第13話 逃亡4
ソラがブレーキを踏むと、ハツが首を振った。
「それハできません。後ろニ車ガ見えます。追われています」
「まじか」
トラックが加速する。
「じゃあ振り切るから、障害物の少ない道教えて。俺なんも見えてないから。あと追って来てる車はどんなのか見える?」
「承知シマシタ。正面ニ木ガあります。……車ハ、」
ハツが窓から頭を出して後方を確認する。
「これと同じ大型ノトラックガ3台です。1台、機械人形ガ1体乗っています」
「ありがと」
町の外で動けるトラックと機械人形はそれだけしかいなかったのだろう。つまり、あまり性能はよくないはずだ。しかも機械人形が1体乗っているということは、それが3台を操作している。
「もしかして、髪と顔が無い、卵みたいな頭のやつ?」
「ハイ」
ニコニコさんに見せられた大量生産機種の一覧に、似たようなシリーズが載っていた。首都でしょっちゅうエラーを起こしたため、まとめて他の町に移されたものだ。「ハツを追え」という命令の途中で対象が町を出たせいで、制御がきかなくなったか。
「どこから追って来てた? このトラックって町の外でも位置情報ばれるのかな」
「イイエ。町を出たところカラ後ろニいました」
「じゃあ振り切れば安心だな。これが通れる程度に木が生えてる方向はどっち? 南の町の近くには森があるって聞いたんだよな」
「左手です」
「りょーかい」
ハンドルが左に切られる。どうして早く言わなかった、とは言わない。機械人形がそういうものであるとソラは知っている。
「斜め右ニ廃墟ガ。そノ向こうニ木ガ3本──」
トラックはハツの指示通り右へ左へ曲がりながらしばらく走った。たまに後方から何かがぶつかる音が聞こえ、やがて静かになった。木が生い茂り、トラックはこれ以上進めない。森に到着した。
「いなくなりました」
「おつかれー。ちょうど次の目的地決まったよ。南の町の森の中。人間が住む……村があるらしい」
スクラップ場に住んでいた人間が、そこを目指して出て行くところを何度か見た。せっかくここまで来たのだから、探してみてもいいだろう。それに、探しものの手がかりがつかめるかもしれない。
「人間ガ、ですか」
「そう。明日の朝、探検してみよう」
「ハイ」
「んじゃ、おやすみー」
「オヤ、スミ」
ソラがエンジンを切ると、微かなヘッドライトも消えた。曇り空の夜の真っ暗闇で2人は眠った。




