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第18話 かわりになって

 ソラは、自分の過去をどこから話すか記憶を辿った。


「なんだろうな、あれ。ニコニコさんは俺が大事だから“一般住民”って“役目”を放棄してでも俺を守った。お偉いさんからは……ものすごい感情をぶつけられた、気がした。機械人形大好きな俺が、お偉いさんと向かい合ったときには……なんかこう、『怖い』って思ったんだ」

「機械人形ヲ相手ニ、感情ガ起こるものなのですか」

「そう、それなんだよ。町を出てじっちゃんやユウリと話してみて、ニコニコさんかお偉いさんと話してるみたいって思った」


機械人形は物だ。物に愛着が湧くことはあっても「怖い」と思い、語るだけで手が震えることは普通なのだろうか。


「この違いってなんだろうな」


少なくとも、南の町の機械人形には抱けなかった感情だ。高性能な首都の機械人形にも。会話ができるできない以外に、何か要因があるはずだ。


「それガ心ですか」

「かもなぁ。でもそれってさ、いつか分かることなのかな」


必死に答えを探すハツには悪いが、ソラにとってはどうでもいいことだった。


「もしこのまま心臓が見つからなかったらさ、ハツ、ニコニコさんのかわりになってよ」


そう企んでハツを旅に誘った。これだけ性能のいい機械人形ならば、きっと寂しさを紛らわせてくれるだろうと。機械人形ならば、きっと断りはしないだろうと。


「ソラニとってS-2525ハ、代わりノ利くただノ機械人形なのですか」


しかし、返って来たのは純粋な疑問だった。


「……え、」


意外な返答にソラがたじろぐ。ハツと初めて話した時、機械人形と会話ができるならばなんでもいいと思ったのは確かだ。利用してもいいと思っていた。


「私ニハ“役目”ガあります。私ハ心臓ヲ探しています」


機械人形にここまではっきりと拒絶されるのは予想外だ。ソラは呆然と目の前の、ただの機械人形を見つめた。


「……ごめん。そうだったよな」


謝罪の言葉は自然に出てきた。傷つけてしまったと直感的に思ったのだ。その瞬間、ソラの緊張が微かにほどけた。


「俺、ニコニコさんに会ってどうしたいんだろう」


漠然とした不安がそのまま口からこぼれる。機械人形は具体的な質問にしか答えられないと知っているのに。


「そノ質問ハ、私ガ以前ニ行いました。ソラハ『直してもらう』ト答えました。心残りだト」


当然ながらハツは戸惑っているようだった。


「そう。答えた。でも俺、ニコニコさんに会ったら何を話すんだろ。寂しいって気持ちしかない。ハツをかわりにって思うくらいに」

「そノ時ニ考えればよいのでハ」


「だよなぁ、そうだよなぁ、いいこと言うじゃんハツ」


すっかり自分に似てしまったハツに、ソラは笑いを零した。

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