インテリジェンスロッドと双子の出会い8
少し時が経ち、リューナは先ほどの結果を見て、俯いて頭を抱えていた。まさか、そんなはずはとぶつぶつつぶやいている。
時刻はすでに夕暮れとなっていた。話を一旦止め、リューナが今日泊まる所が無いというと、ナーリャは、それじゃあ家に泊まっていってといって準備し始めた。そして今は台所で料理をしている最中だ。
「あー、なんだか悪かった。そこまで気にする事ととは思わなくてな?」
そういってトールは、俯いたままのリューナの横で浮かびながら声をかける。
「いえ、大丈夫です。この内容なら既に誰かが気づいて、一般には秘匿しているだけかも知れないですし」
リューナはそういって自分を納得させ、頭をあげる。そしてぺちぺちと両頬を叩き、気合を入れ直す。
「まずは謝罪を。確かにあなたは知識の杖として相応しい知識をお持ちのようだ」
「いや、気にしないでくれ。俺だって半信半疑だったし」
そう言われてトールは悪い気がしなかった。ただこれらの知識『知識の泉』によるものだ。
先ほど魔法陣について聞かれた際に、やはり頭の中で検索していた。そして得た答えが先ほどのものだ。
その際『知識の泉』は丁寧にも図解込みで説明してくれていた。それを確認しながら両者へ解説していたのだ。
「(ほんと、便利だな『知識の泉』)」
トールがそう考えていると、リューナが話しかけてきた。
「そういえばあなたには名乗っていませんでしたね。私はリューナ。学院に席を置く魔道技師です」
そういってリューナは頭を下げる。それに釣られてトールも頭|(宝玉部)を下げた。
「ああ、そうか。一応二人の名前は知っているんだ。ほら、今向こうで料理をしているのがナーリャだろ?」
そういってトールは台所で料理をしているナーリャに向かって柄の先を指す。
「ええ、そうです。なぜご存知なのですか?」
「実はこうやって動いて、話せるようになる前のことも聞こえてはいたんだ。だから二人のことも事情も把握しているということだな。聞き耳立てていた様で申し訳ない」
「そうでしたか。しかし動けず話せずでは仕方ありません」
「ありがとう、助かる」
そういってまた宝玉を下げる。
その人間臭さに、リューナは思わず笑ってしまう。
「それにしても、本当に見た目以外は人間のようですね。話していると錯覚してしまいます」
「ああ、それなんだが○×▲◇●△◎$И■□」
そういったとたんまた頭の中で警告が流れる。
…警告。秘匿情報のため一部音声を変更。秘匿情報の流出にご注意願います。
トールはまたか、と諦める。元々は人だった、という情報もアウトらしい。警告を出すぐらいなら、秘匿情報がどれなのかきちんと知らせておいてほしかった。
「?」
「すまない、これも教えることが出来ないんだ」
「そうですか。思うに何らかの制限がかかっているのですか?」
「その通り。だから話せることもある程度限られるんだ」
そういって体をうねうねとねじらせるトール。なにを表現したいのかさっぱりだ。
「やはり。あなたを作った人の意思ですかね」
「ああ、そうだろうな。何考えてんだかさっぱりだよ」
そんな話しをしていると、台所の置くから、出来たよーと声がかけられる。それを聞いてリューナは台所へ向かっていった。
やっぱり手伝います、いやいやお客さんに…などと奥から聞こえてくる。
それを聞きながらトールは、『知識の泉』へ問いかけていた。秘匿情報についてを。
しかし『知識の泉』はそれに反応することがなく、沈黙を保っていた。
「(まったく。せめて話していいか悪いかぐらい教えてくれても良いじゃないか)」
そう考えていると、二人が料理を持ってきた。
「じゃーん、ナーリャ特性スープです!」
そういってトールの前にも料理が置かれる。
それを見たトールはイヤイヤ無理だと思い、縋る様にリューナのほうへ視線を向ける。そのリューナは既に諦めた表情をしている。
「…いや、せっかく作ってもらって悪いんだが、俺は食えないぞ?」
