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杖と魔道技師とゴーレムとコンテスト17

 

 アトラとの今後の打ち合わせを終了し、トール達は各自部屋へと戻ってきていた。部屋の中にはナーリャ、リューナのほかにもカルン、イオンもいる。

 トールは既にゴーレムから出ており、それをカバンにしまいこむと、自分の柄部分にくくりつけていた。

 時刻はまだ日も落ちておらず、夜までまだ時間があったためこれからどうするかを話し合っていたのであった。


「王都見学も出来ればしておきたいな」


 そう発言したのはトールである。その様子は柄の部分をうねらせて、ウキウキしているのが一発で見て取れた。

 トールはこの先クリシュの社交界に付き合うことが決まっており、明日からは自由に王都見学は出来ない。そのため、この世界に来てからダナン城塞都市以外の街にきたことがないトールは、この機会を逃すまいとしているのである。


「そうですね。トールさんは明日からはクリシュ様と一緒に行動しますから、見れるとしたら今日しかありませんね」


「そっか。それじゃあ今からちょっと出歩いてみよっか。カルンちゃんとイオンちゃんも大丈夫?」


「大丈夫っすよ。ね、イオン?」


「そうですね。私たちは護衛ですから、基本は付いて行ったほうがいいと思いますし。あとアトラ様にも一言言っておかないと。護衛を付けてもらうことになると思いますので」


 イオンの忠告通りだと、トールはちょっと自分が浮かれていることに気がつき考えを改める。

 現時点では他の貴族の妨害行動がありえるのである。十分警戒する必要があった。


「そうなると早めに相談した方がよさそうだ。俺もゴーレムで出るか」


 トールは一旦閉まったゴーレムを再度取り出す。カバンの中から部屋の中に黒鎧姿のゴーレムが姿を表す。


「どうしてゴーレムを出すの?」


「威圧感を出すためだよ。それとこんな全身黒鎧の男が近くにいれば、嫌でも目立つだろ? そうすれば少なくとも街中でちょっかいをかけ辛くなるはずだ」


 ナーリャの問いに答えながらトールは取り出したゴーレムの中に入ると、起動させて立ち上がる。


「で、トールさん。本音は?」


「長時間の稼動実験が出来ていないからな。いい機会だしここいらで試験をしておきたい」


 そしてリューナの問いに簡単に内情を暴露するトール。

 一瞬沈黙した後、トールは顔を逸らしながら言い訳をし始めた。


「いや、目立つためというのも間違いじゃないんだぞ? 手が出しにくくなるだろうし、女の子だけでうろつくと変な奴が寄ってくるかもしれないじゃないか」


「アトラ様に護衛をつけてもらうので、その辺は大丈夫だと思いますけどね。まあ、トールさんも見て回りたいというのも嘘ではないでしょうし、いいんじゃないですか」


 若干冷たい視線で見ているリューナに、トールは口笛を吹きながら顔を逸らし続けている。どうやって吹いているかは不明である。

 取り合えず外に出ることを決めた一行は、アトラへと連絡して外出許可をもらうべく行動を始める。といっても唯単に執事に声を掛け、アトラへと連絡してもらっただけであるが。

 数分後、執事に伴って一人の鎧を着込んだ初老男性が部屋へとやってきた。


「皆様、お待たせいたしました。主より外出の許可が出ましたのでお伝えに上がりました。また、この者が護衛として同行させていただきます」


「ロカームと申します。主より皆様の護衛を仰せつかっております。王都の道にも詳しいので、ご案内も出来ると思います」


 ロカームと名乗った男性は、短く切りそろえた白髪交じりの髪に、手足と腰、胸を銀色の軽鎧を纏っている。


「はい、宜しくお願いします」


 ナーリャはロカームの挨拶を受け、自分も頭を下げてそれに答える。他の面々も同様に、軽く頭を下げて挨拶する。


「それで、その御仁はどなたですかな?」


 そういってロカームが示したのはトールである。ロカームは魔道技師の少女達の護衛と聞いていたが、全身黒鎧に覆われた大男の存在を見て疑問に思ったのだ。


「俺はトール。話は聞いていると思うが、元は杖で、今はこのゴーレムの中に入っている」


 トールは軽く自己紹介がてらに、事情を説明する。

 ロカームは一言ほう、と呟いて納得した様子を見せていた。


「なるほど。そちらが主の仰っていた話せる杖殿ですな。そしてその黒鎧が今回のコンテストにでるゴーレムと。これは楽しくなりそうですな」


 はっはっはと笑い声を上げて、ロカームはトールに対して手を差し出してくる。

 それをトールが握り返すと、ますますロカームの笑みが深くなった。


「握手の出来るゴーレムですか。それなりに長く生きたと思っておりましたが、いやはやまだまだ小生の知らないことも多いですな。さて、それでは皆様方。出発の準備はよろしいですかな?」


