第8話 目的地
機械人形の町は眠らない。ソラとハツが食い倒れている間にとっぷりと日が暮れてしまった。
「はぁー食った食った。泊まれる宿ねぇのに夜になったなぁ」
「ハイ」
綺麗な廃墟が並ぶ機械人形の町に、人間が宿泊できる建物は無い。満腹の眠気と戦いながらソラが呟く。見上げた正面には、天をも貫く塔がそびえ立っていた。石造りでありながら、屋根やドアは錆びた鉄で作られている。塔の前の大通りを、食べ歩きながらここまで来たのだ。
ソラたちがいるのは大通り側で、塔の向こう側にはコンテナが運び込まれたであろう倉庫が見える。店の群れのランタンに照らされて、塔の中腹に掘られた麦と歯車の紋章が浮かび上がった。
「南の町かぁ、ここ。食いもん美味いと思った。あ、そうだ。塔って機械人形の検索できるんだよ」
「私たちモ使えるノですか」
燃料を補給したハツはご満悦だ。製作者のこだわりなのか、肌の潤いがさらに増している。
「多分。古い機種が仕事仲間の情報を受け取るために行くらしいから、そういう雰囲気出せばどうにかなるかもしれない」
「私ガ行きますか?」
「俺のこれ、人間感知のセンサー誤魔化すやつなんだ」
ソラ自分の首にはまった金属の輪をつついた。同じ物が手足首にも着けられている。
「首都の駅じゃ微妙に通用しなかったけど。ま、どーにかなるなるぅ」
「そうですか」
相談しながら、2人の足は塔に向かっていた。門番が錆びた扉を開いて出迎えてくれる。
「逃走ルートの案とかある? 俺たちどうやってこの町から出るんだろう」
「ドウニカ、ナルナル、ウ」
「お、いいね」
覚えたての言葉を使ってみるハツは、ソラの話し相手として非常に優秀だった。スクラップ場のあの老人が2人を見ていたら、「入れ込むな」ともう一度警告しただろう。




