↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
139/165

杖と魔道技師とゴーレムとコンテスト56

 

 トールのゴーレムまで戻ってきた一人と一本は、それを運ぶために準備を始める。


「では、ゴーレムに命じて運ばせますが、何か注意することはありますか?」


「いや、大丈夫だ。どうせ壊れて動かないしな」


 トールは準備中に念のため動作確認を行った。しかし結局はうんともすんともいわず、そのまま運んでもらうことにした。


「どちらまで運びましょうかねぇ。さすがにお屋敷までともなると、目立ちます」


「そうだなぁ。とりあえずはアトラ様の近くまで、持って行って貰っていいか? あとはこっちで交渉して何とかするさ」


「承知しました。では。『そのゴーレムを丁寧に持ち、私に付いて来い』」


 インテルムの岩石ゴーレムは、その命令を受けると、トールのゴーレムをゆっくりと持ち上げる。そして、お姫様抱っこのような状態で抱えると、そのままインテルムの後ろに付く。


「……結構シュールな光景だな」


 トールは思わずそうつぶやく。岩石の巨体を持つゴーレムに、黒い全身鎧の大男がお姫様抱っこで運ばれているのである。ある意味滅多に見られない光景だ。


「では、参りましょうか」


 そのあたりインテルムは特に興味が無いらしく、反応はしていない。淡々とゴーレムに命を下して、トールのゴーレムを運んで行く。

 そうしてドシンドシンと歩きながら、岩石ゴーレムはアトラが指揮している所まで運ぼうとした。だが、その途中で騎士の一人に止められてしまう。


「待ちたまえ。こちらは現在指揮を執っておられるアトランクス卿の陣だ。許可なくこれ以上の侵入は遠慮願おう」


 騎士はインテルムとゴーレム、そしてトールを交互に見ている。その表情は戸惑いといったものだが、職務に忠実なのかその役割を果たしている。

 トールはその騎士の反応を見て、そりゃ戸惑うわなと思いながら、通行の許可を求める。


「失礼した。私はトール。アトランクス様に雇われている魔導技師の所有物です。アトランクス様にお目通りを願いたいのですが」


 トールは騎士の前まで浮かんでいき、お辞儀をする。

 そんな杖にお辞儀をされた騎士は、さらに困惑した表情をするが、別の騎士がトール達に気が付き声をかけてきた。


「おや、そちらは確か話せる杖、だったか。アトランクス様に用事か?」


 もう一人の騎士は、トールがゴーレムの説明をしていた時に同行していたらしく、トールの存在を知っていた。

 トールが騎士の問に頷いて返すと、その騎士は分かったと言ってアトランクスの元へと向かって駆けていく。そして少しの後、戻ってきて通行の許可を出した。

 最初に会った騎士にも一度礼を言い、トール達はアトランクスの元へと向かっていった。


「アトランクス様、少々よろしいでしょうか?」


「やぁ、トール君。どうかしたかな?」


 アトラの横にはクリシュもおり、騎士や兵士へと指示を出している。彼女はトールが来たのを見ると、一旦指示だしをやめ、トールの方へとやってくる。


「トール様、どうかしたのですか?」


 クリシュもまたアトラと同じ質問をする。

 トールはまあ二人にお願いすればいいかと思い、来た理由を説明する。


「実は俺のゴーレムが動かなくなってしまいまして。それで屋敷までの運搬をお願いしたいのですが」


 トールはインテルムのゴーレムが抱えている、というかお姫様抱っこしている自分のゴーレムを、柄の先で指す。

 それで事情を把握したアトラとクリシュは、ああと一言呟くと分かったと返した。


「それはこちらで手配しておこう。なに、君たちはあの犬どもの襲撃で大いに貢献してくれたからね。大船に乗ったつもりでいてくれたまえ」


 アトラは朗らかにトールの肩を無意識に叩こうとし、それが出来ないと悟ると宝玉部を叩く。トールとしては頭を叩かれているような気分で、あまりいい気はしないのだが。

 そうしてアトラに協力を取り付けたトールは、その後ナーリャとリューナの所在を確認することにする。彼女らは薬、ペリエ薬を取りにアトラの屋敷に戻っており、トールがアトラと話を付けた後に戻ってきた。


 その後はトールもナーリャとリューナを手伝い、けが人達の治療を始める。先ほどカルンを診た医者に指示を仰ぎ、2人と1本はそれぞれ怪我人をペリエ薬を使い、治療を施していく。

