↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
129/165

杖と魔道技師とゴーレムとコンテスト46

 

「うっそだろ!」


 トールは新たに出現した獅子型のゴーレムを見て、つい口に出てしまう。

 全身が金属でできているそれは、犬型のゴーレムと同様関節部は繋がっておらず、しかしその大きさは2まわり程大きい。


「・・・」


 獅子型のゴーレムは、吠える体勢をとるが音は出ていない。ゴーレムの動作の元となった生き物をトレースしているだけだろう。

 そして獅子型ゴーレムはゆったりとあたりを一度見渡し、貴族たちが集まっている方へと駆け出して行った。


「くそっ!」


 トールはそれを防ぐべく、獅子型ゴーレムに向かって走り出そうとしたが、取り囲んでいる犬型ゴーレムに妨害され、そちらへと向かうことが出来なかった。


「邪魔だ!」


 トールは散弾銃もどきで一匹頭を撃ち、反対側の手で持っていたメイスでもう一匹を打ち据える。撃たれた方は頭が砕け散り、もう一匹もまたメイスによって潰される。

 しかし他の犬型ゴーレム達はそれらを意に返さず突進してきており、トールのゴーレムに組み付く。

 トールは組み付いてきたゴーレムの頭を掴み、必死に引き離そうとするが、一匹剥すごとに他のゴーレムが飛びついてきてきて、トールの動きを阻害していった。


「な、なんだこいつは!!」


 トールが犬型ゴーレムに妨害されている間に、獅子型のゴーレムは貴族の集団に差し迫っていた。

 走って向かってくる金属の獅子に対して、騎士の一人は動揺し叫ぶ。

 勢いよく走ってきた獅子型ゴーレムは、貴族たちを守っていた騎士の一人に向かって、その腕を振るう。それを剣を盾にし防ごうとした騎士であったが、その膂力に負けて剣はへし折れ、騎士は横へと吹き飛んだ。


「ぐふっ!」


 吹き飛ばされた騎士は2度ほど跳ね上がり、その勢いのまま地面を転がる。そして勢いが落ち止まったが、倒れこんだまま起き上がることができなかった。


「ちっ! 隊列は維持! 2人は俺と共にあいつの相手をするぞ!!」


 指揮を執っていた騎士は、他の騎士に号令を出すと近くにいた2人の騎士を引き連れて獅子型のゴーレムへと向かう。

 獅子型ゴーレムは、一人吹き飛ばした後とどめを差そうとしているのか、ゆっくりとした動きで先ほど吹き飛ばした騎士へと向かおうとしていた。


「させるか!」


 倒れた騎士に向かって歩く獅子型ゴーレムを止めるべく、3人の騎士はその胴体に向かって剣をふるう。しかしそれらは簡単に弾かれ、獅子はそれを気にした様子もなくゆっくりと倒れた騎士に向かい歩みを進める。


「くっ! 『vawJ tte iuC bnxmay ZUpax HmaosJ iYkf』」


 剣による攻撃が効果がないと悟ると、騎士の一人は呪文を唱える。これは以前トール達が森の調査に行ったとき、同行した冒険者の一人であるエルフのウィスティリアが使っていたものと同じ、土の槍を作り出すものだった。

