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インテリジェンスロッドと双子の出会い3

 

 ここ、城塞都市ダナンは約1万もの人々が暮らす大都市である。街は外壁で覆われ、西には港街が存在し、東には王都、北には畑や牧草地に高山都市へと続く道。そして南には恵みの森が広がっていた。

 都市内部には様々な区画が設けられており、商売区、住宅区、技術区、貴賓区などと分けられていた。

 そんな都市ダナンの技術区の一画に一人の少女が住んでおり、朝早くから起きて活動していた。

 彼女、ナーリャは起きてすぐに顔を洗うと、紅い髪を後ろに束ね早々に着替えて一階へと降りていく。


「うん、今日もいい天気」


 窓の外を見てそうつぶやくと、彼女は台所へと向かう。そして買ってあったパンに、具材をはさんで簡単に朝食を作ると、テーブルまで持っていく。そうやって飲み物やサラダなども持っていくと、テープルに腰を下ろした。


「いただきます」


 そういって朝食を食べ始める。パンにはハムや野菜、卵焼きなどが挟まっている。それをおいしそうに食べ終えると、片付けのために台所へと持っていった。

 食器などを洗い、片付け終えると今度はドアの施錠をはずし、外へと出る。ナーリャが先ほどつぶやいていた通り、空は晴れ渡りよい天気である。

 そしてナーリャは立て掛けてあった箒を使い、外を鼻歌混じりで掃いていく。

 数分もすると外に出てくる人も増え、活動をし始める人々が多く前を通りすぎていく。そんな人々とナーリャは挨拶をしながら外を掃除していく。そしてそのまま隣の建物の前まで掃除をする。


 やがてそれを終えると、箒を元にあった場所へと立て掛け、隣の建物の入り口へと向かっていく。その建物の看板には「流れる羽」とかかれており、その横にはビーカーとかなづちの絵が書かれている。

 ドアの鍵を開けると、中からよいしょと立て看板を出す。そこには「火薬あります」の丸い文字が書いてあった。


「よし、ひと段落!」


 そういって最初に出てきた家の鍵を閉めると、隣の建物へと向かう。ナーリャが出てきた建物が自宅であり、その隣はナーリャが開いている魔道具店「流れる羽」であった。

 ナーリャが店に入ろうとしたところで声がかけられた。


「おはよう、ナーリャちゃん。相変わらず早いわねぇ」


 声をかけてきたのは少し年のいった女性であった。彼女の足元には4,5才の女の子が女性の裾をつかんでいた。


「おはようございます、シアラさん。スィンちゃんも、おはようございます」


「おはよう!おねえちゃん!」


 元気よく声を上げるスィンにナーリャは微笑む。


「シアラさんはこれから買い物ですか?」


「そうなのよ。朝市へ行こうと思ってね。麦と野菜に、いいのがあれば他のもね?」


「結構買いますね…スィンちゃんはお手伝い?」


 そう聞くと少女はうん!と大きく答え手を上げる。


「そうなんだ、えらいね」


 えへへ~、と嬉しそうな声を上げているスィンの頭をなでる。シアラもその様子に笑っている。


「あんまり褒めないでおくれよ。すぐ調子にのるんだから。それとナーリャちゃんはこれから店かい?」


「ええ、そうです。それとちょっと壊れたものがあって後で買いにいこうかと」


「そうかい。何か困ったことがあれば遠慮なく言うんだよ」


 そういって市場の方へと歩き出す。途中でスィンは何度か振り返りナーリャへと手を大きく振っていた。

 それに手を振り返し、やがて見えなくなった後にナーリャは店へと入っていった。


 店の内装はだいぶ広く、店の奥にカウンターがある。しかし商品を置く棚は閑散としており、ビンに詰まった砂、火薬がおかれているだけである。

 その様子に少しため息をつきながら、ナーリャは店のさらに奥にあるドアへと入っていく。

 その中には大きな作業台と工具らしきものが散乱としており、ほかにも鉱石やインゴット、丸めてある羊皮紙束や木片に草類などが種類別に置かれている。


「よし、今日こそ火薬以外にも作れるようになる!」


 そうやって昨日と同じ気合をいれ、羊皮紙を取り出す。羊皮紙には何も書かれておらず、まっさらだ。

 インク壷とペン、それと図を書くための道具を一式も持ってきて作業に取り掛かる。紙には次々と模様や記号、図形が書き加えられていく。ナーリャは服が汚れるのを気にもせず描き続けていった。徐々に形になってきたそれは、それは一般的には魔方陣と呼ばれるものだった。

 そうして途中に何度か休憩を挟みつつ作業をしていき、時刻は昼前になっていた。その間客は来ていない。


「あっといけない。お買い物行かなきゃ」


 集中してあまり時間を気にしていなかったナーリャは、まだ書き途中の魔法陣を置いて自宅へと向かった。そして手を洗い服を着替えると、鍵をかけ外へと出かけた。そして立て看板に「不在」と書き込むとよし、とつぶやき城壁の方へと向かっていく。

