


「この後は配管を水の排出口に取り付けて、流して水を運ぶ。で、途中にまだポンプを設置してって感じで、外まで水を持っていく」

「わかった。おい、お前ら! 次の作業すんぞ!」


 ヴォルフの掛け声に、へい! と大きな声で鉱夫たちは返事をする。

 トールとヴォルフ、それにナーリャとリューナの指示で、鉱夫たちはどんどんと配管を固定し、中継点には大きな桶を設置して、ポンプと土台を組み上げていく。

 途中足りない部品作りにナーリャとリューナ、それにその護衛にカルンとイオンが現場を離れると、鉱夫たちは目に見えてやる気をなくすが、そこはヴォルフの掛け声で何とか作業を続ける。

 そうして気が付くと、日が落ちきる前に配管は坑道の外まで設置を追え、ポンプによる排水ラインが1本確立した。


「思ったより早く終わったな」


 取り合えずの完成に、鉱夫たちはそれぞれ完成をあげている。


「こんだけの人数でやりゃあな。どうする、試してみるか?」


「そうだな。試してみるか」


 トールは鉱夫達にお願いをして、早速ポンプの試動に取り掛かる。各ポンプにそれぞれ人を配置し、一斉に動作をさせる。

 ポンプによって吸い上げられた水は、配管を通り中継点に設けられている大きな桶へと入り、それをまたポンプが吸い上げる。最終的には水は坑道の外まで運ばれていった。外まで水が運ばれた時、辺りにいた鉱夫達の歓声が響く。


「上手い事いったな」


「ああ。後はラインを増設するだけだな」


 ポンプによる水の排出が上手くいき、坑道の外ではちょっとした騒ぎになっていた。ポンプの事を知らなかった鉱夫も交じり、互いに手を打ち付けあったり、飛び上がったりとしている。

 その騒ぎを聞きつけたのか、ナーリャ達も坑道入り口までやってきていた。


「お疲れ様トール。上手くいったみたいだね」


 ナーリャは手を上げ、トールはそこに柄先を当てる。ハイタッチもどきである。


「上手くいってよかったよ。これでダメだったら、どうしようかと起こってたからなぁ」


 トールは正直ホッとしたと内情を吐露する。頭の中と現実では、得てして差異が生まれるものであると経験していたからである。


「これなら後はポンプを増設していけば、排水は上手くいくでしょう」


 リューナの感想に、トールは宝玉部を縦に振って同意を示す。

 ナーリャとリューナについていたカルンも、面白そうだと坑道の中へ向かおうとしてイオンにとめられている。


「上手くいったみたいですね」


 外の騒ぎを聞きつけたのか、リーノも坑道入り口へとやって来た。

 リーノは順調に排水されている水を見ると、満足そうに頷いた。


「これなら、後何本か設置すればよさそうですね」


「ああ。ナーリャ達のほうは順調か?」


「わたし達のほうも順調だよ。ポンプは追加で5機、配管は今製作中ってとこかな」


 顎に指を当てて思い出しながらナーリャは現在の進捗を話す。


「ただ魔力量を考えると、今日中には流石に厳しいですね。後魔法陣も足りなくなってきていますから、トールさんも後で手伝って下さい」


「了解した。それじゃあ今日のポンプ設置はこれでお終いにして、俺のほうも製作側を手伝いますか」


 トールはヴォルフに一言声を掛け、この場を任せると、ナーリャ達と共に作業部屋となっている建屋の奥の部屋へと向かう。

 そこはダナンから運ばれた金属の塊が並べられており、他にもスライムの粘液が入ったつぼ、魔法陣のための紙とインクなどが置かれている。


「それじゃあ俺は魔法陣を作っていくよ」


「うん、お願い。わたし達は配管の製作だね」


「ええ。何とか今日中に出来るだけ作ってしまいましょう」


 そうして2人と1本は、時間を忘れて物作りに励んでいく。途中リーノが進捗の確認(とナーリャの様子伺い)に訪れた程度で、他にはなんのトラブルも無くポンプ作りは進んでいった。

 トール達の作業を中断させたのは、夜になって夕食の知らせを持ってきたリーノによってだった。


「お腹すいたねぇ」


「そうですね。私も流石にお腹がすきました」


 ずっとポンプ作りの作業をしていたナーリャとリューナは、作業部屋へ戻ると昼食もろくに食べずにずっとポンプ作りに精を出していたとの事である。

 トールは《守護者の巨人》で作業をするため腕を作り出していたが、最近感覚で分かるようになってきた自身の魔力量は、そこまで減った感じはしなかった。


「(攻撃されなければ、《守護者の巨人》もそんなに魔力を必要としないみたいだな)」


 そんな感想をトールが考えていると、屋根だけがある吹き抜けの食事場へと一行はたどり着いた。


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