仕方ないので自分で断りを入れるトールだったが、ナーリャは気にしないそぶりで言った。
「うん。分かってはいるんだけど、二人分だけ用意するのも何だか悪い気がしちゃって。ごめんね?」
そういってナーリャとリューナは残りの料理も持ってきた。
仕方が無い、とトールは思いったが、一つ気になることがあった。『知識の泉』に食べられないか聞いてみることだ。この無茶振りにどう反応するのか気になってトールは試してみた。
…食べる方法:出来ません。
あっさり、にべも無い答えが返ってきた。
「(もうちょっと、こう返し方があるだろう?)」
そんなことを考えつつ、ナーリャに言う。
「次からは作らなくても大丈夫だぞ。食べ物も勿体無いしな」
それを聞いたナーリャはちょっと寂しそうな顔をした後、うんと答えた。それに少し罪悪感を感じるトールであった。
それじゃあ頂きます、と二人は食事を始める。料理の内容はナーシャが言っていたスープに白いパン、それにサラダと何かの煮付けである。スープには肉が浮いており、結構豪勢だ。
食事をしながら二人と一本は会話を続けていた。
「それじゃあリューナちゃんは住むとこまだ決まってないの」
「はい。働けることが出来れば近場で探そうかと思っていました。あとリューナちゃんは…」
「じゃあ、リューナちゃんうちに住みなよ!一人じゃ寂しかったし、調度良いよ!」
そう嬉しそうに提案をするナーリャ。その様子にリューナもまた嬉しそうにする。
「えっと、それじゃあお世話になります。あとリューナちゃんは…」
「よし、決定!2階奥の今日泊まってもらう部屋をそのまま使って良いからね」
ふんふふーん、と上機嫌なナーリャに、ちゃん付けについてをスルーされ続けて少しへこんでいるリューナ。
そしてトールは女の子の会話かぁ、何年ぶりだ?と少し悲しいことを考えていた。
「じゃあ俺はどうするかな。適当に立て掛けておいてもらえばいいか」
「だめだよ、そんなんじゃ!大丈夫、ちゃんと私が連れて行くから」
トールの話しにナーリャはそう答える。
「…ちなみに聞くが、どこへ連れて行くんだ?」
「もちろん、私の部屋!」
そういって胸を張るナーシャ。それを聞き、リューナはトールに問いかける。
「…トールさん、あなたの意識って男性っぽいのですが?」
「その通りだ。俺は男として自分を認識している」
「じゃあ駄目です。7歳にして男女同衾せずです」
まあ、普通そうだよなと思いトールは同意するが、ナーシャの方が反対し始める。
「えー!杖は一緒に寝ると魔力の通りが良くなるっておばあちゃんが言ってたんだよ」
「それは通常の杖の話しでしょう?さすがに男性の意識が入った杖には適用されないと思います」
「杖は杖だから大丈夫だよ」
「いやいや、駄目だろ。そういうわけで俺はその辺に立て掛けておいてくれ」
トールはそう不満顔をしているナーリャに言う。今は杖だがさすがに15,6歳の少女と同衾はまずいと思うのだ。しかも先ほどの話しだと同じ別ベッドで寝るような言い方だった。けしからん、とへたれトールは考えていた。
そうやって食事を終えると、各々就寝にむけて動いていた。特にナーリャの希望で二人が風呂へ向かう時にはきっちりとリューナに、駄目ですよ?と真顔で言われていた。
さすがにそんな気は無いトールは、そんなことはせん!と答えぼーっとした時間を過ごした。
「それじゃあ、おやすみー」
「それではお休みなさい」
「ああ、お休み」
風呂から出てきた二人はそのまま部屋へと戻っていった。
トールはナーリャが用意してくれた、2個な並んだ椅子の上に敷いた布の上に転がっていた。
「(わざわざ用意しなくても良かったんだが。だがちゃんと扱ってもらえるのは嬉しいな)」
これからどうしていくか、少女たちとどう付き合っていくか、そういったことを考えながら、トールは徐々に眠りについた。
これにて双子の出会い編終了です。
次回は幕間をはさんで、『杖と魔道技師と火薬と薬剤』編を開始予定です。




