杖と魔道技師と騎士と冒険者7
トール達が買い物をしてから3日が経過し、約束の当日となっていた。
その間ナーリャとリューナは準備のため爆弾であるプラーミァを初め、傷薬であるベリエ薬、あといくつか魔法陣を用意していた。
二人の装備は、草原へ採取に行ったときとほぼ変わらず、ナーリャは薄緑のローブを、リューナは白生地に青の刺繍が入ったローブを身に纏っていた。
ただナーリャの腰元には新しい杖が携われている。トールが自分を使って魔物に攻撃されるのを嫌がったため、ナーリャが仕方なく新調したものだ。
「それじゃあ出発するよ」
朝早く、日が昇り始めた時刻にトール達3人は家を出発する。目的地はペルラと約束した守備隊の寄宿舎だ。
あいかわらず朝早いというのに、あたりには職人らしき人々がせわしなく働いている。
そんな人々を横目に、3人は街の外縁部にある守備隊の寄宿舎へと歩みを進める。
「ところでさ」
「なーに? トール」
「寄宿舎って言ってたけど、守備隊の寄宿舎って何箇所か無かったっけ?」
トールのその言葉に、ナーリャとリューナは歩みを止めた。
トールの言う通り、この城壁都市ダナンには守備隊の寄宿舎は町の外縁部のほかにも、何箇所か設けられていた。
完全にその事を失念していたナーリャとリューナは、互いに目を合わせた後こう呟く。
「と、とりあえず、外壁近くの宿舎に行ってみようよ。そこでペルラさんの事聞けばいいんじゃないかな?」
「そ、そうですね、それがいいでしょう」
まるで何事も無かったかのように再び歩き出す二人の後を、トールは軽くため息をついてから、付いて行くのであった。
暫くして町の外縁部、外壁が見える場所までたどり着くと、外壁の内側に沿って歩いていく。そのまま進んでいくと、石作りで大きめの建物が見えてくる。守備隊の寄宿舎だ。
「さて、ひとまず到着だね」
ナーリャは寄宿舎のドアの前に立ち、ノックする。
暫くすると、中から若い男性が出てきた。簡素な金属鎧を着ており、ここの守備隊員のようである。
「はい、どちらさまですか?」
「すみません、わたし魔道技師のナーリャといいます。守備隊のペルラさんと約束しているのですが、いまいらっしゃいますか?」
「あー、はいはい、聞いてますよ。ちょっと待ってて下さい」
若い守備隊員は腰が低そうに丁寧にナーリャに対応し、一旦ドアを閉めて奥へと引っ込んでいく。
3人はドアの前で少し待ち、その後に再度ドアが開かれる。中から出てきたのはペルラであった。
「すまない、お待たせしたようだ。あまり綺麗なところではないが中に入ってくれ」
「は。それじゃあ失礼します」
ペルラに案内され、3人は寄宿舎の中へと入っていく。
中に入るとそこには来客対応のためのテーブルが置かれており、脇には会談が設置されている。
3人は案内されがままに、テーブルへと腰を掛ける。
「今日は来て頂いて感謝する。じつは他にも案内のため冒険者を雇っている。まだ来ていないため、少し待ってもらいたい」
「はい、分かりました。ちなみに冒険者の方は何名ですか?」
「3人だ。実はそこの……トール殿だったか? 彼を発見した者たちなのだよ」
トールは道端で会った3人組みを思い出す。バッルートにジザニオン、そしてウィルティリアの3人である。
「ああその3人か。ついこの間あって話しをしたんだ」
「知っている人なの、トール?」
「ああ。はら、この間ダル爺さんのところに買出しに行った時にな。たまたま道端であって話をしたんだよ」
「そういえばそんな事を仰ってましたね」
「そうなのか。そういうことなら話が早い。今回の調査は彼らにも同行してもらう予定だ」
3人と一本は最初に対応してくれた若い守備隊員が入れてくれたお茶を飲みつつ、冒険者たちを待つ。
ちょうどお茶が飲み終わる頃、寄宿舎のドアを叩く音が聞こえた。
「すみません。ペルラ殿に依頼をされた冒険者のものです。取次ぎを願います」
外から聞こえてきた音に、ペルラは対応しようとする若い守備隊員を止め、自分で外に出て行く。
そうしてペルラに案内され、3人の男たちが中へと入ってきた。それはやはりトールを森から持ち出した3人組の冒険者であった。
「よう久しぶり、ってほどじゃないな」
「ああ、お前か。確か3日ぶりか」
「ええそうですね。こんにちはトール」
「おー、空飛ぶ杖じゃないか。おひさー」
トールの挨拶に、3人組の冒険者はそれそれ挨拶をする。
「そちらの杖殿はご存知のようだが、お二人は初対面であろう。まず紹介させてもらうと、背の高い方はバッルート殿。背の低い方はジザリオン殿で、ローブを纏っている方はウィルティリア殿だ。そしてこちらのお二人は今回同行いただく魔道技師の方たちだ。紅い髪の方はナーリャ殿、青い髪の方はリューナ殿だ」
ペルラの紹介にそれぞれが頭を下げて挨拶をする。冒険者の3人は、ナーリャとリューナの顔を見ると、見た目がそっくりだったためであろう、少し驚いた表情を作る。
「さて、メンバーもそろった事だし、出発したいがよろしいか?」
全員が頷くのを見て、ペルラは若い守備隊員に一言声を掛けると、全員を外へと案内する。
外に出ると、時刻が早かったため薄暗かった空は既に明るくなっており、晴れ間を見せていた。
「では個別には説明させてもらっていたが、今回は森の中にあった杖、そこのトール殿だな。彼が見つかった場所の調査となる。危険は少ないとは思うが、各自気を付けて頂きたい」
一言ペルラが説明し、今回集まったメンバーは町の外へと向かった。
城門を通り、街の外へとでると、その風景は変わらずあたりにはあたりには一面農場が広がっていた。
先頭と冒険者の3人、次にナーリャとリューナ。最後にペルラといった順に並んで道なりを進んでいく。
トールは最初ナーリャたちの横に並んで進んでいたが、他の人たちと話すいい機会だと思い、まずは冒険者たちと話そうと前に出ようとする。
「ちょっと前の3人と話をしてくる」
「そう? それじゃわたしたちはペルラさんとお話しよっかな」
トールは少し進む速度を上げて冒険者たちの方へと向かう。ナーリャとリューナは早速ペルラへ話しかけているようだ。
トールは冒険者たちに追いつくと、話しかけた。
「よう。さっきは簡単な挨拶になったが、今回は宜しく頼むな」
「ああ、任せてもらおう。それにしてもまたすぐに会う事になるとは、縁とは面白いもんだな」
大男のバッルートはそう答えると、軽くにやりと笑う。
「そうだよねー。杖は安く買い叩かれたけど、今回のような楽な依頼だったらありがたいよね」
「だめですよジザ。気を抜いていると大怪我をしますよ」
ウィルティリアに窘められたジザリオンはへいへい、と軽くてを振ってあしらっている。
「そういえばトールはどうしたんだ? わざわざ俺たちに何か用か?」
「別段用というわけでもないが、どうせだったら話でもしたいと思ってな。普段は女所帯で肩身が狭いんだよ」
「杖の癖に肩身が狭いって変なのー」
お茶らけた様子で言うトールに、両手を頭の後ろに組みながらジザリオンは話す。
バッルートとウィルティリアも顔に苦笑いを浮かべていた。
ご覧くださりありがとう御座います。
所要のため次話の更新は6/1となります。ご連絡遅くなり申し訳御座いません。




