うかれる杖とあきれる魔道技師14
空を飛んでいたリューナは、トールと一緒に空から降りてくる。
その光景をまるで輝いたような瞳で見上げながら、ナーリャは歓待する。
「おかえり! 空はどうだった?」
「なんと言いますか、すばらしいものでした」
リューナはナーリャの問いかけに素直な感想を述べる。道を往く人々、まるでおもちゃの家のような住宅、はるか遠くまで見通せるその光景について。
「それじゃあ次はわたしだね。行くよ、トール!」
ナーリャはリューナから箒を受け取ると、すぐさまそれに跨る。
魔力を込め、薄く光る魔法陣を見つめながら、ナーリャは空を飛び始める。最初はリューナと同じように低い高度で、そして徐々に高く飛び上がっていく。
トールもそれに追従する形で空高く飛び上がっていく。トールがナーリャに追いつくと、ナーリャは口を開けあたりの景色を眺めていた。
「すごいね、トール」
「ああ、そうだな」
こうして空の景色を一通り楽しんだナーリャは、満足したのかトールと共に下へと降りていく。
「すごいね、リューナちゃん。街があんな小さく見えたよ!」
興奮冷めやらぬといった様子で地面へと降りてきたナーリャは、リューナに感想を述べる。リューナもそれに同意し、互いに感想を述べ合っていた。
そしてトールは、この成果をみてある計画を思いつく。単純な話であるが、空飛ぶゴーレム計画である。
「(まずは先にゴーレムを作らなきゃだな)」
夢は広がると、トールはこの世界に展望を見出していた。
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初めて空飛ぶ箒で空を飛んでからすでに5日経過し、鉱山へと向かう日となった。その間空飛ぶ箒の改良と鉱山へ赴く準備と、2人と1本はせわしなく働いていた。
「これでよしっと。あとはどうすればいいんだっけ?」
「リーノさんによりますと、わざわざ迎えに来ていただけることになっていますね」
「律儀だねぇ」
そうこうしている間に、家にノック音が響く。
「失礼致します。鉱山ギルドからやってきましたリーノです。ご無沙汰しております」
ナーリャが中に招き入れると、リーノはお辞儀をして挨拶をする。
「ナーリャさん、リューナさん。早速で申し訳ないのですが、出発の準備はよろしいですか?」
「大丈夫だよ」
「大丈夫です」
「分かりました。それでは出発しましょう」
2人の同意を得られて、リーノは嬉しそうに案内を始める。とは言っても店の直ぐ傍まで連れてきていた馬車の中へではあるが。
その馬車は街中でよく見られるような、馬に荷車をつないだものとは異なり、人が乗るためのものであった。装飾は所々に施されて入るが、そこまで華美ではなく、一般的なものに押さえられている。
「ではこちらにお乗り下さい」
思いの外丁重な扱いを受け、ナーリャとリューナは困惑する。
「えっと、わたし達普通の荷馬車の後ろで大丈夫なんですけど」
「いけません。御2人は当ギルドの賓客なのです。そのような扱いにしては我らが非難されてしまいます。それにお嬢様方を荷馬車の後ろに乗せるなどとは、とんでもありません」
リーノは若干顔を赤らめつつ、2人に馬車に乗るよう促す。それを聞いた二人は仕方が無いとばかりに、馬車へと乗り込んだ。
2人が乗り込むと、リーノの指示で馬車が動き出す。目的の場所は普段2人と1本が使用していた東ではなく、北にある門の前であった。
門の前にたどり着くと、そこには数台の荷馬車が点在していた。おそらくポンプの材料やらを積み込んだ馬車であろう。
御者とおもしき人々がそれぞれ思いのまま休憩を取っている。そしてその他にも武器を持った者達が複数見受けられる。中にはナーリャと同年代の少女までもがいた。
「結構な大所帯なのですね」
「はい。今回はついでという事で向こうに慰霊もかねて、食料等を送る手はずになっています。そのためここまで時間が経ってしまいました、すみません」
リーノは2人へ謝罪をすると、馬車から一旦降りる。そしてこの集団のまとめ役らしき男性と一言二言話をすると、また馬車の中まで戻ってきた。
