第19話 ハツの”役目”
ソラが笑顔を見せたところで、男が戻って来た。
「おじさん、どーだった?」
「誤魔化した。まぁなんだ。ガラスの破片からの小火とかそんな感じでどうにかなった」
「よかったよかった。サンキュ」
「ありがとう、ございます」
「……家に案内する」
ハツの、人間にしてはぎこちなく機械人形にしては自然な喋りを見て、男は言葉を飲み込んだ。そのまま草陰を通って家へと2人を連れて行く。少人数助け合いの古典的な村だ。人目には細心の注意を払う。
「こりゃユウリがよっぽどのことをしたなぁ」
その様子を見てソラがぼやいた。
「どうして、そのようニ思うノですか」
「んー? だって人間の俺まで隠れなきゃいけないなんてさ、俺の顔を使って何かしたとしか……」
男が白状するようにため息をついた。
「おっ? 当たり?」
「話してやるから入れ」
「やりぃ! お邪魔しまーす」
「お邪魔、します」
男の小屋は他のものと同じく、質素な造りをしていた。丸太や板で作られており、レンガは使用されていない。2階建てでもない。機械人形の手伝い無く作られた家を、ソラは興味本位で気に入った。
「いい雰囲気ー。じっちゃんのトタンの家より気に入った」
「そりゃあよかった」
ハイテンションのソラを慣れた様子で躱しながら、男は水を汲んでテーブルに置いた。
「……嬢ちゃんは水いるかい」
「ハイ」
ハツは水からもエネルギーを生成できるタイプだ。4人掛けテーブルに3つのコップが並ぶ。男が席につくと、ソラはその正面に、ハツはソラの隣に座った。
「いろいろありがとな。で、何があったか教えてくれ」
「前置きというもんを知らんのか」
そういいながらも男は、道中の話を前提としてまとめた。ユウリがテロ組織に入り、この村の人間を一通り勧誘し、嫌われたあとで西の拠点に向かったという情報だ。
「で、お前が隠れる理由だが……ユウリがお前に似た機械人形を作ったからだ」
「俺に似た?」
男が神妙な顔で頷く。ユウリが、機械いじりの技術をスクラップ場の老人から習っていたことは知っているが、まさか機械人形を作れるようになっていたとは。町の外では機械人形の部品もほとんど手に入らないはずなのに。
「ダイチ……だったか。嬢ちゃんと同じように、人と変わらない見目のやつだ」
ハツが水を飲み干したので、ソラは自分のコップを渡した。ハツの気を散らせるために。
ハツを作ったのがユウリだとしたら? スクラップ場で綺麗な状態で見つかったのも納得がいく。30年以上前に作られたにしては、ハツは綺麗すぎる。
ハツを作ったのがユウリだとしたら? 心臓が無いのも辻褄が合う。だとしたら、心臓はダイチが使っているかもしれない。
ハツを作ったのがユウリだとしたら? ハツの”役目”の予想が付く。ハツの、機械人形に電波障害を起こす機能。ユウリがテロ組織に入ったことから考えると。
ハツの”役目”は”機械人形を壊すこと”。
これが当たっていたら、ハツの心臓はダイチが使っていたら、ハツの役目は取り消されたことになる。ハツの”役目”は無くなってしまう。
だからソラは、ハツには黙っていることにした。




