インテリジェンスロッドと双子の出会い2
リュックに括り付けられた透は、冒険者一向によって運ばれていた。
運ばれている道中、透は彼らの会話を聞いていた。冒険者たちはこの森への定期調査に来ていたようだ。
調査結果は特に問題が無いらしく、帰りの途中で透を発見したようだ。
「(発見してもらってよかったのか悪かったのか。まあ仕方ない、丁重に扱われることを祈ろう)」
透の気分は完全にドナドナ状態である。それに加え、ローブ男が言っていた魔力が感じられないという言葉が気になっていた。
「(魔力が感じられないって言うのは、普通の杖としか認識されて無いってことだよな?まさか《知識の杖》なんてのが嘘で、ただ単に杖に押し込められただけじゃないよな)」
そうであれば、あの管理者を名乗る連中によるただの嫌がらせかはたまた愉快犯か、などと考えているうちに冒険者一向は森を抜け出ていた。透のいたところは森の外延部で、外とはだいぶ近かったららしい。
森を抜けるとすぐに砂利が敷き詰められた街道となっていた。そして道をまたいで森の反対側は草原になっていた。草原は遠くまで見渡すことが出来、途中途中に牛や羊らしき生き物が草を食べているようだ。
また、遠目には畑のようなものが見て取れ、麦が穂を実らせている。
「おお!これまたいい景色だ!」
声に出して透は現実逃避をしながら叫ぶ。しかしながら冒険者一向にはやはり聞こえていないようだ。
「さて、このまま行けば夕方までには街には着きそうだ。報告してさっさとこいつを売るか」
その言葉に透は一気に現実へと引き戻される。
「そうですね、騎士隊には状況を報告すればよこせとは言われないでしょう。とは言っても安いと思いますよ」
「それでも多少は儲けになるんよねー。どうする?いつもの爺さんでいいよね?」
そんな会話が3人の中で繰り広げられていたが、透としてはドナドナ先が決まっていく様子にだんだんと落ち込んでいた。
「いつもの爺さんで良いだろ。買い叩かれるとは思うが、世話になってるしな」
「ええ。では行きましょう」
「あいよー」
そういって3人は街道を進み始めた。
天気は晴れ渡っており、また冒険者たちは旅慣れしているのか、かなりのペースで歩みを進める。
「(まさか売られていくことになろうとは…)」
若干落ち込みつつも、辺りの風景に癒されながら運ばれていく。
街道を進んでいくと、ほとんど草原だった辺りの風景は徐々に麦畑に移っていく。数時間程歩いた|(運ばれた)あたりでは、風景のほとんどが畑となっていた。
そして街道の先には城壁が見て取れた。城壁はそこまで高くは無く、人の高さほどだ。
「ようやく到着っと」
そう言うと背の低い革鎧男はそのまま走っていく。
そのまま残りの二人|(プラス杖)はそのまま歩いて街道を進み、遅れる形で城門の前までやって来た。城門は2箇所あり、大きい門と小さい門に分かれているようだ。
大きい門の前では何台かの馬車が止まっている。その周りには商人であろう人々と鎧を来た人数人が話をしている。
その様子を横目に、冒険者たちは小さい方の門へと進む。
「お疲れ様です。入街許可証はこちらです」
門の前に立っていた門番に声をかけ、大きい方の革鎧男は紙を渡していた。
「ふむ、森の立ち入り調査か。ご苦労、通ってよし」
そういうと門番は門を開き、中へ入るよう促した。そのまま3人とも中へと入っていく。
城壁の中は外とは一変して、多くの建物が立ち並んでいた。多くはレンガや石材の積み上げてた立てられたようで、一部には木材が使用されているようである。
歩道は石畳で出来ており、門からおそらく中央へ向かって幅の広い道が続いている。
「(中世とは言っていたが、結構しっかりと作られているなぁ)」
透は日本ではあまり見ない石造りの街を見て、少しテンションがあがっていた。テレビでは見たことがあるが実際には見たことが無い光景である。
少し透が気分を回復していると、一向は城壁に沿った道を歩き始める。その先には一軒の大きめな建物が建っていた。
「では報告へ行ってきます。すみませんが二人は少し待っていてください」
ローブ男はそう言い建物へ入っていく。十分ほど待っていると、ドアから出てくる。
「問題なしです。さてダル爺さんのところへ行きましょう」
そうローブ男が言うとまた歩き始める。そして3人はそのまま一軒の店までやってきた。
その建物はこの街では珍しく木造で建てられており、入り口上には看板が立掛けられている。
「(ここが俺が売られる店か。なんて読むんだ?)」
看板には文字が記載されているが、透には読むことが出来ない。
「(そういえば言葉は分かるな。中途半端に知識があるのか、なんだかなぁ)」
リュックに釣らされたまま店に入ると、カウンターの後ろには一人の老人、ダルが座っていた。
部屋のあちこちには棚が設けられており、そこにはビン詰めの液体やら何か入っている袋など、多種多様なものが収められていた。
おそらく商品であろう中には、杖がまとめて入れられているタルもあった。
「おう、おめえらか。どうした?」
「よう、ダル爺さん。見てもらいたいものがあるんだ」
そういうと大きい革鎧男は、リュックに括り付けられていた杖|(透)をカウンターへと持っていく。
その杖を見るとダルはふむ、とつぶやき持ち上げて確認している。
「あちこち触るな!気色悪い!」
触れられている感覚は無いが、あちこちと爺さんに触られて透は声を上げる。
その声に反応したわけでもないであろうが、ダルは再度カウンターへ杖を置いた。
「なんでぇ、たいしたものじゃないな。魔力も無ければ魔道機というわけでもねえ。どうしたんだこいつは?」
「森の調査で拾ったんだ。台座に刺さってたんで何かあるかと思って持ってきたんだが、やはり何も無いか?」
「ああ、こいつは正真正銘ただの杖だな。で、どうする?売るなら300ってとこだな」
「300は安すぎる。500はいくだろう?」
「ただの棒切れだろうが。400」
大男は少し悩んだ様子だったが、同意を示した。
「わかった。では400で」
「おうとも、じゃあ400だな。ちょっと待ってろ」
そういうとダルは店の奥へと入っていき、少しした後袋を持ってきた。
「ほれ、金だ。きっちり400入っている。またなんかあったら来な、安く買い叩いてやる」
笑いながらダルはそう言う。それを見た大男は苦笑いを浮かべる。
「まったく、ちゃっかりしてるな。まあいい、それではまた何かあれば」
そう別れの言葉を言い、3人は店から出て行った。
「(400って安いのか?まあ安そうだよなぁ)」
自分に安値がつけられたと感じる透は、無駄にプライドが傷つけられていた。
そしてダルに持ち上げられ、杖が一緒くたに入れられたタルの中に放りいれられる。
「もうちょっと大事にあつかってくれよ、知識の杖だぞ」
そんな恨み言もダルには聞こえなかったようで、そのままあくびをしてカウンターに戻っていった。
「(さて、どうするかな。といってもどうしようも無いんだけど。うらむぞ管理者)」
管理者と名乗ったアイニスの顔を思い出しながら、透はこれからのことを思いふけっていった。