「これから出発になります。道中ご不便をおかけしますが、宜しくお願いします」
あれよあれよという間に、一向は門の外へと出発し始めた。御者達が荷馬車を操り、その周りに武器を持った者達が取り囲みながら追従している。
「あの周りにいる武器を持った人たちは、冒険者かなにかか?」
「そうです。今回の護衛のために雇っています。何分北の方は物騒な事が多いですから」
トール達が乗っている馬車の周りにも、それらしき武器を持った人が数名追従している。他の馬車より人数は多い。
しかしトールの質問に対し、リーノはナーリャ達に対するそれとは違い少し素っ気無い態度で答えてた。そのリーノの態度と今までの態度、そしてナーリャとリューナを見る視線を考えるに、トールは成る程なぁと考えていた。ああ、惚れたのかと。
クックックと喉を鳴らすトールを、不気味に思いながらも一向は北門から街を出て街道を進み始めた。
「御2人には向こうに着きましたら、現地を見ていただいてから、ポンプの製造をお願いしたいと思います」
あまりこういった馬車に乗りなれていないのか、ナーリャはそわそわとしていたため、リーノの言葉を聞いてほえ? と返していた。そのナーリャの様子に、リューナはハァとため息をつくと、リーノに答える。
「ええ、まずは現地の様子を確認し、持ってきたポンプの設置と、それに応じた形のポンプを作りたいと思います。配管等色々とあるでしょうから」
実はポンプ自体は少し作ってきてある。鉱山ギルドから今準備できるだけの素材をもらって作っていたのだ。それは空間拡張と重力軽減の魔法陣を用いた、バックの中に入っている。取り出し方はとりあえず上下反転させて落とすといった乱暴なやり方を想定している。
「お願い致します。鉱山はここから馬車で4日ほどで着きます。その間のたびの安全は我々にお任せ下さい」
そう胸を張るリーノ。その様子にナーリャとリューナは微笑ましく見ていた。それはまるで弟を見るような目つきである。
トールはまだまだ前途多難だぞリーの少年、と心の中で呟いていた。
一向は特に何の問題も無く、1日目を終えようとしていた。あたりが薄暗くなり始めると、馬車たちはその歩みを止め野営の準備へと取り掛かる。
トール達も馬車の外に出て準備を始める。とその時2人の少女達がトール達のほうへとやって来た。
「こんちわっす!」
そのうちの一人の少女は、手に槍を持ちながら元気な声で挨拶をしてきた。赤みがかかった黒い髪を後ろで三つ編みにしている少女である。
良く見るとその少女達は、トール達が乗ってきた馬車の護衛を勤めていた者の様であった。
「こら、だめだよカルンちゃん。すみません無作法で」
もう一人の少女、茶色の髪を肩まで伸ばしている彼女は、赤黒髪三つ編みの少女カルンをたしなめると、トール達に向かって頭を下げた。
「気にしなくていいよ。わたしもお話してみたかったんだ」
ナーリャも同年代の少女が護衛についていたことに気がついていたらしく、声を掛けてきたことを歓迎する。
「そうっすか! お姉さんも話が分かる人っすね!」
同意を得たとばかりに、明るい様子で笑顔でトール達のほうへと歩み寄ってくる。
「それで、えっと……」
「ああ、申し訳ないっす。あたいの名はカルン。こっちのがイオンっす」
「何度もすみません、本当に。私はイオンと申します。しがない冒険者をしております」
手を上げ気楽そうに自己紹介をするカルンに、お辞儀をするイオン。トールは赤黒三つ編みがカルンに、茶色のイオンと覚える事にした。
「わたしはナーリャ。でこっちがリューナちゃんで、こちらがリーノ君。それにこの杖がトールだよ」
ナーリャの紹介に、それぞれ頭を下げる。トールは宝玉であるが。
「流石にリーノ君は知ってるっすよ。今回の雇い主っすからね」
「カルンちゃん! すみませんリーノ殿、無作法者で……」
「かまいません。冒険者という方々については知っているつもりです」
少々不機嫌な様であるが、リーノはそう答える。
「それでどうしたの? わたし達とお話したいのでいいかな?」
「それもあるっすけど、その杖にも興味があったすよ」
俺? とトールは首、は無いが宝玉部したをかしげた。