 騎士の呪文に応え、地面から数本の槍が生え獅子へと向かって伸びる。槍は獅子の足へと命中し、そのバランスを崩すことに成功した。

 しかし損害は無く、すぐに獅子型ゴーレムは体勢を立て直すと、先ほど呪文を唱えた騎士の方を見る。そして大きく口を開けて、騎士へと噛みつこうと飛び掛かった。


「させないっすよ!」


 そこに一人の少女が間に入る。カルンだ。

 彼女は自分の持っている槍で、獅子型のゴーレムの頭を横殴りにすると、その金属でできた体を大きくよろめかせる。


「もういっちょ!」


 よろめいた獅子に対し、今度は槍を一突きする。顔を狙った槍は頬のあたりに命中したが、力が強すぎたのか持ち手の部分から砕け散っていった。


「ありゃりゃ、壊れたっす。やっぱ安物は駄目っすね」


 カルンは手元に残っていた槍の残骸をぽいっと捨てると、自分のこぶしを手のひらにパチンと当てて気合を入れ直す。


「カルンちゃん、あまり出すぎないでね。あと、槍は結構いい値段したんだから」


 カルンの横には、少し遅れてイオンもやってくる。彼女は杖を構え、獅子型ゴーレムへと対面している。


「そうだったっけ? まあいいっす。行くっすよ、イオン!」


「うん、カルンちゃん!」


 カルンは獅子へと向かって飛び出していき、イオンはその場で呪文を唱え始める。

 獅子型ゴーレムは、カルンを脅威とみなしたのか、視線を倒れている騎士から離してカルンを迎え撃つ体勢をとる。向かってくるカルンを排除すべく、口を開けて噛みつこうとする。

 それをカルンは真正面から受けると、牙を掴み獅子の動きを封じる。

 カルンと獅子の体格差は歴然であり、近くにいる騎士はすぐに救出しなければと剣を構えて突撃の体勢に入る。しかし騎士たちの想像とは裏腹に、カルンは獅子型ゴーレムの牙を掴むと、そのままそれを持ち上げた。


「うおりゃーっす!」


 獅子型ゴーレムを持ち上げたカルンは、掛け声とともに地面へと叩きつける。叩きつけられた獅子型ゴーレムは、その衝撃で四肢を一旦ばらけさせるが、すぐさま元の形をとりもどす。

 その光景に目を見張ったのは騎士たちである。彼らは襲われる少女を助けるべく、死を覚悟しながらも突貫しようとしていたが、あまりの光景に口を半開きにする。


「vawJ tte iuC ZUpax aysoiphU ZUpax bnSJGui HOYmaodJ wksyAr」


 続いてイオンの呪文詠唱が終わる。

 地面から土が浮かび上がり、それは徐々に鈍色のランスのような先端が鋭い形状となる。そして人間大程のランスが形成されると、一気に獅子型ゴーレムの頭目掛けて飛んでいった。

 カルンに投げ飛ばされ、ばらけていた四肢を集めたゴーレムはその鈍色の槍に反応することが出来ずに頭に直撃する。だが大きな衝撃音とともに命中した槍は、頬の一部を削りとることが出来たが、粉砕するまでには至らない。


「これでも駄目ですか。厄介です」


 それなりの魔力を消費したのか、少し上がった息を整えつつイオンは再度呪文の詠唱に入る。

 それを邪魔されないように、カルンは獅子型ゴーレムの前に立ち、その動きをけん制する。


「なんなんだ、彼女たちは……」


 その言葉が聞こえたのか、カルンはもう一度獅子型ゴーレムを投げ飛ばすと、騎士とゴーレムの間に立つ。そして―――


「やぁやぁ我こそは、かの英雄アーセファの裔、カルンなり! 犬畜生に劣る悪党ども、根絶やしにしてやるから覚悟するっす!!」


 いつかの山賊の前でも行った、名乗りを上げる。

 騎士たちはその名乗りを呆然と聞いていたが、しかし獅子型ゴーレムはそれを一切聞かず、投げ飛ばされた体勢を戻すと連続で爪による攻撃をカルンへと仕掛けてくる。


「お、っとっと。名乗りも聞かないとは、失礼な奴っす」


 カルンは迫りくる爪を避け、一部は真っ書面から殴り飛ばしながら獅子型ゴーレムの攻撃をさばいていく。そうしている間に、イオンの呪文詠唱が終わり、もう一度先ほどの鈍色の槍が作りだされる。


「てっ!」


 イオンの掛け声とともに発射された鈍色の槍は、もう一度獅子型ゴーレムの顔を打ち据えるべく発射される。しかし獅子型ゴーレムは今度はそれを大きく跳躍しかわす。地面に大きく突き刺さった鈍色の槍は、その姿とただの土へと戻していった。


