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自分用レビュー  作者: くーくま
156/224

薬屋のひとりごと

評価は「読んで良い」です(20210121時点)。


粗筋は、後宮の女官狩りで攫われた猫猫マオマオは後宮で下女(雑仕女ぞうしめ)をやらされていた。そうなる前は花街で薬屋を営んでいたマオマオは後宮で起こったちょっとした事件を持ち前の知識で解決した事から本人も予想もしない展開に巻き込まれていく、という内容です。


展開が良く練られており、興味が持てたら面白いと思います。なろう最強系の量産水増し系列に見習わ・・・ゲフンゲフン、とにかくちゃんと背景もしっかりしていて感情移入とかもしやすいのではないかと。

蝗害や鉛毒などの話もちょっとした知識として知的好奇心を掻き立ててくれると思います。個人的には蝗が群生相に移行する過程の話とか面白いなと思う反面、蝗害を起こす段階になったものは食べれるものはなんでも食べようとするので害のある不純物を蓄積させていて食べるのはマズイだろうなとか読んでいて思いました。


裏事情を勘ぐります。

この作品のレビューと一緒に「婚約破棄を狙って記憶喪失のフリをしたら、素っ気ない態度だった婚約者が「記憶を失う前の君は、俺にベタ惚れだった」という、とんでもない嘘をつき始めた」のレビューも書いたんですが、同じタイミングにしたのは、どちらの作品も当人の主観、がキーワードだからです。この作品は題名もそうなっています。

そう考えた場合、マオマオが後宮に売られた事自体も計画通り、の可能性があります。最初の段階のマオマオはどの派閥にも属さず、派閥争いを考慮せずに助言出来るポジションに居てとても使いやすいです。そして、マオマオの知識があればおのずと答えが出る様に情報を揃えて提示し、マオマオがそうと知らずに解決していく、という、よくある探偵ものの裏に隠された展開と同じ様にも見えます。

確かどこかで楼蘭妃がマオマオを「あなたは貴重な存在」と言っているシーンがあったのですが、それはそういった意味を指していると思われます。


で、この作品は宮廷編2で第一部完みたいになってるんですが、その流れとして、最後がまた花街に戻る、という良くある元に戻ってハッピーエンド風になってます。

そこに至る裏事情を探るとちょっと苦いものになります。この作品内で、壬氏じんしはマオマオを気に入り何かと目を掛けています。で、楼蘭妃が自身の目的の為にマオマオを攫うのですが、そこで想定外の事が起きます。マオマオがやらかしてしまい、見つかってはいけない人物に見つかります。その結果としてマオマオの貞操の危機が訪れ、描写においては無事だった、という展開になってます。で、この時にマオマオが怪我した事、か、マオマオが実際には事に及ばれてしまっていた、かのどちらかで楼蘭妃は壬氏の顔を潰した事になります。壬氏がマオマオを愛妾にしたかったのか妻にしたかったのかは分かりませんが、マオマオに傷をつけてしまったのでその可能性がなくなります。

で、それを伝える意味もあってか楼蘭妃は壬氏の顔に傷を付けます。

この後の題名「息」の所で「ここは忌む場所です」とそれとなくマオマオは伝えている様に思えます。周りは仮死状態とは言え死人が居て、それを用いてマオマオも高貴な人物の妻になれる女としては「死んだ」と伝えて居そうに見えます。

ここでのやり取りでまたマオマオが「未遂です」と話しているんですが、もしここで実際にはきっちり襲われていたとすると、その受け答えが以前の問答における話も実は未遂じゃなかったかも知れないと思わせてしまいますが、やはり一応、錯覚ネタと言える裏事情だとすればそういった明確に分かる情報は削っているのでどちらかは判明出来ません。

それを受けて壬氏の「さっきの傷を見るとき、平常心でいけるつもりだったんだが」、「案外というか、思った以上にいけたようだ」という、表を見ればどこか不自然なセリフも納得が出来ます。要は壬氏の執着心が薄らいだ、と取れます。

で、第一部完のマオマオは壬氏の嫁とかになる事もなく花街へと戻りハッピーエンド?です。


この展開になったのは作品上ではマオマオが楼蘭妃を見捨てられずに首を突っ込んだから、なのでそうしなかったら別の展開になったかも知れませんが作品の既定路線なのでどうこう言っても仕方ありませんが、壬氏とマオマオのハッピーエンドの結果に持っていこうとするならマオマオは楼蘭妃を見捨てていればそうなったのでしょう。でもマオマオの性格を読んでシナリオ通りに流れる様にお膳立てされていたのかも知れません。


この後が第2部と言えるのですが、その裏事情を受けて少し流れが変わります。途中でエンエンという百合の気がある女性も登場し、壬氏から見てマオマオの希少性が下がりますw。どちらかと言うとエンエンの方が資格があると言えます。そして壬氏的には、更に花街のやり手婆やマオマオの慕う妓女たちの思惑通りにマオマオも壬氏のお気に入りの妓女にしようとしている可能性がチラホラ見えてます。それが窺えるのは西都編「六、草原」でチュエという女性とこう会話しています。



「猫猫さん。雀さんからのもう一つお願い。質問をよろしいでしょうか?」


「なんですか?」


「なぜ、派手で上等な外套が月の君から贈られたものではないと思ったのですか?」


「あのかたは、私に贈るとすれば、分相応な、着心地はいいけれど、装飾を控えた実用的な物じゃないかと思ったまでです」


「そういうものですか?」


「そんな風になってきましたね」



と、話の表で見ると、マオマオの性格に合わせて贈り物をしている、と取れますが、裏で考えるとマオマオへの執着がなくなってきてビジネスライクに、実務的に接する様になってきている、とも取れます。

第一部では壬氏が押す、第二部では壬氏が執着を薄れさせて少し引くからその分マオマオが押す、という流れにも見えます。

話「四十九、次の長」で珍しくマオマオが壬氏の傍に残る発言をしているのも印象的です。マオマオ的には部下的立場を望んでいるのかも知れませんが(それを示唆する発言が壬氏編2、「二十二、亜南国」にあります)。後、宦官医官の所に嫁がせようとしたり、芙蓉妃の下賜を見せてメッセージをマオマオに送っているとも言えます(だからそれを避ける為に部下的立場を望む様な発言をする)。

第2部もマオマオから見ている視点(題名に「ひとりごと」とある様に)なので、実際は壬氏が西都に残るのも上層部の話し合いで規定路線だったのかも知れません。


総じて「読んで良い」です。

裏を見るとちょっと苦い部分がありますが、全体的には面白く、女性読者は楽しめると思います。


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