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杖と魔道技師と火薬と薬剤18

 

 時刻は夕暮れ時に指しかかっており、外は徐々に薄暗くなってきていた。

 ナーリャとリューナの二人は、爆弾であるプラーミァの製造に成功してから幾つか別の物を作成して、自分たちの魔力が混ぜても問題ないことを確認していた。


「こっちがベリエ薬に、それでこっちが渡り鳥の布だね」


「両方ともきちんと出来ていますね。問題ないはずです」


 少しテンション高めで話し合う二人。その横ではトールがその光景を眺めている。


「これで二人が力を合わせれば、色々な物が作れるってことだよな?」


「うん。トールのおかげだよ。ありがとう」


「トールさんが言ってくれなければ気づけなかったと思います」


 二人に感謝され、ちょっと照れくさくなったトールは、体をねじらせて答える。


「それはよかった。まあたまたま気が付いただけなんだけどな」


 そのまま浮び上がってうねうね体をねじって照れているトールを見て、ナーリャとリューナは笑顔を浮かべている。


「さてと、そろそろお夕飯の準備しなきゃだね」


 ナーリャは立ちあがり、工房の外へと向かう。


「それでは私はここの片付けをしておきます」


「うん、お願い」


 そのままナーリャは工房の外へと出て行くと、家のほうへ帰っていった。

 残った一人と一本は今まで行っていた物作りの片付けを始める。トールには何も出来ないのだが。


「改めて御礼を、トールさん。おかげで先が見えてきました」


「そう気にしないでくれ。俺も疑心暗鬼だったからな」


 桶に魔法陣で水を出し、リューナはそこに使っていた器材を入れて洗っている。改めてお礼を言うのが少し気恥ずかしいのか、トールの方は向かずにいる。


「それでもです。私達では気づけなかったでしょうから」


 リューナ洗った器材に付いた水を布巾でふき取り、一個一個棚へと片付ける。その手際は丁寧で、器材を大切にしているのが伺える。


「まあ俺をしても二人に協力できてよかったよ。それに、これで俺が分解されることもなくなっただろ?」


 冗談めかして言うトールに、微笑みながらそうですねとリューナ。まあトールとしては死活問題であったので半分本気ではあったのだが。

 そうして片付けをし、ほとんど終えるのと同時にナーリャから食事の準備を終えたと、伝えにくる。

 3人は揃って工房のある店から出て、住まいの方へと帰宅した。

 リビングのテーブルには食事が盛り付けられた皿が既に置かれており、食事の準備は万端のようだ。

 リューナは台所で手を洗い、テーブルまで戻ると、椅子に座る。ナーリャも椅子に座り二人は食事を始めた。


「それじゃあいただきます」


「いただきます」


 いつも通りトールは食事が出来ないので、二人の間を浮かんでいる。今日の食事はサイコロ状に切ったステーキに、肉と野菜のスープ、それにパンのようだった。


「いつ見ても上手そうだよな、ナーリャの料理って」


「褒めても何もも出てこないよー」


 少し顔を赤らめながら照れているナーリャ。まんざらでもなさそうだ。

 ふと、トールは気になったことがありリューナの方へと向く。正確には宝玉を傾けた、であるが。


「そういえばリューナの料理って見たことないな。料理できるのか?」


 そう言われたリューナは一瞬硬直したが、すぐさま反論する。


「な、何を当たり前な事を言っているんですか。失礼ですよ」


 若干目を逸らしながら言うリューナに、しかしトールは特に気にした風でもなく、そうかと答える。


「そんな事よりも、今後の事です。今後の」


 慌てた様子で話題を逸らすリューナに、トールは少し疑問に思うが特に気にせず、ナーリャは二人の会話をニコニコを眺めていた。


「私とナーリャさんの二人がいれば、何とか魔道具作りが出来そうだという事がわかりました。それで今後はお店を続けながら、色々な物を作っていきたいと考えています。ナーリャさんはどうでしょう?」


