第26話 最強のバディ
大坂の裏路地。
夕暮れの光が細い道を照らし、瓦礫と埃の匂いが漂っていた。
兵庫は息を切らしながら走っていた。
(若君……皆……待っておれ!)
だが、その足音に反応するように、路地の奥から複数の影が現れた。
「いたぞ! 裏大奥の兵庫だ!」
「黒田監物様の命だ、捕らえろ!」
兵庫は刀を抜いた。
「来るなら来い……!」
だが、傷はまだ癒えていない。
数人を相手にするには厳しい状況だった。
「ぐっ……!」
兵庫が押し込まれた、その瞬間――
風が裂けた。
影がひとつ、兵庫の前に降り立つ。
「兵庫。お前は相変わらず無茶をする」
その声に、兵庫の目が見開かれた。
「……左門殿!!」
左門は血の滲む腕を押さえながらも、鋭い目で敵を睨みつけた。
「兵庫。背中を預けろ」
「うむ!!」
二人は背中合わせになり、敵の包囲の中で刀を構えた。
「霧島左門……! 脱獄したのか!」
「そうだ。お前たちを斬るためにな」
左門の刃が閃き、兵庫の刀が唸りを上げる。
二人の動きは、まるで長年の相棒のように噛み合っていた。
「ぐあっ!」
「こいつら……強すぎる……!」
敵は次々と倒れていく。
◆
敵が逃げ去った後、兵庫は左門の肩を支えた。
「左門殿……! その傷は……!」
「大したことはない」
「大したことあるでござる!! なぜここに……?」
左門はわずかに笑った。
「兵庫。お前が動くと思ったからだ」
「……!」
「お前は若君を見捨てぬ。ならば私は、お前を見捨てぬ」
兵庫の胸が熱くなる。
「左門殿……拙者は……!」
「礼はいい。今は急ぐぞ」
左門は立ち上がり、兵庫の肩に手を置いた。
「兵庫。若君を取り戻す。そのために、お前と共に戦う」
兵庫は拳を握りしめた。
「左門殿……! 拙者も共に戦いたい!!」
その時、路地の奥から声がした。
「兵庫殿……!」
お鈴が駆け寄ってきた。
涙を浮かべながら、二人の姿を見つめる。
「そんなに、傷だらけになって……!」
お鈴は兵庫の手を握った。
「兵庫殿……皆さんを……取り戻しましょう」
兵庫は深く頷いた。
「うむ! 必ず、取り戻す!!」
◆
左門は兵庫の隣に立ち、夕暮れの空を見上げた。
「兵庫。裏大奥は、まだ死んでいない」
「うむ……!」
「お紺、お梅、お蝶……そして若君。全員を取り戻す」
「左門殿、拙者はあなたと共に戦えて幸せでござる」
左門はわずかに笑った。
「兵庫。戦いはこれからだ」
夕暮れの光の中、二人の影が並んで伸びていく。
その影は、これから始まる奪還の旅を示していた。