「ふぅ。しんどいですね、これは」


 最初の一撃は体勢を崩していたことから、簡単に命中させることが出来ていた。しかし二撃目は軽々とかわされた。ただ単純に魔法を放つだけでは、回避される。


「カルンちゃん、あいつの体勢を崩せる?」


「ういっす。やってみるっす!」


 カルンはイオンの言葉通り、獅子型ゴーレムの体勢を崩すべく、もう一度投げにはいる。だが獅子型ゴーレムも何度も地面に叩きつけらえていることから、投げを警戒しアウトレンジからの攻撃を主体としてきた。

 牙による噛みつきは使用せず、少し離れながらその体格をぞんぶんに使って爪による攻撃を仕掛けてくる。

 カルンは爪による攻撃を避けつつ、隙あらばそれを掴もうとする。しかしうまく掴んでも獅子型ゴーレムは一度手を本体から切り離し、投げ飛ばされないようにしていた。


「こんのぉ!」


 カルンは掴んだ獅子の手を振りかぶると、思いっきり投げつける。

 ガイン、という音と共に命中したそれだが。威力が足りないのか獅子型ゴーレムの体勢を崩すまでには至らない。そしてぶつかった手であるが、すぐさま獅子型ゴーレムの元に戻り、元通りの位置に収まってしまう。


「なんなんすか、あれ。卑怯っすよ!」


 思わず愚痴を叫びつつ、カルンは再度獅子型ゴーレムに向かっていく。

 決め手がないまま、戦闘は続いていく。カルンが獅子型ゴーレムの攻撃を捌きつつ、隙あらば体勢を崩そうとする。そしてそれがうまくいけば、イオンが魔法で鈍色の槍と作り出し攻撃を加える。

 何度か魔法による攻撃が成功し、頭だけでなく体のあらゆる所をえぐることが出来ている。しかしそれもほとんど効果がないようで、獅子型ゴーレムは以前としてその動きを鈍らせていなかった。


「ハァ、ハァ、ハァ。ゴメン、カルンちゃん。これ以上は、ちょっと、持たない。魔力回復、まで、少し時間を、稼いで」


「了解っす! イオンは少し休んでてほしいっす!」


 イオンの魔力はほぼ尽きかけ、息を大きく荒げている。その様子をちらりと確認したカルンは、何とか懐に潜り込もうと、獅子型ゴーレムに突進する。

 迎え撃つ獅子型ゴーレムは、一度大きく口を開くと、吠えたような体勢を取った。その音のない咆哮の後、前足が徐々に赤くなっていく。

 前足と接触している地面からは煙が立ち上り、それがすさまじい温度になっていることを物語っていた。


「嘘! カルンちゃん、避けて!!」


 それを離れたところから見ていたイオンは、大声でカルンに向かって叫ぶ。

 懐に潜り込もうとしていたカルンは、その獅子型ゴーレムの変化にわずかに気付くのが遅れる。振りかぶる獅子型ゴーレムの爪を慌てて避けようとしたが、それも叶いそうになかった。


「こん、のぉぉぉ!!」


 カルンは回避を諦め、被害を最小限に抑えようとその赤熱した爪を殴り飛ばそうとした。


「させるかぁ!」


 そして、カルンの拳と獅子型ゴーレムの赤い爪が触れようとした瞬間、横から鉄の塊が獅子型ゴーレムの腕を殴りつけた。

 獅子型ゴーレムの腕は吹き飛び、すこし離れたところに落下する。

 腕を飛ばされた獅子型ゴーレムは、その距離を話そうとして跳躍し、腕の近くへと着地する。そしてすぐさま腕が元通りになる。


「金属の特性を生かした攻撃ってところだな。まったく、質が悪い」


 獅子型ゴーレムの腕を吹き飛ばしたもの、トールは肩に先ほど殴りつけたメイスを担ぐとカルンの脇へと立った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。