 そうして一通り騒動が収まったのは、昼はとうに過ぎ夕暮れの時刻となっていた。


「ふむ、あとは引き継いでも大丈夫だろう。我々も引き上げようか」


 アトラはあたりを一度確認した後、偉そうな騎士の一人に引き継ぎを始める。そうして話を終えると、アトラはすぐにトール達の方へと戻ってきた。


「さてと、いい時間になってしまったな。屋敷へと戻って少し早めの夕食を取ることにしようか」


「あっと、まだイオンちゃんが……」


 アトラの提言に、ナーリャがそういった瞬間。


「イオンの意識が戻ったっすよ!!」


 イオンの介護にあたっていたカルンが、建物内から飛び出してきた。

 カルンはすぐにナーリャの手を取ると、そのまま建物内へと引っ張っていく。


「ちょ、ちょっとカルンちゃん!?」


「早く来るっす!」


 カルンの馬鹿力に対抗できるはずもなく、ナーリャはそのままカルンに引っ張っていかれる。

 リューナは手を肩まで上げて呆れたといった様子を見せた後、カルンとナーリャの後へと駆け足で追っていく。もちろんその後をトールは付いて行っていた。


「アトラ様、すみませんがもうしばらくお待ちを」


「良いだろう。待っているよ」


 トールは彼女らの後ろに付いて行きながら、一応アトラへと許可をとる。それに快く返事をアトラは返していた。


「お兄様。申し訳ございませんが……」


「いいよ、行っておいでクリシュ」


「! はい!」


 そしてクリシュもまたアトラに許可を得て、ドレスのスカート裾を手で持ち上げながらトール達の後ろを駆けていく。


「淑女とはかけ離れた所作だな、まったく。そう思いませんか、ディベルシオン王子殿下?」


 アトラはクリシュが駆けていった姿を、ゆっくりと歩いてきた男、ディベルシオン王子へと話す。彼の後ろには2人の騎士が付き従っていた。


「それが彼女の魅力的なところだと思うけどね、アトランクス。今のうちにお兄様とでも言っておこうか?」


「御冗談を。貴方様に兄上と言われると想像するだけで寒気がします。それよりもよろしかったので?」


 アトラは内容は口に出さずにディベルシオンへと確認をする。それでもディベルシオンは把握したようで、陽気な感じでその質問に返す。


「あの2人、いや3人と行った方がいいかな。彼女らに保証を与えたことかい? 下手に縛り付けた方がかえってうまくいかない物さ。最悪、他国へと渡られる。そして彼の杖が本気を出せば、我々には止める術はないさ」


 ディベルシオンは大仰に腕を広げながらに話す。

 それに対してアトラは無表情のまま続ける。


「今なら大丈夫だとも思えますが?」


「馬鹿を言っちゃいかんよ。あの光る腕で抑えられて、さっさと空を飛んで逃げられるのがオチさ。そして仮に確保したとしても、彼が協力的になるとは思えないね。下手すれば内側から壊滅させられる、なんてこともありうるとも思っているさ」


「……そこまで彼の者を評価しているので?」


「君だってそうだろう、アトランクス。あの光る腕だけじゃない。恐ろしいのはゴーレム等を作り出す技術だ。あのゴーレムだけだって、脅威だよ。あんなものを大量に作られれば、女子供でさえも強力な兵士になる。それに他にも君は彼の杖に関して、何か隠しているだろう?」


 アトラは一瞬眉を動かすが、それ以上表情に変化は現さない。だがディベルシオンにとってはそれで十分だったようだ。


「それはまあいい。詰まる所、無理にいう事聞かせようなんてのは愚か者のすること、という事だね。ならば王家として保証を与え、気持ちよく様々なものを作り出してくれた方が、こちらとしても得というものじゃないかな」


「なるほど。王子殿下としては良くお考えしたものです」


「嫌味かい、お兄様」


「……気持ちが悪いのでやめて頂けますか、王子殿下」


 アトラとディベルシオンの二人は、少女たちと杖が入っていった建物の窓を見る。

 その窓の中の一室では、ベッドから起き上がっている少女と、その周りで笑っている少女たち、そしてその様子を見守っている杖が見て取れた。




長い間更新が滞っており、申し訳ございませんでした。

今現在も毎日更新が難しい状況ではありますが、2,3日に一話ペースで更新できるようになると思いますので、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。