杖と魔道技師と騎士と冒険者8
「それで? 何か聞きたい事でもあるのか?」
「ん? ああ、ちょっと冒険者ってやつについて聞きたくてな」
剣と魔法を武器に戦い、生きていく冒険者の話しをよく漫画やライトノベルなどで読んでいたトールは、冒険者にあこがれに近い興味を持っていた。そのため、実際の冒険者に落ち着いて話しを聞くのを、望んでいたのである。く
「そうか。何が聞きたいんだ?」
「そうだな、冒険者ってどんな職業なんだ? そのあたり全然知らなくてなぁ」
「冒険者を知らないの? ほんと変なやつなだなぁ」
ジザニオンの茶化すような言葉に、トールは冒険者は一般に知られた職業なのかと推測する。
「だめですよ、ジザ。すみませんね、口が悪くて」
ローブ姿のウィルティリアはそういってトールへと謝る。ジザニオンのほうはというと、特に気にした様子でもなく相変わらず頭の後ろで手を組ん見ながら歩いていた。
「気にしないでくれ。それで、冒険者ってのはどんな仕事をするんだ?」
「そうですね、冒険者というのは結局のところ便利屋です。様々な人たちから依頼を受けて、それを達成して報酬をもらって生きている人を指します。私達も今回は、守備隊からの依頼をもらっての調査ですからね。」
「なるほど。他にもどんな依頼を聞いたりするんだ?」
「他には街の近くに出た魔物の退治や、職人方からは何がしを取ってきてくれ、商人からは護衛を依頼されたりもしますよ」
トールはウィルティリア冒険者の説明を聞いて、大体想像していた通りであると思っていた。
様々な人々から依頼を受け、それを解決しながら報酬を得る。まさにトールの想像通りである。
トールが納得して具体的な話しを聞こうとしていると、今度はウィルティリアの方から質問が飛んでくる。
「そういえばあなたは一体何物なんですか? いや、失礼。変な意味ではないですよ。あなたを見つけた時、私が魔力の感知をした際には一切反応しなかったものですから」
「そうだな、一体何物かというのは俺にも良く分かってないんだ。こうやって話しをしたり、飛んで自由に動けたりするようになったのも、あの二人が俺のマスターになってからだしな」
一部世界の管理者やナーリャとリューナの二人がマスターになった条件等について、答えをはぐらかしながら、トールは柄の先端をナーリャとリューナの方へと向ける。
向けられた二人は、ペルラと楽しそうに話をしている。
「そうですか。あのお二方との相性みたいなものが存在しているのかも知れませんね。そうなると私でもダル爺さんでもわからなかったというのも、納得が出来ます」
ウィスティリアはトールについてただの杖だと判断した事を気にしていたのか、それなら仕方が無いと納得しているようであった。
トールは、ちょっと正解と心の中で呟いていた。
「それで話しは戻るんだが、ここまでの冒険で何か面白い事とかないのか? あればぜひ伺いたいんだが」
「お、聞いちゃう? それだったら取っておきの話があるよん」
今まで横で聞いていたジザリオンだったが、トールの質問に食いついてくる。
「それじゃあまずはこの街にやってくる少し前の話なんだけど……」
ジザリオンは気前良く自身の冒険話をトールへ話し始める。トールも新しい物語を聞くかのように、わくわくしながらジザリオンの話しに耳を傾けるのであった。
一方、ペルラと話しにいったナーリャとリューナは、トールについて話をして盛り上がっていた。
「そういうわけで、トールさんは案外口が悪いんですよ。人のこと食いしん坊だなんていうんですから」
「別に間違ってないと思うんだけどなぁ。……うそうそ、冗談だってリューナちゃん」
「ふふ。仲が良いのですねお二人は。お二人は姉妹かなにかか?」
ナーリャとリューナのじゃれあいに微笑みを浮かべながら、ペルラは聞きたかったことを質問する。ナーリャとリューナは髪の色は違えど、ほとんど顔つきはそっくりである。そのことに出会った当初から気になっていたのである。
リューナが街にやって来た時より様々な人に質問された内容に、二人は笑いながらも答えた。
「いえ、実は赤の他人なんですよ。リューナちゃんを初めて見たときなんかは、わたしも驚いちゃいました」
「私も初めてナーリャさんを見たときは驚きましたね。まさか自分にそっくりな人がいるとは、微塵も思っていませんでしたから」
「そうでしたか。初めてお伺いした時は、あまりにもそっくりだったため私も驚いてしまいました。その横で飛んでいた杖を気にしないほどには」
ペルラの冗談に、ナーリャとリューナは揃って笑い声を上げる。二人のそっくりさんと空を飛ぶ杖はどちらが驚かれるだろうか。
「最近あんまり自覚がなくなってきているけど、トールも大概だからね」
「私達もトールさんを初めて見たときは驚きましたからね」
「ふむ、一体どういった状況だったのだろうか?」
ナーリャは当時の事を思い出すように、顎に人差し指を当てて考えながら答える。
「う~ん、あの時は初めてリューナちゃんがうちに来た時で、二人で話をしていたら急にトールが光って……」
「それで何が起こったのかも良く分からない状態で、いきなりトールさんがはなしかけてきたんですよね」
ナーリャの話しに続けてリューナも加わる。リューナの方も顎に手を当てて思い出すかのように、考えながら話をしているようである。
「突然光って、急に話しをし始めた、ですか」
「うん、そうなんですよ。急に光ったと思ったらいきなり飛んで声を出し始めたみたいなんです」
「それはなんというか、興味深いですね。きっとお二人が何かしらの鍵になっていたのかも知れませんね」
「たぶんそうだとは思うのですが、如何せんあまり情報がないので良く分かってないのです。トールに聞いても、分からないと答えられてしまいました」
リューナが答え、ナーリャは其方を少し見る。
この答えは一部嘘である。実際にトールは二人合わせると全八属性を所有しているからと答えている。
ただ、一般には4大属性と考えられている上に、あまりトールの事を喋り過ぎない方が良いと考えたリューナである。
「それであれば、今回の調査で何か分かるかもしれませんね
「そうですね。何かしら分かればよいのですが」
実際マスター認定に必要な内容はトールに聞いているが、その他はリューナにとって分からない事だらけである。
様々な知識を有していると見られる知識の泉にしても、そもそもそんな知識を持たせてトールを作った人物にしてもだ。
今回の調査依頼を受けたのも、それらが気になっていたというのもあるのである。
「わたしとしても、どんな人がトールの事を作ったかは興味あるから、今回の調査は結構楽しみなんですよ」
リューナが思考の海にもぐっていると、ナーリャは楽しそうな顔をして今回の調査の展望を話す。
「そもそも一体どんな原理で話す杖なんかできているのか! トールに聞いても分からないの一言だし、分解させてほしいって行っても逃げちゃうし。外から観察しても全然分からないし。ちょっとぐらい中身見せてくれてもいいと思いません?」
「いや、流石にそれは嫌がるのではないかな」
結構無茶な事をナーリャに同意を求められ、ペルラは冷や汗をかきながら答える。実際自分が分解される様子を想像してしまったようだ。
「ナーリャさんはさっき私のことを食いしん坊って言いましたが、あなたの方は魔道具バカですよね」
「リューナちゃんひどい! 全然そんな事ないよ! ただちょっと魔道具が好きなだけだよ!」
リューナの事を軽く叩きながら文句を言うナーリャに、リューナは笑ってあやしている。
その光景が微笑ましかったのか、ペリエは笑みを浮かべながら二人のことを見ていた。