「そうだね。わたしも同じ意見かな。ただリューナちゃんはいいの?これで学院に帰れるんじゃない?」


 ナーリャは少し不安そうにリューナに問いかける。

 リューナが学院に出された課題、4大属性の用いた魔道具の作成は確かにナーリャの協力が得られれば可能だ。しかしリューナは首を振ると、答える。


「いえ、仮に学院戻ったところでナーリャさんがいなければ結局同じ事です。それにいまさら戻るよりも、こちらでご厄介になっていたほうが先も見えそうですし、なにより楽しそうです」


「そっか。それじゃあ一緒にお店を盛り上げていこう!」


 その答えを聴いてナーリャは嬉しそうにする。祖母が亡くなってから今まで、一人で生きてきたナーリャは、また一人になるのかを内心不安を感じていた。

 しかしリューナの此処に残るとの意思を確認できた事で、嬉しかったのだ。


「ええ。これからも宜しくお願いしますね、ナーリャさん」


「俺もいるからな。忘れないでくれよ」


 ナーリャとリューナが二人の世界に入り込んでいる気がして、トールは忘れられないように自己アピールをする。


「大丈夫。忘れてないよ」


「ご安心を。ちゃんと覚えていますから」


「いや、きっと忘れてたんだ。そうに違いない」


 少しからかい気味の二人に、それに乗っかってワザとらしく悲しむ振りをするトール。

 そうして食事を、3人は笑いあいながら済ませた。


 外も日が落ち、食事を済ませた二人は後片付けのあと風呂へと入りに行く。今日も二人で入るようだ。

 トールは相変わらず、リビングでボーっと二人が出てくるのを待つ。少しして暇を感じると、トールはストレッチもどきを始めた。

 体をねじらせ、宝玉部を下に上にと振る。その後床に下りてブリッジもどきの体制をとる。傍から見ると相変わらずの怪しさである。

 そんなことをトールがしているうちに、二人は風呂から出てくる。ナーリャは薄いピンク色の寝間着を、リューナは薄い青色の寝間着に身を包んでいる。


「ふぅ、さっぱりしたよ」


「そうですね。流石に草原じゃあ、お風呂は入れませんでしたし」


 少し顔を赤らめながら出て来た二人は、台所に行くと魔道具の水筒から出した水でのどを潤す。


「そういえばその魔道具ってナーリャにも使えているよな?水の属性が無いのに何で使えるんだ?」


 おいしそうに水を飲んでいたナーリャは、トールの質問を聞いて水を飲みながら、目線をトールへ向ける。


「ぷふぁ。えっとね、この水筒には魔力をためる機構が合って、そこに他の人にお願いして水の魔力を貯めてもらってたんだ。ほら、草原で取った角ウサギの魔石。ああいうのを加工して、魔力プールに出来るの」


「ああ、そういうことか。それなら納得だ」


 ちょっとした疑問が解決し、トールが満足していると、そろそろ寝ようとリューナが提案する。特に反対する理由もない二人は、そのまま就寝の準備へと取り掛かる。とはいってもの、トールの寝床である椅子を二つ並べて、そこに布を敷くだけだったが。


「それじゃあおやすみ」


「それではお休みなさい」


「お休み」


 ナーリャとリューナの二人は、そう挨拶した後自室がある2階へと上がって行った。

 トールはここ数日の寝床である椅子の上で横たわると、目をつぶる。いや、目は無いのだが視界は遮断する事ができた。


「(さて、昨日今日と立て続けに色々あって疲れたな。それにしても二人の問題も解決できた事だし、良かったかな。後は自分の問題、世界の調和だったか。これが一体どういうものかも探っていかなきゃならんのかね?)」


 世界の管理者から言われた、世界の調和。ほとんど情報の無いこの事柄に思いをはせながら、次第にトールは眠りにつくのだった。



「杖と魔道技師と火薬と薬剤」編はこれにて終了です。

次回から「杖を魔道技師と騎士と冒険者」編となります。

更新は5/21,22は所要のため、すみませんが 5/23(月)の昼12時となります。

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