 ロカームは少女4人を見回しながら問いかける。それに各自が頷き答える。


「では参りましょうか。何か希望の場所があればご案内いたしますぞ」


 そういってロカームは屋敷の外へと皆を先導する。それに全員がついて行き、そのまま屋敷の外へと出て行った。


「うーん。それじゃあどうしよっか?」


「取り合えず繁華街の方へと向かうといいのではないでしょうか? 様々な物が取り扱われてますから、見ているだけで楽しいですよ」


 元々王都に済んでいたリューナの提案に異論がなかった一行は、それに乗って繁華街へと向かうことになった。

 向かっている途中、それぞれがロカームに自己紹介をする。それに対してロカームは笑顔で丁寧に答えていた。


「そういえばリューナ殿は王都に来たことがあるので? 随分と詳しそうですな」


「ええ。今はダナンですけれど、以前は王都に住んでいました」


「なるほど、それなら御詳しいことにも納得ですな。他の方々は王都は初めてですかな?」


「そうです。わたしもカルンちゃんもイオンちゃんも、王都は初めてです」


「なるほど。では王都の繁華街はきっと驚きますぞ。小生も初めて来たときは、随分と驚かされましたからな」


 はっはっは、と笑い声を上げながらロカームは繁華街へ案内を続ける。

 今までトール達がいた貴族街を抜けると、通りにいる人の数が一気に増え始める。そして大通りへと一行がでると、そこには屋台が立ち並び、他にも多種多様な店舗らしき建物が整然と立ち並んでいた。

 人通りは昼過ぎでも途切れることがないほど常に人が行き来しており、少しでも油断すれば直ぐにでも迷子になりそうであった。


「すごい人だかりっすねぇ。今日は御祭りでもあるんすか?」


「屋台も開いているし、何かの御祝い事かな?」


 北の小さな集落出身のカルンとイオンは、この人だかりを見て祭りだと判断している。

 ナーリャもそれなりに大きな街であるダナンを見慣れてはいたが、ここまでの人通りは御祭りくらいしか見た記憶がなかった。


「いやいや、これが普段の人通りですぞ。この通りは様々な物を扱っておりますからな。王都の人々が集まるのです」


「……トールさんはあまり驚いていないですね」


 なんだか不満そうにリューナはトールに話しかける。リューナとしては、この人だかりを見てトールが驚いた声を上げるものだと思っていたのだ。

 しかしトールはこの程度の人だかりは見慣れていた。前世では都内に住んでいたので、特に感慨が浮かばなかったのである。


「ん? まあ人だかりは慣れているしな。それより何処に行こうか?」


 トールの返答に一瞬リューナは怪訝な顔をするが、すぐさまそれをもどしてトールに答える。


「そうですね。ナーリャさんとしては魔道具店に行きたいのですよね?」


「うん。一回王都の魔道具店って、どういう風になっているか見たかったんだ」


 ナーリャは人だかりの熱気に当てられたのか、少し興奮しながらリューナに答えている。


「カルンさんとイオンさんはどうですか? どこか行って見たい所とかありますか?」


「あたいはこれといったところは無いっす。イオンは?」


「私も無いです。ただ漠然と見て回りたいと思っただけなので」


 まだ人の多さに圧倒された様子で、口を半開きにしながらカルンとイオンは答える。


「ではまずは魔道具店を観て回りましょうか。途中で気になる所があれば、その都度寄っていきましょう」


 リューナはロカームに変わって案内役を受け持ち、自身が知っている魔道具店へと歩みを進めた。

 それにナーリャ達もついて行き、最後尾にロカームとトールがついていく形となった。



更新が滞ってしまい申し訳御座いませんでした。

まだ安定した更新が出来ないかもしれませんが、基本昼の12時に上げていきたいと思います。

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