 途中何度か職人風の男たちに挨拶され、それに返事をしながら進んでいくと目的の店、タヌキの尻尾店へと到着した。


「こんにちはダルおじいさん、いらっしゃいますか?」


 そうして声をかけながら店へとナーリャは入っていく。そこには老人、ダルが座っていた。


「おお、ナーリャちゃん。いらっしゃい。今日はどうしたんだい?」


 いつかの3人の冒険者に対応していた態度とは裏腹に、孫に会った祖父といった態度で話しかけている。ナーリャはそれを特に変と思わず、話しを進める。


「今日は燃鉱石の在庫がちょっと心もとないので、それを買いに来たのと…」


「おお、そうかいそうかい。いい品質のが入っているよ。北高地で取れたやつにさらに奥地のものと、色々あるよ」


 話しを遮るように話しはじめるダルにちょっと苦笑いをしながら、ナーリャは話しを続けた。


「えっとそれと、杖を探しに来ました」


 それを聞いたダルはさらに嬉しそうに話す。


「そうかいそうかい、杖なら今あるのはタルに突っ込んであるやつの他にもあるからね。ちょっと待っておくれ」


 そういうとダルは奥へと引っ込んでいった。それを見送ったナーリャはきょろきょろと辺りを見回す。さっきダルが言っていたタルを探していた。入り口の脇に置かれていたそれを見つけたナーリャは、嬉しそうにタルに入っている杖を見て回る。

 見ては戻しと繰り返していたが、ふと手に取った杖があった。それは木でできた柄の先端に宝玉らしき玉がついている杖だ。

 なんとなく気になり、手にとって良く見ているとドルが奥から戻ってきた。


「この杖なんてどうだい?魔力がこめられるタイプで、魔道機としても結構優秀だと…」


 そう話しながら戻ってきたドルは、ナーリャが手に杖を持っている姿が目に入る。


「おや、そいつが気に入ったのかい。だそいつは魔力も込められなければ、魔道機としての機能も無いよ」


「はい、そうみたいなんですけどなんか気になっちゃって。これおいくらですか?」


「そうだね、500と言いたいとこだがナーリャちゃんは特別だ。400で良いよ」


 それは冒険者から購入した値段、完全に原価である。


「良いんですか?すみませんダルおじいさん、いつもありがとうございます」


 価格のことなど知らないが、ナーリャは笑顔で嬉しそうに答えると、さらにダルはでれでれとした笑顔になる。


「いいんじゃて。ナーリャちゃんにはいつも元気を分けてもらっておるからのぅ。そうじゃ、ちょっとお茶でも飲んでいかんかね?」

「えっと、それじゃあお言葉に甘えて…」


 そうやってお茶を飲みながら話しをし始めた。内容は最近腰が痛いだの最近の冒険者はだのといった話しから、遠く外国にある国やそこで取れる材料などである。それを楽しそうにナーリャは聞きながら、お茶を頂いていた。

 小一時間ほど話しをした後、ナーリャはそれじゃ、といい席を立った。


「もういってしまうのかの?もうちょっといてもいいんじゃよ?」


「すみません、店も閉めてきちゃってますし、もうそろそろ戻らないと…」


 ナーリャはぺこりと頭を下げてそういった。


「そうかそうか、それじゃ仕方ないのう。鉱石は後で持って行かせるから安心しておくれ。またいつでも来て良いからの」


「ありがとうございます。それではまたお邪魔しますね」


 ナーリャはそう言って手を振り店を後にする。

 帰りの途中、買った杖を嬉しそうに見ながら歩いていくと、お腹が鳴った。ちょっと恥ずかしそうにあたりを見回して、誰にも聞かれていなさそうだと分かると、ほっと一息ついて屋台でサンドイッチを買って帰り、また店まで戻ってきた。

 すると店の前に一人のローブ姿が見て取れた。フードをふかぶかとかぶっており、顔は見えない。身長から女性かな?と思いナーリャは声をかける。


「なにか御用ですか?」


 声をかけながらナーリャはその姿を改めて確認する。相手がまとっている白いローブには所々、青い糸で刺繍が施されている。その刺繍にナーリャは見覚えがあった。魔道技師協会の文様である。


「すみません、こちらは流れる羽店で間違いありませんか?」


 聞こえてきた声は女性のもので、落ち着いた調子の声である。しかしナーリャの姿を確認すると驚いたように固まる。

 その様子にナーリャは何だろう?と首をかしげながら答える。


「はい、流れる羽で間違いないです。うちに御用でしょうか?」


 ローブの女性はナーリャの答えにハッっとし、ゴホンとせきをする。


「失礼、ご店主であるサーフィ殿は在宅であろうか?」


 ナーリャはその名前を聞き息を呑む。その名前はナーリャはよく知ってる。知ったいた。


「すみません、サーフィお婆様は昨年に…」


 そういうとナーリャは少し目を落とす。その様子に再度驚いた様子でローブの女性は声をかけてくる。


「そうでしたか…失礼いたしました」


 女性は頭を下げ謝罪をする。その様子にナーリャは慌てて顔を上げる。


「すみません、そういったつもりは無くてですね、えっと、その…」


 あたふたとしているナーリャの様子に、ローブの女性は大丈夫そうだと話を続けた。


「では、お店の店主の方をご存知ないでしょうか?今は閉まっている様子なのですが」


「あ、はい。今の店主は私です」


 ナーリャはそういって胸を張る。それを聞いたローブの女性は少し思案した後、こう切り出した。


「では、現店主にお願いがございます」


ご覧くださりありがとうございます。

投稿時間がばらばらですみません。

明日から基本的に昼の12時での投稿となります。

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