うかれる杖とあきれる魔道技師3
突然のお偉いさんの来客に、トールが戦々恐々としていると、それを感じ取ったのか、リューナが説明をしてくれる。
「クリシュタール様は、トールさんに興味をもって、こちらまで来られたと言うことです」
首というか宝玉の付け根をかしげながら、トールはクリシュタールの方を見る。
「クリシュ、と呼んでくださいませ、リューナ様。他の方々もそう呼んでください」
「それじゃあクリシュ様、俺に興味があるということだけど?」
「そうなのです。自分の意思で飛び、お話が出来る杖なんてロマンチックでしょ? まるで3神器の御伽噺みたい」
3神器? とまたもトールは首をかしげる。
その様子に、ペルラがトールに向かって説明する。
「3神器というのは良くある御伽噺の事だ。昔々あるところに剣、弓、そして杖があった。これらの武器は所持者に絶大な力を与え、その所持者となった者は英雄になるという」
「そうですわ。その一説には、これらの神器と所有者は意思の疎通が出来ると言われていますの」
そうなのか、とトールはナーリャとリューナに確認する。ナーリャは首を縦に振り、リューナは横に振った。
「わたしが知っているのは、3神器を持った勇者のお話かな? 強大な力を持った神器を操り、時の魔王を撃ち滅ぼすって内容だったけど、意思の疎通が出来るとは聞いたことないや」
「意思の疎通が出来るとは、一般的には知られてませんもの。私も館の書棚にあった古書を見るまで知りませんでしたわ。その本によると、3神器はお互いの所持者と意思の疎通を図り、時にはアドバイスをしながら魔王を撃ち滅ぼしたという事でしたわ」
クリシュは空想に思いをはせているのか、うっとりとした目で両手を組み、空中を見つめながら説明する。そしてその目のままトールの方へと振り返る。
そんな目で見られたトールは、若干引き気味である。
「ですので、そこのトール様に色々とお話を伺いたいんですの。きっと伝承にある神器に違いないのですわ!」
期待を込めた目で見つめられ。トールは再度引き気味になる。
伝承にある神器といわれても、トールには聞き覚えの無い事である。他の人々には言っていない、というより言えないのだが、実際は管理者なる者からこの世界に送られてきたのは、ここ最近である。
「そんな事言われても、俺はそんな昔話に出てきたようなもんじゃないぞ。そんな記憶もないしな」
「それでも、ですわ。もしかしたら記憶もなくなっているのかも知れませんですし、それに何より特別な能力をお持ちだとか。
クリシュのその言葉を聞いて、トールは身構える。本題はこれか、と。
「特別な能力とは?」
「いやですわ。光る巨人を生み出すという能力の事ですわ」
クリシュはまたしても期待を込めた目でトールを見る。その目には特に何かしらを企むといったものは見る事が出来ない。本当にただ単純に興味をもったといっただけのようであった。
トールはそのまなざしをみて、とりあえず《守護者の巨人》の機能を使って反応を確かめることにした。杖全体が光に覆われると、そこから光る腕が伸びてくる。
その光景に、クリシュは驚きと興奮をもってトールの事を褒め称えた。
「すばらしいですわ! ペルラからお話を伺っておりましたが、やっぱり実際に見ると大違いですわ!」
トールが警戒していたのとまったく異なり、ただ純粋に驚きを表しているクリシュ。その様子はまったくもって、何かしらをしようとしているようには見えなかった。
トールが光る腕を突き出すと、それをおっかなびっくりした様子で、クリシュは指でつんつんと突く。
「結構かたいのですね。それにぼんやりと光輝いてとてもきれいですわ」
「こういったものも伝承に書かれているのか?」
ものめずらしそうに光る腕を触っていたクリシュは、トールの問いかけに答える、
「いえ、このような事は書かれていませんでしたわ。私が見つけた古書も、新しい事柄は意思の疎通が出来ていた、という事だけでしたわ」
「そうか。そうするとやっぱり俺は、その神器というやつじゃないな」
クリシュがはてなマークを頭上に浮かべ、トールに聞き返す。
「どうしてですの?」
「もし俺と同じ能力を持っていたとしたら、それが伝わってないのはおかしいと思わないか? こんな珍しく目立つようなものがだ」
クリシュは少し考えると、自分の意見を言う。
「……たしかに、言われてみるとそうですわね。天を裂き、大地に大穴をたがったというのもありましたが、光る巨人を生み出すなんて事は無いですわね」
神器とやらはそんな機能があったのかとトールが驚いていると、クリシュは触っていた光の腕から手を離す。
「それにしてもやっぱり魔道具というものは面白いですわね。こんな腕を作ってしまうものすらあるんですもの。なにか他にも面白いものは御座いませんか?」
「えっと、それでしたらちょっとお待ち下さい」
ナーリャは立ち上がると、工房へと入っていく。しばらくして出てきたナーリャの手には、小さい物が握られていた。以前トールも見た人形のようなゴーレムである。
「これに魔力を入れると、動き出すんですよ」
そういってクリシュの前へとミニゴーレムを差し出す。
受け取ったクリシュは、ミニゴーレムを持ち上げるとこれもまた興味深そうに全体を眺める。
「面白そうですわね。ちょっと試してみてもいいかしら?」
「はい、もちろん」
クリシュはゴーレムの背に描かれている魔法陣に手を当てると、魔力を込め始まる。
魔力が込められたゴーレムは、今まで動いていなかった手足を元気よく動かし始めた。
「まあ、本当に動き出し始めましたわ!」
「それをテーブルの上においてみて下さい。元気に走り出しますよ」
クリシュはナーリャに言われた通り、カウンターテーブルの上にミニゴーレムを置く。するとゴーレムは器用にテーブルの上を走り始めた。
テーブルの端まで走ると、今度は落ちないように反対側へと走り始める。その様子に、クリシュは手を叩いて喜んでいた。
「まあ、お利口さんですのね、このゴーレムというのは。どうやって動いているのでしょう?」
「このゴーレムは背中の魔法陣を基点として、全身に魔力が流れるようになっています。その魔力が各部を動かしているんです。そしてこの動きなんですけど、実はわたしが小さい頃、その動きを写し取ってゴーレムに書き込んでいるんです。だから走ったり、危ないところを避けたり出来るんです。この技術は実はわたしのおばあちゃんが発見したもので、今では様々なゴーレムに使われているんですよ。例えば荷物運搬用ゴーレムもそうですし、他には建築なんかでも使われ始めているんですよ。ただまだまだ魔力効率が悪いため、普及はしていないんですが。でも何れは……」
「はい、ナーリャさんそこまでにしましょうね」
リューナは上機嫌で話していたナーリャの口を押さえ、話を中断させた。
話しを聞いていたクリシュは、目を点にして首をかしげていた。
「えっと、要は魔法陣によって魔力を全体に流して動かしているんです」
簡潔にリューナに説明をされ、理解できたのかクリシュは頷いて聞いていた。
昨日は投稿できず、すみませんでした。
これからも投稿できない日は出てきてしまうと思いますが、基本昼の12時に投稿していきたいと思います。




